第2話 どっちのおやつ (童話風)

とてもお天気のいい昼下がりの出来事。


 あるお家にとても仲のいい兄弟がいました。


 兄弟は仲がいいので、いつも一緒に行動しています。


 でも、時々、喧嘩をします。喧嘩の原因はいつも、おやつを巡ってのことでした。


 兄弟は、食べる事に関しては、良いように言えば好奇心旺盛で、悪く言えば貪欲なのです。


 今日も、兄弟はお外で、体中泥んこになるまで遊んでお家に帰ってきました。兄弟は遊びすぎてお腹がペコペコでした。


 だから、何か食べ物がないかとお家の中を探しました。すると、台所のテーブルの上に、一つだけ大きなバームクーヘンが置いてあるじゃないですか! 


 でも、バームクーヘンは一つだけ…… 兄弟仲にひびが入りそうな展開です。


 兄弟は無言で、お互いの目だけを見つめました。目は口ほどに物を言うです。


 お互いが目で、バームクーヘンは自分の物だと語っています。


 普通なら半分っコにしてお互いに分け合って食べたらいいのでしょうが、食い意地の張ってる兄弟にそのような考えは毛頭ありません。


 兄弟は、交互に相手の目を見、バームクーヘンに目を向けたりを繰り返していました。


 その時でした。


 兄が一瞬、バームクーヘンから目を離した隙に、弟がバームクーヘンに向かって突進しました。


 兄も、すぐに弟の行動に気づきバームクーヘンを取られてたまるかと、弟の体にタックルをしかけます。


 弟がもう少しでバームクーヘンに口がとどきそうな時に、弟の横腹に兄のタックルが決まりました。


 タックルがうまく決まったので吹き飛ぶ弟。

 でも、兄にタックルをされて吹き飛ばされたぐらいではバームクーヘンのことを諦めきれない弟は、すぐに体勢を立て直すと、今度は自分だけバームクーヘンにありつこうとしている兄にむかって、弟は噛み付きにいきました。


 兄のお尻に噛み付く弟。兄も負けじと、弟の体に噛み付き返すという熾烈な兄弟喧嘩が勃発です。だんだんと兄弟はヒートアップしてきて、もうバームクーヘンのことは頭にないぐらいの激しい兄弟喧嘩です。


「やめなさーい。あなた達何やってるの?」


 


 突然、声がしました。声の主は兄弟の母親でした。


 兄は母親に事のなりゆきを説明しました。



「そうゆう事だったの。だったら喧嘩の元のバームクーヘンは母さんがいただきます」



「えぇ? それは……ありえないよ、母さん!」


 


 おちつきを取り戻した兄弟は声を揃えて、母さんに不満を言います。



「あなたたちも知ってる通り、母さんのお腹の中には赤ちゃんがいるのよ! だから栄養が必要なの!」


 そうなのです。


 母さんは妊娠しているのでした。

 さすがに食い意地の張った兄弟でも、母さんにバームクーヘンを譲らないといけない理由です。


「わかったよ、母さん」兄はうなだれて言いました。


「全部食べれなかったら、僕にちょうだいね」弟は、まだ少し未練が残ってるようです。


 

 母さんは、早速バームクーヘンを頂くことにしました。


 母さんは、ムシャムシャと美味しそうにバームクーヘンを齧りだしました。


 半分ぐらい食べた時でした。


 バームクーヘンの中に細い糸が混じっていて、母さんは糸も一緒に齧ってしまいました。


 ガシャーンと音がして、母さんの頭上から鉄製の檻が降りてきて、母さんはバームクーヘンもろとも、檻の中に閉じ込められてしまいました。


 どうやら、母さんは人間の作った罠にひっかかってしまったようです。


 


 母さんネズミは檻の中で、悲しそうな目で兄弟を見つめています。




「やバイでチュよ、兄さん。このままでは……殺されるでチュよ」



 兄さんは、得意のタックルで檻に体当たりしますが、びくとも檻はしませんでした。


 弟も兄さんと一緒になって檻にむかってタックルをしましたが、やはり檻はびくともしません。


 


 何度も何度もチャレンジしましたが、結果は同じでした。兄弟ネズミの体は何度も檻に体当たりしたために赤く腫れあがってきました。


 しばらくすると、兄弟の檻にタックルする音を聞きつけたのでしょうか、人間が罠の確認にやってきました。


 兄弟ネズミは、すぐに物陰に隠れて様子を見ることにしました。


 人間は手にネバネバした液体のビンを持っています。

 この液体はネズミの体にかかると、すぐに固まってしまい、ネズミを窒息死させる怖いものでした。


 兄弟ネズミも過去に仲間がカチカチに固められてゴミ箱に捨てられている姿を見たことがあるので母さんネズミのことが心配です。


 すぐに人間は罠にかかってるネズミを発見しました。


 すぐに人間はネズミを固めてしまおうと、片手にビンを持って、もう一方の手で檻のふたに手をかけました。


「母さんが危ないでチュ」


 

 弟は勇気をふりしぼって、物陰から飛び出すと、人間の体をよじ登りました。


 突然の出来事にビックリした人間は、弟ネズミを払いのけた瞬間バランスを崩して、檻に手をかけて転びそうになりました。その衝撃で檻が少しずれて、隙間が出来ました。


 母親ネズミはその隙間を見逃しませんでした。身重の体にむちうって、必死に檻から飛び出しました。脱出成功です。


 三匹のネズミ達は、すぐに冷蔵庫の隙間に隠れて、壁に出来た穴から、自分達の巣に戻ることが出来ました。




「ありがとうでチュ。よく、やったでチュ」母親は命を助けてくれた弟のほっぺにチューをしました。


 この出来事は、すぐに、人間に立ち向かった勇敢なネズミ兄弟の武勇伝となりネズミ界に広く知れ渡ったのでした。




 それから、一ヵ月後の出来事。


 


 今日も、お外で泥んこになってお家に帰ってきた仲の良いネズミの兄弟は、テーブルの上においてある大きなチーズを発見しました。


 とても、美味しそうな匂いのするチーズ……


 


 兄弟に学習機能があることを祈るばかりです……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る