第3話 半聖半俗
私のこころをさわってください。私のこころをさわってください。真冬の風は、とうめいなジュエリーの様で、私のこころをさみしくさせる。私のたましいは交合を、いいえ、ともにてをつなぐことをもとめている。切に。
うつくしい、と私が言うとき、私はたしかに戸惑っている。わたしの声が震えるとき、わたしはすこし、悲しんでいる。大学の講義が終わったら、太陽の照り付ける空コマは暇な時間。私は自由な時間を得たけれど、わたしは自由が何かを知らない。私は歌いたい? なにを? だれを? ごめんね、わたしはもう疲れ果ててしまっている。
私のこころをさわってください。私のこころをさわってください。てんしと言うものがあれば、わたしはどちらかと言うと、それに近いのです。わたしは無垢なんです。性交を知った後も、なんだか夢をみているような気がするんです。誰も幸せにならない、ゆめを。
ああ、うつくしいね。わたしはうつくしいね、こんなにうつくしいからだを、おとこにみせるなんて無粋ね。わたしは海や宙や大地に、わたしのはだかを見せたいのだけれど、法律がそれを許さない。赦さない、赦されない私を、救ってくださいね、神さま。
私のなまえは理音と言います。寧音のいもうとです。私は無垢の殻を被った、胎動するまっしろな俗物です。わたしのからだのなかにおんがくが注入されると、わたしは自分の意思に違ってわらう。わたしはわたしの性欲さえ、みずからのものだと、おもってないんです。ごめんね。
私のこころをさわってください。わたしのこころをなめてください。わたしのこころをあなたのこころの舌でなめてください、その味が舌にしみこむまで、わたしを料理してください。わたしを捌いて、練って、蒸して、ひとつのまっしろな塊にしてください。それを、たましいと言ったとしても、わたしは赦されたでしょうね。
わたしはゆうれい
わたしは現実をゆめみて
天界にとどまりつづける
形而上的なゆうれいです。
わたしに期待をしないでください
わたしはジャムのビンすら
開けられないんです
嘘です、全然開けられます。
けれど、わたしは知らないのです
なにがわたしを祝福するか
そして、わたしは知らないのです
なにがわたしの白さを護るか。
まるで天使のようなゆうぐれ
わたしは半透明な脚で
つかのまのだんすをおどる。
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