第35話 女神族って神とは違うの?
俺はアリスを追いかけるのを辞め、お茶をいただくことにする。
コーネリアが入れてくれるお茶は、今まで俺が味わってきた緑茶や紅茶とはまた違う。
苦味が先に来るが、喉を通る途中でだんだんと甘味が出てくる。不思議な感覚だ。
「美味しい? それ、結構高いのよ。先週までやってたお仕事がね、ようやく終わったの。だから奮発して買っちゃったの」
「そうなんですね。女神様でも買い物とかってするんですね」
「それはそうよ。私たちもシエロくんと一緒で普通に生きてるんだから。食事もするし、仕事してお金も稼ぐ、買い物だってするわよ。お茶も飲みたいしね〜」
「そうなんですね……えっ、そうなんですか!」
まったりとお茶を楽しんでいた中で、コーネリアはまったりとした口調で驚くことを言う。
俺が女神様だと思っていたこの場にいる4人は、思念体や偶像の類ではなく、地球やウレールに生きる動物たちと同じ生き物だとコーネリアは語った。
ウレールだったら私たちは魔族の括りに入るのかしら、などと笑いながら話すコーネリア。
魔物とか魔族の違いを先日聞いたばかりの俺には、女神と魔族をイコールで結ぶのはなかなか難しかった。
女神についても知らないことが多すぎる。
また何も聞かされてなかったと思い、俺はアリスを睨みつける。
だがアリスからしたら、女神が神寄りか魔族寄りなのかなど、転生するのに関係ないし、詳しく教える必要性を全く感じておらず
「それに関して私悪くないもん。聞かなかったあんたが馬鹿なのよ。睨むな。バーカバーカ」
と強気で俺を罵ってくるのであった。
アリスの態度にはイライラしてしまう。
だが、この件に関しては、アリスのズボラさではなく、俺の無知が故と思う。
素直に負けを認め、女神族に関して教えてくれと懇願する。
それに対してまたあっかんべーとしてくるアリスだが、勝ちを確信して気持ちよくなったのか、特別に教えてあげると言いだした。
悔しいけど、聞いておきたい。
「あなたもそんなに女神族のこと知らないでしょ。私が話してあげるから。はい、お茶飲んでてね」
俺はアリスに聞こうとしたが、コーネリアが横から口を出す。
コーネリアはアリスが嘘を教えても可哀想だからと、アリスを大人しくさせ、女神族がどういうものか説明してくれると言うのだ。
「は? お前も知らねーとかあんの?」
「てへへへ」
またアリスには騙された。
てか女神本人が女神族のこと知らねーとかあんのかよ。
こいつは何なら知ってるんだ!
俺は何故かアリスと一緒にコーネリアの説明を受ける。
女神族は全部で16人。みんな神の元で世界を監視する役職についている。
でもそれはあくまでも世界の動きを確認できるだけであり、直接何かを生み出したり、生き物の行動を操ったりすることは、女神族には出来ない。
極端な話、女神族は神様のところで監視バイトをしてる人たちなのである。
「質問」
「何かしら、シエロくん」
「監視の仕事って俺でも出来ますか?」
「うーん。出来ると思うわよ。でもやらせてもらえないと思う」
えっと、出来るけどやれないってことは、結局俺には出来ないってことなのか?
世界の監視をするだけでいいなら、勇者ってポジションよりいいと思ったんだけど。
やれるなら転職も考えたのに。
「私たちはね、神様に選んでもらって女神族に転生したの。だからシエロくんも神様に認められたら、女神族になって、監視の仕事ができるんじゃないかしら」
「女神族に転生……ん? 今転生って言いましたか?」
「最初会った時言ってなかったっけ? 私もシエロと同じで転生者だって。コーネリアたちもそうよ」
「……」
俺は江口からシエロに転生してから、元の世界とウレールでの常識の違いに色々と驚いてきた。
だが、その中でも女神族が皆揃って転生者であるという話は群を抜いて驚いた。
フミヤの存在を知ってから、自分以外にも転生者は沢山いるのかも、なんて想像したこともあったが、まさかこんな身近にいたなんて。
「私はね、元々サナリスって世界で王女だったのよ。聖女様〜って言われるぐらい、サナリスでは慕われてたわ。今までであんたぐらいよ、私の首締めに来るの」
「嘘だろ」
「嘘じゃないわよ!」
「いや、それも嘘だとは思うけど、そうじゃなくて」
情報過多がやばい。
15歳の俺の脳みそは弾け飛びそうなぐらいオーバーヒートしている。
アリスの前世でどうだった話は一回後回し。
まずは前世から女神族に転生した経緯から聞くことにする。
「そうね、私の昔話も少し交えて話をしましょうか。シエロくん、お茶いるかしら?」
コーネリアは女神族に転生する以前の話から始める。
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