第6話 ざまぁ要素も不発、全員ぶーたれて次の設定へ

 NTR騒動(?)が中途半端に終わり、周囲には割れたグラスや飛び散った飲み物、悲鳴を上げる令嬢や騎士が散らばる。

リリアは「ふん、つまんないわね」とつぶやいてドレスの裾を払う。


「寝取るにしても、いい感じの展開がなくちゃ盛り上がらないじゃない。ざまぁ展開も“被害者が反撃”みたいなのが定番なのに、全然噛み合わないし」


「そりゃ急に仕掛けられても、みんなついていけないんだろ……」


春人は腰に手をあてて溜息をつく。

ざまぁ的要素もNTR要素も、コメディとして一瞬わちゃわちゃ盛り上がっただけで終わってしまい、妙な後味が残っている。


「私ら、何しに来たんだろうな。悪徳令嬢だのざまぁだのNTRだのが混在してるけど、うまく昇華できてない感じしかしない」


ヴォイドが頭を抱え、モブ子はうなだれている。


「私なんて、何も活躍してませんよ……地味な侍女姿でワイン拭いてただけ……。ざまぁ展開もNTR話も何も、ただ場を混乱させただけにしか……」


 周囲では王太子が騎士に抱えられ、「恥をかいた……」と落ち込み、婚約者らしき令嬢も「もう嫌……」と咽び泣いている。

なんとも言えない修羅場なのに、笑いがあまり起きない空気感。

リリアはつま先で床を鳴らしながら唇をとがらせた。


「やっぱりこれじゃ物足りないわ。面白みがないっていうか……結局NTRだのざまぁだの、要素を詰めても大半が空回りして終わりじゃない」


「ああ……まあ、失敗だよな、正直。読者が見たら引いちゃうだろう」


春人は目を伏せて苦笑する。するとヴォイドがぼそりと、


「だったらまた作者に文句を言うか。何なら、例の“おっさん転生チート”とか“スローライフ”とか、そっちを試すほうがまだマシかもしれない」


「私も配信とかしてみたいです! このままだと後味が悪いだけじゃないですか」


モブ子が両手を合わせて力説するのを見て、リリアは「そうね」とわずかに笑顔を取り戻す。


「仕方ないわ。悪役令嬢だとかNTRとかざまぁとか、確かに悪くなかったけど、いまいち面白くならないから別の流行り要素を詰め合わせてもらおうかしら」


「詰め合わせて……また同じ轍を踏むんじゃないかと嫌な予感がするんだけど」


春人は頭を抱えながら、天井をあおぎ見る。

舞踏会はすでにボロボロで、貴族たちが右往左往するなか、薄い白い光が揺らめくように現れ始めた。


「ほら、作者ーーー! 今度はおっさんチートもスローライフもハーレムも配信も全部やらせなさいよ!」


リリアが凛と声を張り上げると、空間が再び震え出す。

周りの人々が悲鳴を上げ、モブ子が「やっぱり……」と震える声を出すが、もう止められない。


「また世界が崩壊するのか……次はどんなドタバタが待ってるんだか」


ヴォイドが嘆き顔で肩をすくめ、春人は「どうせまたカオスな展開に巻き込まれそうだ……」と頭を垂れる。

やがて会場全体がバリバリと音を立て、白い閃光が視界を奪う。

悪徳令嬢×NTR×ざまぁ要素は、結局中途半端にドタバタを生んだだけで収束できず、彼らは次の“詰め込み世界”へと飛ばされる運命にあった。


「次こそは面白い展開を期待するわよ……!」


リリアの一言が響いた瞬間、眩い光が一気に広間をのみ込み、キャラたちの姿は再びどこかへと消えていった。

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