異世界で厄介グルメを美味しく頂く!
るえりあ
第1話 未知の味、未知の世界
成海ハルトは、東京の閑静な街角に佇む、洗練されたレストラン「天越」で、和食・洋食・中華を自在に操る天才料理人として名を馳せていた。
彼の厨房では、素材の持つ可能性を引き出すための創意工夫が光り、料理への情熱を惜しまなかった。だが、彼の真骨頂は、閉店後に自ら狩りに出かけ、希少なジビエを求めることにもあった。
その晩も、厨房の灯りが柔らかく揺れる中、ハルトは新たな創作料理の構想に心を躍らせ、未知なる素材に思いを馳せていた。
「今度はあれを使って、もう一工夫してみようか…」と、彼は自らの手で新しい料理を生み出す予感を感じていた。
翌日、ハルトは自らの狩猟道具を手に取り、日常の一環として静寂な郊外の森へと足を運んだ。
普段は心地よい静けさに包まれる森の中だが、この日はどこか異様な冷気と静けさが漂っていた。
木々の間を抜ける風が、何か遠い記憶を呼び覚ますように、ハルトの心に不安と期待を交錯させる。
ふと、足元にひそむ光の粒が舞い上がり、次第に眩い光を放ち始めた。
その瞬間、彼は立ち止まり、直感的に何か大きな出来事が起ころうとしていることを感じ取った。
ハルトは足を止め、光の粒が舞い上がるのを見つめながら、心の中で思わずつぶやいた。
(これは、何かの前兆か……?)
その言葉は、彼自身にも不安を感じさせるものだったが、同時に未知の興奮も伴っていた。
胸の中で期待と警戒が交差する。その時、光は急激に強さを増し、ハルトの視界が一瞬で白く染まった。目の前に広がる風景が歪んでいく感覚が、彼を圧倒した。
「うっ!」ハルトは思わず声をあげ、体が強い引力に引き寄せられるのを感じた。
その時、ふと木々の陰から低く、かすかな声が聞こえた。まるで彼の名前を呼んでいるような声。
「…ハルト?」その声に反応するように、ハルトは体を震わせながらも、声のする方へと足を向けた。
足音を忍ばせ、ハルトはゆっくりと声の方へ近づいた。心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、木漏れ日が差し込む薄暗い空間へと足を踏み入れた。
その先に見えたのは、朽ち果てた古びた祠だった。香りが立ち込め、どこか神秘的な雰囲気を放っている。
「こんなところに…祠?」
ハルトは立ち止まり、その場所の不思議さに圧倒されながらも、好奇心が抑えきれなかった。
「どうしてここに…」
そう呟くと同時に、彼は自分の胸の奥にある予感を感じ取る。まるで何か大きな秘密が隠されているかのような感覚に襲われ、思わず足を前に踏み出した。
古びた扉に手をかける前に、深く息を吸い込んで心を落ち着ける。
「ここまで来て、引き返すわけにはいかないだろう…」
心の中で自分に言い聞かせながら、手のひらが冷たい扉の表面に触れる。扉の背後からは、何とも言えない霊的な気配が漂っており、普段の狩猟道具だけでは心細さを感じていた。
「何があるんだ?」
不安と期待が交錯しながら、ハルトはゆっくりと扉を開けた。その音は、冷たい夜風に溶け込み、辺りの静けさをより一層際立たせた。
扉がきしむ音とともに、ハルトの目の前に広がったのは、異質な空間だった。薄く青白い光が舞い、まるで時間が歪んでいるかのように、周囲の景色が揺れ動いている。
「こんな場所、見たこともない…」
ハルトは呆然とその光景を眺め、言葉を失った。目の前には、信じられないほど美しい幾何学模様を刻んだ、半透明のクリスタルのような物質が浮かんでいる。
「これは…一体何なんだ?」
その問いが口をついて出たが、答えはどこにもない。ただ、その不思議な光景に引き寄せられるように近づいた。
祠の内部には、静謐な空気が漂い、どこか生命の息吹を感じさせる不思議な気配が満ちていた。
ハルトはその異常な空間に足を踏み入れると、目の前に浮かぶクリスタルのような物質が微かに光り、何とも言い難い温かさを感じた。
「これは…ただの祠じゃない。何かがここに…」
胸の中で不安が膨らむ中、壁には謎のルーンが刻まれており、まるでハルトに語りかけているかのように感じられる。
「これって…まさか、魔法とか?」
彼は半信半疑でその言葉を呟き、好奇心と緊張が入り混じった感情を抱えながら、さらに奥へと足を進めた。
先へ進むごとに、空間の重さが増していくように感じられた。
「何かが…起きるのか」
その言葉と同時に、薄明かりの中から微かな振動を感じた。壁に刻まれたルーンがまるで生きているかのように、わずかに光を放ち始めた。
「これは…」
ハルトは身震いしながらも、その光に引き寄せられるように手を伸ばした。すると、突然、周囲の空気が変わり、足元がひゅっと浮いた。
「えっ!?」
ハルトは瞬時に足元が浮いたことに気づき、反射的に周囲を見渡す。しかし、空間全体がねじれ、彼の体が浮き上がる感覚が強まった。
「これ、まさか…引き込まれているのか?」
その言葉が現実感を失わせ、彼は目を閉じて深呼吸をする。しかし、身体は次第に重力から解き放たれ、目の前に新たな空間が広がっていた。
「別世界…?」
目を開けると、ハルトの足元には石畳の街並みが広がっており、異国の香りが漂っていた。彼は一瞬、現実を信じられない思いで立ち尽くた。
ハルトは街並みを見渡し、目の前の景色が現実であることを信じられない様子で立ち尽くしていた。
「これは…一体どうなっているんだ?」
彼の心は混乱し、思考が追いつかない。石畳の道に目を落とし、その異世界らしい街並みが確かに存在していることを実感する。
「ここが…異世界ってやつ?」
呆然と呟いた言葉は、確信を持って彼の中で響く。周囲を見渡しながら、ハルトは冷静になろうと試みるが、どうしても心の中で答えが出ない。
「とにかく、この状況をなんとかしないと…」
ハルトは困惑しながらも、まずは動き出すことにした。
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