危機一髪!

 その時、イーストン司令官は窓の外に見た。突然、一直線に発光体オーブに向かって行く影が現れたのだ。それは徐々に大きくなり、はっきりした。


「デストロイヤー!」


 イーストン司令官は思わず声を上げた。グランマザーの危機にジェムクルーザーから緊急発進してきたのだ。


「こちらデストロイヤー1、ビンセントです。発光体オーブを攻撃します!」


 デストロイヤーはパルスレーザー機関砲を発射した。だが発光体オーブはいち早くそれに気づき、旋回して避けた。デストロイヤーが後を追おうするが、異次元宙域アナザーディメンジョンでは思うように機動できない。

 発光体オーブはまた後方に下がった。再び突撃してきてグランマザーに攻撃を加えようというのだ。イーストン司令官はパルスレーザー機関銃で狙った。だがエラー表示が出る。さっきの連射で早くもオーバーヒートを起こしたようだ。


「もう手立てがないのか!」


 イーストン司令官は接近してくる発光体オーブをじっと睨みつけるしかなかった。

 発光体オーブが攻撃を加えようとグランマザーに急接近してくる。だが突然、爆発して四散した。


「どうしたんだ?」


 イーストン司令官は有人砲座の窓から周囲を確認した。すると近くにジェムクルーザーのトルーダー号が航行していた。それに装備しているパルスレーザー砲の一斉射撃で発光体オーブを破壊したようだ。


 トルーダー号から管制室に通信が入った。


「こちら艦長のスティーブです。こちらのパルスレーザー砲で発光体オーブを破壊しました。被害状況はいかがですか?」

「グランマザー、オーガスタです。助かりました。こちらの主要部分は無事です。そちらは続いて周囲の警戒を頼みます」

「了解」


 危機はようやく過ぎ去った。


 イーストン司令官は「はあっ」と息をついて有人砲座を出て管制室に戻った。そこではオーガスタ中佐たちがグランマザーの応急修理について指示を出していた。



 グランマザーの被害は少なくなかったが、破壊された部分の修理やパルスレーザー砲の復旧は数日で終わるようだ。

 オーガスタ中佐は落ち込んでいた。グランマザーの責任者としてこんな状況に陥ってしまったことに・・・。うつむき加減にイーストン司令官に言った。


「司令官。申し訳ありません。このような事態になったのは私の責任です」


 イーストン司令官は彼女に言った。


「ソフィ。異世界人エイリアンはどんなことを仕掛けてくるかわからない。今回、我々は被害を被ったが、得るものもあった。それは経験だ。君はこれを糧に成長してくれればいい」

「司令官・・・」

「それに監視衛星の改良だ。異世界人エイリアンが妨害できないように。これは君にしかできない。しっかり頼むぞ」

「わかりました。お任せください!」


 オーガスタ中佐は顔を上げた。その表情に明るさが戻っていた。


 イーストン司令官は異次元宙域連絡機に乗ってグランマザーを離れた。機の窓から見えるグランマザーは相変わらず悠然としていた。


「あれは異世界人エイリアンの侵入を防ぐ要だ。かならず奴らを阻止インターセプトしてみせる!」


 イーストン司令官は決意を新たにしていた。やがて連絡機は異次元宙域アナザーディメンジョンを離れ、明るい世界に戻ってきた。そこから遠くに見える街は日の光を浴びてキラキラと光っていた。

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