第16話 先輩に突撃された理由は
ステーションに戻った俺はさっそくギルドに報告しに行く。
もちろんランちゃんの受付で報告する。
「はい、ご苦労さん。領主様から依頼を受けてくれたことのお礼メールが来ています」
「領主様からですか。そういえば前に受けられる人がいないと言ってましたよね」
「はい、領主様も悩んでいましたから」
「領主様と縁ができたのはうれしいな」
「そうですね、普通では関われることもない雲の上の方ですからね」
「さて、ミッション完了のチェックをお願いします」
「ではギルドカードをお願いします」
「はい確かに。ミッション完了となりました」
「それで報酬は?」
「今回の報酬は30クレジットです」
「なんか渋いね」
「まあ、渡さんだとデブリ回収で1,000クレジット超えの収入になったりする人ですから普通の依頼は安く感じるわね。」
「まあね」
「でも普通はこんな物なのよ」
「はいはい。ありがとうございました」
「あっそうそう、前に言っていた一緒に食事する件ですが、今夜はいかがですか?」
「前回はランちゃんの急用で実現できなくて残念だったから、うれしいよ」
「今日こそは大丈夫で受付仲間にも話を通してあるので割り込み仕事があっても代わりにやってくれる手はずになっています」
「それで何を食べにいきますか?」
「とっても有名なお店の予約をしてあります」
「うん。楽しみ」
「私も」
二人でポトフを食べに出かけることになった。
「このお店よ」
クラッシックなたたずまいのお店らしい。
「感じが良い所ですね。
「デートスポットとしても有名なのよ」
「デートね」
ボッチ歴が転生前から続いている僕からするとドキドキする単語が出てきた。
「どうぞ、お嬢様」
ドラマのデートシーンを思い出して真似してみる」
「ありがとう」
席に座ってしばらくするとポトフが運ばれてくる。
大きく切られて煮込まれている野菜をかじるとうまみが口の中に広がる。
「うまい!」
「でしょ。天然食はやっぱり味が違うわね」
十分な栄養があると分かっていても合成食はおいしく感じられない。
デブリ買取で大きな報酬があったときはやはり天然食を食べよう。
「渡さんおいしい食事に連れてきてくれてありがとう」
「いえいえ案内してもらったのは僕だから」
「ギルド平職員の給料じゃ年に一回くらいしか来れないお店なの」
「そうなんだ。じゃあ、また誘っても良い?」
「もちろん大歓迎よ」
なんかリア充の予感、なんて思っていたらその気分をぶち壊す人が登場した。
「あ、いたいた」
「あれ?なんで先輩が?」
イバリ先輩だ。
「受付のスー嬢に聞いてきたんだ」
「あの娘裏切りやがったな、あとでとっちめてやらなきゃ」
「ん?何か御用ですか僕らに?」
「実は渡さんに話があってきました」
デートを邪魔されたので身構えていたら。
「すぐにお礼が言いたくてお邪魔しました」
「お礼?」
「ノースランドに食糧を届けてくれてありがとうございました」
深々と頭を下げる先輩。
「へっ?」
「あ、そういえばイバリさんはノースランドの生れでしたね」
「そうなんです。故郷の村がノースランドでして。両親と幼い弟と妹が住んでます」
「両親から不作で食べる物がないと聞いて仕送りを多めに送ってはいたんですが」
「それは大変ですね」
「ところが地震があって食糧入荷が滞っていて困っていると連絡が来ていて」
「あ、届けた村にも似たような母子がいましたよ」
「俺が届けられないか地上に降りられる宇宙船をさがしたが俺の金じゃ借りられなかった」
「それはとても心配でしたね」
「そしたら母から合成食が届いたと喜びの連絡があって」
目に涙をためている。
「本当にありがとうございました。僕の家族の命の恩人ですね」
「よろこんでもらってよかったです。冒険者冥利を感じます」
「すごいな渡さんは新人なのに、もう人助けができるんですね」
「俺はまだ自分がおいしい物を食べたいとか欲求のためにやっているのに」
「たまたまですよ」
「いえ、生き方が違うと感じました。素晴らしいです」
「そうですね。もっと報酬の多いみミッションも選べるのに」
「いやあ、普通に生活できるだけの報酬はなんとかなりそうですし」
「欲が少ないんですね」
「そうでもないですよ」
どっちかというとお金じゃ買えない欲があるというか。
「あ、デート邪魔してすみませんでした」
「いえいえ」
「わざわざお礼をいいにきてくれるってイバリさんもカッコいいですよ」
あれもしかしたら三角関係になるのかも?」
「邪魔者はさっさと退散しますよ。おふたりで楽しんでください」
「はい、さようなら」
ちょっとびっくりしたけど温かい気持ちになったからハッピーだね。
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