第5話 年はとるものじゃなくて重ねるもの

 ちょっといい事言った、わたし!(笑)

 なんてね。


「いやだねぇ、年はとりたくない」


 って、よく耳にする言葉。

 うん、わたしも最近(ちょっと見栄張った。だいぶ前から)実感している。

 だけどね、同時に嬉しくもあるんだよね。


 確かに、ある程度の年齢を過ぎると、年をとることって、「成長」じゃなくて「老い」になるからね。

 前は当たり前にできていたことが、できなくなる。

 少なくとも、スピード感は劣ってくる。

 それはもう、仕方ないんだよ。

 諸行無常だからね。どんなものだって、劣化/老化という運命からは逃れる事はできないのだから。

 でもさ、「成長」だって、いい事ばかりじゃないよね?

 お気に入りだった洋服が、着られなくなるとか。似合わなくなるとか。

 子供ながらに悲しかった記憶がある。


「だいぶ年とったねぇ」


 っていう表現は、あまりいい意味には聞こえない。

 だけど、


「だいぶ年を重ねたねぇ」


 っていう表現だと、いい意味に聞こえる気がする。


「とる」っていうのが、マイナスなイメージなのかな。

 対して、「重ねる」って、プラスなイメージじゃない?


 毎秒、毎分、毎時間、毎日、毎年。

 何もしなくたって、重なっていく時間の中で、何にもプラスにならない瞬間は無いんじゃないかと思う。

 確かに、零れ落ちていく、いわゆる「マイナス」もある。だけど、そればかりじゃないもの。


 早く走れなくなったし。

 忘れっぽくなったし。

 あまりたくさん、食べられなくなった。

 これは年を「とった」から。

 だけど。

 1年前の自分よりも、知っている事は多くなったし、分かる事も多くなっている。

 これは年を「重ねた」から。


 となるとやっぱり、視線をプラスの方に向けて「年はとるものじゃなくて重ねるもの」としたい。

 いや、そうしよう、是非!


「いやだねぇ、年はとりたくない」

「いやいや、年はとるものじゃなくて、重ねるものだよ?」


 なんてサラリと言えたら、ちょっとカッコイイよね(笑)

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