第6話

理々が、「あ。雨降ってる。」と言う。

 理々は、カーテンを閉める時、

「あ。かよちゃんだ。」と。

「かよ?」

「あ…お兄ちゃんの彼女だよ?

やっぱり忘れちゃってるんだ…」

 少し、怯えながら、理々は、

「入ってもらおう?」と言った。

 一歩踏み出してた理々に、良太は言う。

「やめろ。放っておけよ。」

「でも…」

「殺すぞ?」

にっこり笑う良太。

「そんなこと、お兄ちゃんに言われたの、初めてだよ。」

 理々は、かるく兄にタックルしたあと、

玄関に向かう。

 良太は、居間のガラス越しに映る自分の姿に言う。


「お前って どうして

面倒なものに 自分から首突っ込むんだよ。」


 そして、玄関の前から2階へ上がる時、良太と、彼女の かよの目が合った。


 彼女は、濡れた黒い髪が ひたっと首についていて、制服も濡れ、寒いはずなのに、凍える事を忘れていたらしい。

 長いまつげ、澄んだ瞳で、まっすぐ自分の恋人を見ている。

 それを見て、

「ずっとウチの前に居たの?

ご苦労さん」と、一言、

恋人は、二階にゆっくり上がって自室に入る。

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