ちくしょう、手遅れだ!
「ようやく見つけたぞ、カイゼルよ」
声がしたのは上空から。
見上げれば、こちらを睨みつけるアリスティラ、慌てた様子で降りてくるイルルジーナ、そして深淵のような瞳を覗かせるエレイアが、アリスティラに抱えられて上空に浮いていた。
【浮遊】の魔法……じゃないな、【重力制御】か。そんな高度な魔法すら息をするようにあっさり……さすが王国一の魔法の使い手……。
しかも、彼女は大層お怒りの様子。
こちらを睨みつける瞳には、はっきりと怒気が浮かんでいた。
身体が硬直し、タラリと頬を冷や汗が伝う。
「カイゼル君、無事ですか!?」
「んむっ!?」
そんな俺に、上空から勢いよくイルルジーナが飛び込んできた。ガバッと身体が包み込まれ、べたべたと身体中を弄られる。……正直、性癖(ry
「怪我はありませんか!? あぁっ、あなたが怪我でもしたら、
「イルルジーナ、カイゼルを甘やかすでない」
ふわりとそよ風を吹かせて舞い降りたアリスティラは、エレイアを降ろすと改めて俺の方へと向き直る。
「この阿呆め!」
「っ!?」
「城を勝手に抜け出して暗殺者どもをおびき寄せようとした挙句、我が国の民を巻き込んで戦闘じゃと!? 王族のごたごたに民を巻き込むとはどういう了見じゃ!」
「うっ、ご、ごめんなさい!」
「謝るのなら妾ではなく、この二人にであろう!」
「「っ!?」」
その場の全員の視線がアルバとセイアの2人に集まり、突然話を振られた2人はビクッと肩を跳ねさせた。
第一王女、第二王女、第四王女、第一王子に囲まれる孤児二人……改めて考えるとどんな状況だこれ。
しかしまぁ、アリスティラの言いたいことは分かる。獣人の男の子の方が俺の銀貨を盗んだことが全ての始まりだけど、その後の暗殺者との戦闘は……彼らの命の危機は、本来は無いはずの事だったからな。
俺は2人に向き直り、頭を下げる。
「ごめんなさい」
「王子が私達に頭を下げるなんて……!」
「……いや、謝られても許さんけど?」
「「「「っ!?」」」」
「だってそうだろ。お前が謝ったところで、俺らの状況が良くなるわけもない。本当に悪いと思ってるのなら、まずはこの状況を何とかしやがれ!」
おおぅ、王族に対して臆することもなくこの物言い……この子、めっちゃ大物になるんじゃね?
「……あなたの言うことはもっともです」
「っ……聖母様……?」
彼らの前に屈んで視線を合わせ、優し気な声で語りかけたのはイルルジーナであった。2人もイルルジーナの行動に予想が付かなかったのか、困惑した様子で彼女を見つめる。
「申し訳ありませんが、今の
「埋め合わせ……?」
どうやら2人は、イルルジーナの言葉を素直に聞けている様子。
イルルジーナは、教会を通して炊き出しや無料の魔法治療を頻繁に行っている人物だ。もちろんスラムに住む人々にも……そのため、貧富に関係なく、全国民にイルルジーナの人気は高い。
「まずは怪我の治療と正式な謝罪のため、王宮に来ていただけますか?」
「王宮に……!?」
「はい。その後は……」
イルルジーナが、チラリと俺に視線を送る。
自分で何とかしろってことね……。
「……その後は私からまた話す。来てくれるか?」
「はぁ……分かった、どうせ『行く』って言うまで引かないんだろ? 貴族のそういうところが嫌いだ」
「別にそれでいい。……アリス姉様、2人を連れて行ってくれる?」
「うむ、妾に任せよ」
「それと……イルル姉様。……そろそろ苦しんでる暗殺者を治してあげて……色々聞き出したいから、こっちも丁寧にお願いします」
「ふふ、分かりましたわ」
アリスティラが2人に魔法をかけて宙に浮かせ、イルルジーナは治癒魔法で暗殺者を回復させる。
よし、後はみんな王宮に帰って、ひとまず一件落着———
「———カイゼルよ。まさか、これで終わりとは思っていないだろうな?」
「ギクッ」
「今回、お主が妾達を心配させた分の罰は受けてもらうのじゃ」
「お、お手柔らかに……」
「んん? まさか自ら迷惑をかけておいて、その上罰も軽くして貰おうとでも?」
「い、いえ! どんな罰でも甘んじて受けます!」
「くふふ、言質は取ったのじゃ! では───エレイア」
「はい、アリスお姉様♪︎」
「あっ……!?」
ヤバい、エレイアのことをすっかり忘れていた……! くそっ、あの激重ヤンデレエレイアがずっとおとなしくしていたのは、すでにアリスティラと談合していたからか!
「妾とイルルジーナがでしゃばって悪かったのう。後はこちらで処理しておく故、今日一日カイゼルをお主の好きにするが良い」
「うふふふ……えぇ、もちろん……カイゼル君、今日はい~っぱい、私の
「あ、あの……ほどほどに───」
「どんなことでも甘んじて受け入れるって言ったよね? 嘘じゃないよね? ねぇ……カイゼル君が私に嘘なんて……つかない、よね?」
「は、はいっ!」
ちくしょう、手遅れだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます