第30話 お偉いさんたちに報告しよう
天界から戻ってすぐ、ヨヨにレームとフミヤのことを話してみる。
「フミヤが天界にわざわざ行って、そのプラモとかいう物の話をしてたと、レーム本人が言ってたのか?」
「うん。仲がいいまでは行かないけど、文化人フミヤはそこまでレームを敵対視してなかったっぽい」
「んー、レーム本人が言うんだからそうなのかもな」
俺の話を聞いてヨヨは、レームの言うフミヤと、自分が認識してるフミヤに食い違いがあると感じたけど。
「俺の聞き間違いだったのかもな。もしかしたらフミヤがぶっ飛ばすって言ってたのはラームとかヨームだったのかもしれん。30年も前の話だからな」
この件は自分の勘違いかもしれないと言い、特に重要な話では無いと思ったのか、ヨヨは早々に話を切り上げて大浴場を後にする。
何か引っ掛かりが取れない俺だったが、確かにヨヨの言うとおり。
昔のフミヤがレームと仲良いとかプラモデル好きとか、今の魔王フミヤには関係ない話かもと思い、俺はヨヨを追っかけるように大浴場を出るだった。
4日間着ていた洗濯もしてない服とはおさらばし、俺はコロネが用意した新品の服を身に纏い、王様たちに会い行く。
王の間で待機していた王族や貴族たちは、俺とヨヨが到着すると、盛大な拍手で迎え入れてくれる。
「4日しか修行してないのに拍手されるって、どんだけ弱いと思われてたんだ」
「そういう意味で拍手してる訳じゃねーよ!」
ヨヨは俺を冷やかすが、この拍手はそういった「弱いのに4日も頑張れたんだ」、「生きて帰ると思わなかったよ、えらいね」とかのネガティブ拍手じゃないはずだ。
でもヨヨに言われてから、勇者歓迎ムードのはずの拍手が、馬鹿にされてる気もしてきて、小恥ずかしくなってきた。
やばい、今顔赤いかもしれない。
落ち着け、落ち着け俺。
息を大きく吸い、気持ちを整える。
そして王や貴族の前で、俺はこの4日間の修行中に起きたことを、黒塗りスキルのことだけ省いて話す。
黒塗りスキルの話を省いたのは隠したいからではなく、あくまで変な疑いを持たれないためにである。
ヨヨやラック村の人たちにステータスプレートを見せても確認されなかった物を、王様たちに持ってると言っても証明できずに、ただ疑われるはずだ。
ならいっそ言わなければいい。
ステータスプレートを見せたところで見えないのだから。
俺が話を終えると、次は質疑応答の時間。
まず最初に口を開いたのはリュード。
リュードが指摘したのは俺のステータスについて。
俺のLvは現在7。ヨヨとの戦いで温泉に入った後、ヨヨを探している間に見つけたスライムたちを倒して、Lvが上がったのが最後である。
スキルとアーツはスキルポイントを大事に取っているため、黒スライムとの戦いぐらいから使っていない。
ステータスが弱いことも気にしてるようだが、リュードはその中でも一番は
「何故勇者の加護にポイントを使わない?」
俺自身どうしたら良いか悩んでることを気にしてやがった。
リュードの言いたいことはわかる。
スキルポイントが余っていて、世界で誰も持っていないと言われる勇者の加護をLv0のまま放置する理由が聞きたいのだろう。
俺は幸運値が上がってから割り振るつもりだったんだ。
でもまだポイントを割り振らない理由はたった1つ。
「幸運値がずっと0だからです」
初期段階からLvが6上がってるにも関わらず、幸運値だけはずっと0のままなのである。
そう、俺はスキルポイントを大事に取っておいたと言っていたが、実は割り振ったあとに出てくるアーツがゴミ能力かもしれないと思うと、怖くて手がつけられないだけだった。
勇者の加護にポイントを割り振って出てくるのがゴミだった場合、もう俺の勇者としての価値はほぼ皆無と言ってもいいだろうから。
