第2章 YOEEE勇者、魔族領を目指す!

第44話 フィーネ城下町

 俺とシャルは拠点にしてる宿屋を出て、フィーネの城下町を物色しながら、サイナスのいるフィーネ城に向かう。


 フィーネの街は、レンガ造りの三角屋根の家が立ち並び、城に向かう道にはズラリと出店が並んでいる。

 中世ヨーロッパってカンジかな?マンガの知識しかないから、そんな表現しか思いつかないけど、日本の街しか直接見たことない俺には新鮮な街並み。

 アスティーナの時は、城下町に出たのは1回だけ。でもその時はアスティーナ城からグラド闘技場に向かう時で、悠長に街並みを見る余裕なんてなかったのだ。


「やっぱこうやって見ると感動するもんだな。俺、転生したんだなってつくづく思うよ!」

「いやいや、シエロよ。こっち来てまあまあ経っろ。まだ感動するんか?」


 こんなの見慣れた街だと言う、シャル。

 アスティーナ王国と大差ないと言うが、どの国もこんなカンジなのだろうか?

 俺がいた日本のようなコンクリートのビルが並ぶ国はないのかな?

 シャルに聞いてみるか。


「コンクリート?いや、聞いたことないな」

「そっか、やっぱビルが並んでるようなところはないか」

「ビルってのがどういうものかはよく分からんが、高い建物がいっぱい並んでる国ならあるぞ。『芸術の国ヘカトス』とか『蒸気機関の国シュポン』は文化も発達してて、アスティーナとは比べものにならないぐらい大きいぜ」

「ヘカトスにシュポンか。へぇ〜」


 そっか、国によって違うんだな。

 芸術の国と蒸気機関の国か。

 蒸気機関の国ってのはなんとなく想像できる。蒸気で動く機関車とか船とかがある街なのかな。確かにウレールの中では発達してる国っぽいな。


 ヘカトスはどうかな。

 芸術の国って言うから絵とか銅像、あと音楽とか。そういうカルチャー的な物が発達した国なんだろうけど。そんなとこにビルみたいな大きな建物が並ぶかな?

 どっちかといえば、芸術ならアスティーナとかフィーネの街並みを想像するんだが。

 俺が芸術と思ってる街も、ウレールの人からしたら普通って考えたら、ウレールの芸術ってのも俺の想像とは違うものなのかも。

 でもなんだろ。ヘカトスって聞いてなんか引っかかるんだよな?

 聞き覚えがあるというか……いや、俺の勘違いなのか?


 でも、いろんな国があるんだな。

 魔王を倒すために転生した俺だけど、もし倒すことができたなら、そういう国々を回るってのもいいかもしれない。

 俺の持ってる地球の知識を使えば大儲けとかも……ってうまくいかないか。15歳で知ってる知識なんてアニメとか漫画、ゲームくらいだし。

 そういえば俺って『アーツ:鉄の楽園』があるよな。これ使って何かできないかな?


 俺は商売人でもあるシャルに、前世の知識や鉄の楽園を使って何か出来ないかを聞いてみる。

 するとシャルは好感触。俺の話を食い入るように聞いてくる。


「鉄の楽園ってのは、国の特色とかもあるから、受け入れられるか次第だと思うけど。その漫画とかラノベってのはかなりいいかもしれない!」

「おお、そうか!」

「おうよ。娯楽が増えるってのはいい事だし、金の匂いもするぜ。魔王討伐後も長い付き合いになりそうだな、シエロ」

「そうだな、よろしく頼む」


 話を聞いたシャルは商売人の血が騒ぐのか、なんだか生き生きしていた。

 俺の話に金策を見出したシャルは、早く魔王を討伐して、漫画やラノベを布教することを力強く薦めてくる。

 商売人のシャルに後押しされたら、これはもう、やるしか無いよな。

 俺が作ったラノベ、『おとぼけ勇者とすかぽんたん女神』はユウリのためにと思って書いたが、今度シャルにも見せてみることにしよう。

 反応次第では、ほんとに商業品として売り出せるかもしれないな。あれ、俺作家デビューしちゃう?


 魔王を倒せたらという前置きを忘れ、俺は自分がウハウハになる未来を想像しながら、フィーネ城を目指すのだった。


(ヤッパ、アホダ、コイツ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る