イーストン
数日後、フォレストのもとにジョーンズから連絡があった。
「例の男が来ている。グリーンガーデンホテルに滞在している。彼は要人と会っているようだ」
「わかった。ありがとう」
フォレストはすぐにグリーンガーデンホテルに向かった。そこは自然豊かな場所にあるリゾートホテルだった。ロビーのソファに座っていると例の男がホールに出てきた。
(あの男だ。イーストンだ。ここに何をしに来たのか?)
彼女は気づかれないようにそっとその様子を伺った。イーストンはそこに客を迎えに出たらしい。それは議員や会社の社長という感じの紳士たちだった。イーストンは彼らを迎えてにこやかに談笑していた。
やがてそれも終わり、イーストンは彼女の後ろからそのそばを通ろうとしていた。
(接触するチャンスだわ)
彼女はタイミングを見計らって立ち上がって通路に出た。そこでイーストンとぶつかった。
「あっ!」
彼女は転びそうになった。そこをイーストンが手を差し伸ばして支えた。
「大丈夫ですか?」
「ええ、すいません。ぶつかったりして・・・」
「いえ、いいんですよ。では・・・」
イーストンは軽く頭を下げて行こうとした。一方、彼女は「あっ!」と声を上げ、膝をついて痛そうに足をさすった。
「足を痛めたのですか?」
「ええ、そうみたい。でも何とか歩けますからすぐに治ると思います」
「ではお部屋まで送って行きましょうか?」
「でもご迷惑では・・・」
「いえいえ、お気になさらずに」
イーストンは彼女にその肩を貸した。
「すいません」
「お部屋は?」
「702号室です」
「じゃあ、しっかりつかまってください」
彼女はイーストンにつかまって歩いた。イーストンが聞いてきた。
「こちらには保養に?」
「ええ、あなたは?」
「私は仕事です。言い忘れておりました。私はイーストンと申します。バハラ修道院の事務長をしております。様々な方にご寄付をお願いに参っているのです」
「私はリサ・サザーランドです。よろしく」
彼女は偽名を伝えた。イーストンは彼女を部屋に送り届けてから帰って行った。
(イーストンが初対面の相手に本当のことを言うはずがない。だがこれできっかけができた。あとは彼の懐に潜り込んで情報を得るだけだ)
彼女はそう思った。
イーストンはしばらくホテルに滞在するようだった。彼女は彼に会って先日の礼を言い、何度か食事に誘ったりした。だがイーストンは裏の顔の片鱗すら現さない。そこで彼の留守を見計らって清掃員に扮して部屋に忍び込んだ。そこでスーツケースの隠しポケットに入っているある書類を見つけた。
「極秘書類。秘密の場所にて会合。日時は・・・」
それには今日の夜、この近くの古い体育館で秘密の会合があることが書かれていた。
(しめた! 間違いない! 今夜、いよいよイーストンの裏の顔が見える!)
彼女はすぐにその部屋を出て、夜を待つことにした。
イーストンは動き出した。夜になって密かにホテルを抜け出したのだ。フォレストはそっと彼の後をつけた。イーストンはしばらく歩いて案の定、古い体育館に入った。彼女はそのドアに耳をつけて中の様子をうかがったが、何も聞こえてこない。そこで思い切ってドアを少し開けて中に入ってみた。
中は電灯はついておらず暗闇に包まれていた。しんと静まり返っている。ペンライトをつけて辺りを見渡したが、人の姿が見えないばかりか、その気配さえない。
「一体、どこに行ったの?」
イーストンは忽然と消えてしまった・・・彼女はそう感じた。すると次の瞬間、ぱっと前方から彼女に強い照明が当てられた。
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