「幸運値が0だからなんだ。使わなければ意味ないだろ。明日から魔王軍と戦うのであろう?すぐに勇者のアーツを獲得せんか」
「……そうですよね」
俺はリュードの提案をつっぱねる理由が出てこない。
リュードは一度話を終え、スキルの割り振りは他の人の話が終わって、最後に行うことになった。
リュードが話し終えると、次に口を開いたのはアスティーナ国女王、シルビア・ヴェイン・アスティーナであった。
シルビアとは転生後に初めて王の間で顔合わせをしただけで、まだ声も聞いたことがなかった。
シルビアの容姿はユウリにそっくり。
子供のユウリをモデル体型にしたカンジ。
ただ目つきだけユウリよりキリッとしており、見た目怖そうな雰囲気もある。
シルビアに何を聞かれるのかとソワソワしていた俺だが、シルビアは俺にではなく、ヨヨに質問を投げかけるのであった。
「ヨヨ様にお聞きします。私は守護神というものを今まで知りませんでした。守護神とはどのようなものでしょうか?」
シルビアの質問に、周りの貴族たちも「たしかに守護神とは何か」、「聞いたことないですね」とざわつき始めた。
なんと、守護神について知らなかったのは俺やアリスだけではなかったのだ。
確かに俺もその点について前々から気になってたが、ヨヨ本人に聞くことはしなかった。
スラ洞窟でヨヨは、自分で「俺は雨の守護神だ!」と宣言してたのに、その後は守護神についての詳しい話をしたく無さそうな雰囲気だったのだ。
ヨヨのステータスプレートを見せてもらい、『役職:守護神』という表記を確認したその時も、ヨヨの様子がおかしかった。
それで俺はヨヨには聞けない気がして、ラック村のジルに守護神について聞いてみた。
しかしジルも守護神については知らなかった。ヨヨを神だと崇めていたジルも、守護神という言葉は、俺から初めて聞いたと言っていた。
シルビアの質問は俺もずっと知りたかったこと。
ヨヨが何と答えるか。
「……言えない」
なんとここで、ヨヨは黙秘を主張した。
その一言でヨヨは周りの貴族から大バッシングを受ける。
無礼だ、何様だと罵声が飛び交う。
それはそうだ。
女王であるシルビアの問いに答えないなど、一歩間違えたら打ち首にされてもおかしくないことだろう。
俺はヨヨに言えよと言うが、ヨヨは頑なに口を開かない。
周りが罵声をヨヨに浴びせる中、シルビアだけは顎に手を置き、何か考えている様子。
そしてシルビアはもう一度質問する。
「ヨヨ様がおっしゃるのは『言えない』であってますか?」
「合ってるぞ」
「そうですか、ならここでの話は終わりですね」
シルビアはヨヨの返答に1人で納得し、自分の番を終える。
ヨヨとシルビア以外、その会話の意味がよくわからないままだったが、シルビアが話を終えると言った後、誰もその議題を続けることはせず、次の話に移る流れになっていたのだ。
女王のシルビアには王でも逆らえないとかあるのだろうか。
ヨヨの黙秘を咎める者は誰一人としていなくなった。
「次は私の番ね。シエロに質問です」
シルビアが身を引くと、次はユウリが質問する番だという。
何を質問されるんだろう。
好きなタイプとか聞かれるのかな?
そんなわけないよねー。
まだ出会って4日だし、早いよねー。
ステータスの話を終えている俺には、どんな質問が来てももう怖くない。明らかに気が抜けていた。
「どうぞどうぞ、遠慮なく質問してください」
「そうですか。なら聞きますね。黒塗りスキルとは何のことでしょうか?」
「「!?」」
ユウリが笑顔で投げかけた一言に、俺とヨヨは驚きを隠せなかった。
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