第46話 助けて欲しい
左肩は動かないが、まだ体は動かせる。
クソ、フィーネの門番ってのはこんなに強いのか。
俺は門番を睨みつけ、体勢を整える。
「ほう、まだ動けるとな。お主、弱っちそうなのに頑丈よの」
門番は余裕そうな表情で、俺に話しかけてくる。
「ワシの闘気をくらって立つとは見事よ。お主名前は?」
「さっき言ったろ、シエロだって」
「そうじゃったかな?すまんすまん、歳なもんでな。ワシはザリバン。よろしく、な!」
「!?」
挨拶が済んだと同時に一気に距離を詰めてくるザリバン。
俺はアシッドver.フォグスタイルを散布。
さっきくらったばかりの技に警戒したサリバンは足を止める。
俺はその隙にその場を離れ、逃亡を試みるのだ。
「
サリバンが怒鳴り散らしているが、知ったこっちゃない。
俺はサリバンを無視して逃亡。ここは一度シャルと合流することにした。
任されただけに情けないが、そんなこと言ってられない。
俺のMPは、技の使い過ぎであと2しか残って無い。
肩を元に戻すアーツがあるから左肩は治せるが、治したところでアイツを倒す術が俺には無い。
シャルに協力してもらうしか無い。
頼む、シャル。そっちは無事でいてくれよ。
俺はシャルが行った方向へとにかく走り、シャルを探す。
サリバンが追いかけてくる様子はない。
門番だから、その場から動きたく無いのだろうか?
俺はとにかく走りに走って、そしてとうとうシャルを見つけたのだが……
「おう、シエロ。終わったか?」
「何やってんの?」
俺が見つけたシャルは元気いっぱい。
片手にグラスを持って、店のテラスで優雅に読書してやがった。
「何くつろいでんだよ!」
「え?任せるって言ったじゃん。俺はもう終わってるぜ、ほれ」
顎であっちを見ろと指示してくるシャル。するとそこには、お茶とケーキを運んで来る、もう一人の門番の姿があった。
「シャルのダンナ。これでいいですかい?」
「うん、いいよ。ありがとう、ナムくん」
完全に服従させてるじゃないですかい!?
え、シャルさん?この短い時間で何してそうなったんでしょう?
やっぱシャルってとんでもなく強いのか!
「ってあれ。シエロのダンナじゃないですか。もうサリバン様と戦い終わったんですかい?」
ナムは俺に気づき話しかけてくる。
ダンナって。いや、倒せなかったから逃げてきたんだよ。
それに……サリバン、様?同じ門番だろ?
「倒せなかったんだよ」
「え、マジで!?喧嘩売っといて逃げるって。ぷぷ、ダサいな」
シャルは罵って来るが、俺には言い返す言葉もない。
分かってんだよ、ダサいって。
笑うなよ、恥ずかしいんだから。
でもあの門番強いんだって!
見ろよ、俺の肩。メリメリにメリ込んでんだろ。笑ってないで心配しろよ!
俺はやられた左肩を見せ、サリバンが強いというのをシャルに猛アピールする。
シャルは門番が強いんじゃなくて、俺が弱かっただけなんじゃないかと言ってまたバカにしてくるが、ナムは俺を庇う様なことを言ってくれた。
「シャルのダンナ。サリバン様は本当に強いですぜ。70歳を過ぎた今でもバリバリの現役なんですわ。シャルのダンナの強さは戦った俺がわかってるつもりですけど。サリバン様とやってたらシャルのダンナでもどうなってたか。シエロのダンナみたいになってたかも」
シャルにコテンパンにされたナムだが、それでもサリバンが強いと言い張る。
それを聞いたシャルは、自分より門番が強いと言われたことに怒り、そして強いならやってやろうじゃないかと血をたぎらせていた。
シャルは酒場のマスターって聞いてたけど、本当か?
喋り方が変わって以降のシャルはめちゃめちゃ戦闘狂にしか見えない。
間違って国軍総長になったとか言ってたが、ほんとはやりたくて志願者の列に並んだんじゃないかと思ってしまう。
シャルは急いでナムが持って来たお茶とケーキを片付け、サリバンがまだいるであろう、フィーネ城門に再び向かうのであった。
俺はサリバンをシャルに託し、自分の左肩をアーツで治す。
「すごいですね、シエロのダンナ。もう治しちまったんてますかい?」
驚くナムを見て、俺も意外とやるでしょ、ってちょっとだけ胸を張ってみる。
「こんな事やってる場合じゃなかった。追いかけるぞ、ナム」
そして俺もナムを引き連れて、シャルの後を追いかけることにする。
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