命賭けポーカー レオの策
テーブルの上にそれぞれ5枚のカードが配られる。プレイヤーの4人はそれを確認する。
「あんまり強くないなー。」
と顔をしかめるレオ。
(この言葉だってブラフかもしれない。油断するな私。)
アリスは敵であるレオとシキの一挙手一投足を逃すまいと、入念に観察する。顔をしかめてはいるがどこか余裕そうなレオ。一切表情を変えないシキ。つかみどころのない2人を出し抜くにはまずは観察をすることが重要であることはアリスも気づいていた。
コウはというと、すでにこのゲーム全てを見透かしたような表情で、ただ黙っている。
(コウはルール説明の時点で何かに気が付いた。それは恐らくこのゲームの常識を覆すほどのこと。私はコウに合わせれば勝てるはずだ。)
「それでは1ターン目、親はアリスからです。」
「つまり僕からスタートってことだね。」
「そういうことです。」
セレシアとゲームの流れを確認したレオは場にチップを出す。
「まずは10枚でいいかな。」
座り順で次はシキ。
「10枚。コールします。」
続いてコウ。
「コールだ。」
そして親であるアリスに番が回ってきた。
(ここはコールで問題ないだろう。レオのがブラフかどうかはまだわからないが、それを確かめる為にもここは勝負を受ける。)
「コールする。」
このターンに参加するかしないか、ただそれだけだったがアリスの心臓はものすごい速さで動いていた。
賭けているのはただのチップではなく、命だ。自分の命を文字通り賭けている。通常の感覚で行えるゲームではなかった。
「では続いてカードチェンジです。」
このカードチェンジでこれから勝負する手札が決まる。
「じゃあ3枚チェンジで。」
レオはそういうと持っていたカードの内3枚をセレシアに渡す。そしてチェンジされた3枚を見て、また顔をしかませる。
「あー、こりゃまずい。」
ギャンブルの天才であるレオがこんなに全員に聞こえるように言った。これは…
「わざとらしいな。」
そう言ったのはコウだった。
「さっきからその演技やめてくれないか?お前の手札が強かろうが弱かろうとどっちでもいいんだが、その臭い演技を見るたびに笑えてくるんだよ。気が散るからやめてくれると助かるよ。」
再び始まったコウの煽り。確かにレオのわざとらしい演技は気が散るとアリスも思っていた。
コウの煽りに対してレオは薄く笑みを浮かべながら。
「もしかしてデスゲーム最強のコウくんはこんなことで気が散るのかい?それは驚きだよ。まさかここまで弱いとは。」
こんなに不快になるような言い方が出来るとはある意味天才だなとアリスは思った。それくらいレオの話し方、仕草には人をいらだたせる何かがあった。
「そうか。これが天才ギャンブラーの作戦だったか。臭い演技をして相手の気を散らす。この程度の人間だったわけか。」
コウとレオはとても楽しそうに煽り合う。命のやり取りをしているとはとても見えないくらいに楽しそうに。
その後、シキは3枚、コウは2枚のカードを交換した。
アリスの番がやってきた。
(今私の手札には♥が4枚もある。ここで残りの♠を捨ててフラッシュを狙いにいくべきか…それとも今ある♥6♠6のペアを温存しつつ、他の3枚を交換するか…どうするべきだ。)
アリスは考えられるだけのことを考えつくした。しかし答えが出ない。
(一体どうすれば…)
ふとアリスはコウの顔を見る。とても余裕そうな、楽しそうな顔をしたコウ。それを見たアリスは決心する。
(安定を取りに行ってはダメだ!私には運が付いている。ここはフラッシュを狙いに行くべきだ!)
「1枚チェンジする。」
アリスは♠6を交換に出した。
(来い!♥!)
セレシアに裏向きで渡されたカードを恐る恐る確認する。
(来い!)
アリスが重大な局面にいることは他のプレイヤーからしても明らかだった。
なぜならカードを確認しようとしているアリスは、まさに命を懸けている顔をしていたからである。もはやそこにポーカーフェイスは存在していなかった。
♥を引けたら強力役のフラッシュが完成する。アリスはカードをついに見る。
(来た!♥だ!私はフラッシュを完成させることができた!)
アリスの表情を見て強い役がきたことを確信するコウとレオ。
「それではカードが確定した所でお楽しみのベットタイムです。」
大きな胸を揺らしながらセレシアは場を盛り上げる。
(手札は強い。恐らく負けることはないだろう。あとはここからどれだけ相手チームからチップを奪えるかだが。)
アリスはレオの様子を観察する。相変わらず渋い顔をしている。ため息をついたのち、少し離れた隣にいるシキに話しかける。
「シキさん、少し僕の近くに来てくれるかな。あ、椅子ごとね。」
シキは言われるがままにレオの近くに椅子を移動させた。ポーカーでは考えられない、プレイヤー同士が真隣にいる状況になった。
「ちょっと近すぎない。それじゃあ手札が見えちゃうんじゃ…」
アリスの心配は的中する。なんとレオは堂々とシキの手札を覗いたのだ。
「いや、ちょっと待って!」
アリスの言葉を無視し、レオはさらに信じられないことを口にする。
「シキさんのこのカードと僕のこのカード交換してくれない。あ、このカードも欲しいから僕のいらないこれあげるよ。」
「はああああああああああ!」
静かなカジノでアリスの声が響く。
「そんなのダメに決まってるだろ!ルール違反だよ!何がこのカードとこのカード交換しよう、だ!ポーカーにそんなルールないだろ!なあそうだろセレシア⁉」
一連の行動を見ていたはずのセレシアはなぜか黙っていた。それは冷静にという感じではなく、動揺、焦りからくるものだとアリスは直感した。ゲーム進行役である天使のこんな表情を見たことがなかった。
「なんか言えよセレシア!」
青ざめた顔をしたセレシアがついに口を開く。
「…ルール違反ではございません。」
「…え?」
セレシアの言葉にアリスの頭はついに限界を迎えた。今目の前で行われているのはプレイヤー同士でのカード交換だ。そんなことがポーカーで許されるはずがなかった。
「そういうことだよアリスさん。僕たちは何もルール違反を犯していない。奴隷であるシキさんは僕に有利なカードをよこして僕を勝たせる。シキさんには僕の身代わりになってもらう。最高の作戦だ。」
(そんなはずはない。これがルール違反にならないのはおかしい。でも天使がそういうなら間違いないのだろう。しかし天使のあの動揺っぷり、間違いなくレオは何かを仕掛けている。今の私にはそれが何なのか全くわからない。が。)
アリスの隣で不気味な笑みを浮かべているコウ。
「何かわかったんじゃないのかコウ。」
「もちろんだ。というかこうなることは予想通りだったよ。」
(やっぱり、コウは何が起きているのか理解していた。それにこの状況になることすらも想定済み。悔しい、なぜ私にはわからないんだ。)
拳を握りしめ、自らの膝を叩くアリス。それは敵に出し抜かれたからでた悔しさではなく、敵の作戦に気づけない自分の愚かさを呪うものだった。
いつもおいて行かれる、そんな気持ちがアリスにはあった。
「流石はコウくん。君も気づいていたか。これは中々面白い戦いができそうじゃないか。」
「ああ、久しぶりだよ。こんなにもわくわくするデスゲームは。」
アリスを置いて、強者2人は深く笑い合っていた。
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