二十二、クリスマスイブ


 最終日のクリスマスイブの日、我が家でサムおじさんも含めて慰労会、というクリスマスパーティを開いたの。

 サムおじさんが修君に小さな箱を渡した。


「これを、さおりに。そして君たちからつながる子供たちへ。」

 

 私はお母さんのほうを見て、もらっていいの? と無言で聞いた。


 お母さんは大きくうなずいた。


「さぁ、開けてあげて。」


 お母さんには中に何が入っているのかわかっているみたいだった。


 小箱には、少し昔のデザインのダイヤのエンゲージリングが入っていた。

 私と修君は少し驚いて、サムおじさんを見たの。

 サムおじさんは言葉を失って、ただ目を潤ませながら、修君に「さあ、君の番だ」とばかりに、指輪を差し出した。

 

 お母さんもそっと涙をぬぐいながら、昔を思い出すようにサムおじさんと微笑んでいた。


 きっと事情を知っているに違いない。

 今はこんなに感動的な場面を作ってくれて、サムおじさんとお母さんに感謝している。


 そのときは、ただ美しい贈り物に驚いていた。

 でも――その指輪には、時を超えた想いが込められていたなんて、知らなかったの。

 

 パーティーが終わって、サムおじさんとお母さんを見送った後、二人でパーティーの続きをしていた。

 小さな箱には英語で手紙が添えられていた。


 その手紙を読んだとたんに、修君は大泣きして、深々と一礼した。


 手紙には、


 To my dear Sarah

 僕の愛しいサラへ


 I am giving this ring, which was meant to be given to you, to my dear friend's daughter, Saori.

 君に送るはずだったこの指輪を、僕の親しい友人の娘、さおりにあげるよ。


 I was actually going to put this ring on your hand, but you passed away in the war, so I kept it.

 本当は、この指輪は僕が君の手にはめてあげるつもりだったけど、戦役で先に逝ってしまったから、この指輪は僕が持っていたんだ。


 This ring was meant to be passed down to our children and grandchildren, just as you wished.

 この指輪は君が望んだとおり、僕たちの子供や孫に引き継がれていくはずだったね。


 But even if I had it forever, it would end without fulfilling its mission.

 でも、いつまでも僕が持っていても、この指輪はその使命を果たすことなく終わってしまう。


 I wanted Saori, who is as dear as a daughter, to use the ring that we swore to love and help each other through.

 僕たちが互いに愛し合い、助け合って生きていくと誓った指輪を、娘のように愛おしいさおりに使ってほしいと願った。


 And I pray that this ring will become a talisman of happiness for Saori's family.

 そしてこの指輪がさおりの家族にとって、幸せのお守りになることを祈ります。


 The love we swore to each other at the end will be passed down forever to Saori and her children, and will become immortal.

 最期に僕たちが誓った愛は、さおりとその子供たちに永遠に引き継がれ、不滅のものになるんだよ。


 Please pray for our daughter's happiness from heaven.

 天国から私たちの娘の幸せを祈ってあげてください。


 To my dear Sarah and Saori, Love from Uncle Sam 

 愛するサラへ そしてさおりへ ラブ アンクルサムより


 しばらく私たちは、何も言えなかった。

 サムおじさんの、いや、サラさんの気持ちを想うと涙が流れた。


 気づいたら、ふたりとも、声をあげて泣いていた。

 泣くしかなかった。

 言葉よりも、涙のほうが先にあふれた。

 そしてこの出会いに感謝した。


 思い出の ダイヤモンドは 輝けり 愛のあかしを 我引き継がん 


 しあわせは、私たちだけのものじゃなくて、誰かと一緒にしあわせになるんだね。

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