第41話 新技、そして決着
俺はリュードが気を溜めてるのを見計らって、近づき、アシッドを放つ。
「お、おお、なんじゃこれは?」
アシッドを見たリュードは驚き、袖で顔を塞ぐ。
側で審判をしていたシャルも身の危険を察してか、ステージから降りるのであった。
周りの観客には、今ステージ上で何が起きているか分からない。遠目でステージを見ても、大して変化したところなど気づかないのだ。
「なんじゃ、これは?」
目をつぶり、身動きの取れないリュード。
聞かれたらからには教えてあげよう。
「アシッドver.フォグスタイル!」
「フォグ?そうか霧か!」
俺の技名を聞いて、リュードは理解したようだ。
俺が出したアシッドver.フォグスタイルはアシッドを状態変化させたものだ。
アシッドver.フォグスタイルは、スキル:酸攻撃のLvを上げて習得したアーツとかではなく、今まで液体として出していたアシッドを、霧状に変えたものである。
アシッドver.フォグスタイルを習得できたのはヨヨのアドバイスのおかげ。この技はヨヨの使う雨霰から着想を得たもの。
雨霰はそのまま使えば、水と氷の粒が混じり合った雨が出るだけ。
でも同じ雲から液体と個体が出るのが不思議で、ヨヨは追求する。そこでヨヨは、雲が水の状態変化を起こしていると気づいたのだ。
ヨヨが水を雨や氷に変えれるのであれば、俺も酸を個体や気体に出来ると思って生み出したのが、このアシッドver.フォグスタイルである。
アシッドver.フォグスタイルは俺とリュード、あとはシャルには見える微かに見える白いモヤ。多分観客席にいる人たちは遠くて分からないぐらいの薄さ。
薄くしたから、アシッドほどの強さは無いものの、目に入ればかなり痛みを感じる。
いくら無敗の武人といえど、眼球を鍛えるなんてのは無理だろうしな。当然リュードの動きが鈍る。
「くぅ、目が開けられん」
「どうだ、染みるだろ!」
よし、ヨヨのアドバイス通り。リュード動きが止まった。
そうだろ、そうだろ。目が開けられないよな。開けたら痛いもんな。
よし、うまくいったな!
……さてと、問題はここからなんだよな。
酸の霧を発生させて、リュードの動きを鈍らせる。そこまでは想定済みなのだ。
でもこの作戦には問題が。
俺も目が開けられないってこと!
この技は自分の周りに霧を発現させるから、俺も攻撃をくらう対象になってしまうのだ。
現に俺も顔を隠して、動けない状況。
観客側からしたら、2人とも顔隠して、何してるんだと思うだろうよ。
新技を開発したまではよかったのだが、俺がくらわないところまでの準備をする時間がなかったのだ。
このヨヨが考えた作戦はあと1つ、俺の頑張りがかなり必要なのだ。
「くそ、これではお互い見えんではない」
「……」
「なんだ? どこにおる……うぉ!?」
顔を抑え、俺の姿を捉えられていないリュードに対し、俺はすり足で忍び寄り、リュードの顔目掛けて拳を突き出す。
リュードはそれをくらい、驚きはしたが、少しぐらつくだけで、倒される程ではなかった。
俺の攻撃力ぐらいじゃ、リュードには効かないのか、クソ。あークソ痛てーーー。
リュードはダメージはそれほど無いが、シエロが自分を認識して、殴ったという事実に驚きを隠せなかった。
何かあるのかと思考を巡らせるが、リュードには対処する最善策は見つからない。
それもそのはず。シエロは何か特別なことをしてるわけではない。
「あ、あぁ、あああ、ぎゃあぁぁぁぁ!」
ただただめちゃくちゃ痛いのを我慢して目を開けていただけなのである。
気合いで頑張れってヨヨに言われたから、我慢して目を開けてるけど痛すぎるぞ、これ。
花粉入ったわ、どころの騒ぎではないぞ!
酸だからわかってだけど、でも痛過ぎ!
見なくても分かる。絶対今の俺、目真っ赤。
やばい、早くなんとかしないと。
頑張って目を明け、リュードを視界に入れ続けるが、も、もう無理だ。がまんできない。
次で終わらせる!
「アシッドーーー!」
俺は動けないリュード目掛けて、通常のアシッドを放つ。
これで終わりだと思った刹那、リュードの1つの行動が状況を一変させた。
「あーもう、
リュードは右足を高々と上げ、思いっきりステージを踏みつける。
ドン!と鈍い音がなると同時に、ステージが大きく変化する。
「おいおい、そりゃ反則だろーーー!」
リュードの足踏みでステージは全崩壊。
俺は地上から高さ4、5メートルの位置にあるバトルステージから、真っ逆さまに落ちていくのであった。
加減するって話はどこいったよーーー!
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