第22話 毒草


そんなこんなで俺たちは一旦家に帰ってきた訳だが、家に着いて少したった後で、可愛らしい音が聞こえてきた。


「っ!? あ、あはは、お腹なっちゃった」

「…………お腹減ったの?」

「うん、いつもはおじさんに食べさせてもらってたから…………」


まぁ、そうだよな、いつもお昼ご飯を食べているくらいの時間はもう過ぎてしまっているのだし、お腹が減らないわけが無い。

何とか食べれるものを確保しなくてはな。

俺の場合もうそこら辺の雑草でもいいのだが、リリンはそうはいかない。

そういった物に含まれる毒素などでお腹を壊してしまったら大変だ。


「リリン、ここら辺に食べ物ってないの?」

「んー、木の実とかならなくも無いけど……2人分集まるかな……」

「あ、私はそこら辺の草でいいから、昨日も食べたし」

「……ええっ!?」


リリンは驚いているが、実際本当にそこまで食べたいという訳では無いのだ。

だからこそ別に草でも良かったのだが、リリンが驚いているのはそこじゃなかったみたいだ。


「えと、ここら辺の草ってさ、殆ど毒草だと思うんだけど…………」

「……え」


食べた時のことを思い出すが、特に体調が悪くなったりとかそういった事は一切無かった。

食べた後すぐにあの狼の魔物が現れて、俺は動けなくなってしまったんだ。

その後、しばらくして体が動くようになり、リリンの元へと駆けつけたのだが、その間にも特に毒の効果はなかったように感じる。


「…………とりあえず、私が食べた草取ってくる、リリンは待ってて」


俺はそう言ってこの前の場所へと行こうとした。

しかし、そうしようとすると、突然リリンに服の袖を掴まれる。


「なに、どうしたの」

「…………1人で行かないでよ」


リリンは少しムッとしたような表情でそう言った。

いや、けどあの魔物が出た場所にリリンを連れていくというのは少し嫌だ。


「僕も行くから」

「…………むぅ」


いや、そう言われても、出来るだけ外に出したくないというか……。

まぁ、それが過保護だってのもわかってる。

リリンの方がここらで生きてきた歴は長いのだし、この周りについても俺よりも明らかに詳しいだろう。


「それにさ、ネムちゃんより僕の方が動き早いんだから、どれだけ一人で行こうとしてもついていけちゃうんだからね?」

「…………」


まぁ、そうだけども!

なんならリリンの事を守ろうと思っていても、リリンの方が力とかも強そうだし、逆に守られるみたいなことになってしまいそうだ。

流石にリリンよりは長く生きた経験があるわけだし頭とかそういった面ではリリンよりも良いとは思うけど、それ以外は多分負けてる。


「…………わかった、けど、あの狼の魔物とかが出たりしたらすぐ逃げるからね」

「もちろん!」


リリンは満面の笑みを浮かべる。

守りたい、この笑顔。


まぁ、ともかく、意地でもついてくるようならいっその事一緒に居た方が安全だ。

それに、道中何か食べれる植物でもあるかもしれないし、その時にリリンが居てくれればある程度の判別は出来るだろうからな。


「じゃ、行こう」

「うん! しゅっぱーつ!」


家から出た俺たちはとりあえず昨日俺が食べた草の所へと向かった。

道中、毒々しい色をした草やよく分からない形をした草についても聞いてみたが、それらは全てもれなく毒草であった。

そこまで強いものでは無いらしいが、それでも食べたら体に悪影響があるらしい。

うん、やはり食べなくてよかった。


その後に俺が食べた草の所まで来た。


「これ、私が食べた草」

「んーと、これはね…………」


リリンはしゃがみこんで、草に触れないように しながら観察をしていた。


「えっと、毒草だね、ここら辺ではあんまり見ないくらい強力なやつだよ…………」

「……え」


んーと、待ってくれ、これ、毒草なの?

え、俺めちゃくちゃいっぱい食べちゃったんだけど。

リリンは持ってきた本をパラパラと捲り、その草についての詳細を調べてくれた。


「えと、これは強力な麻痺毒が含まれてる毒草みたい……なんかピリッとしたりしなかった? アンデッドだから毒耐性があるのかもしれないけど、流石に少しは効くと思うんだよね…………」


ピリッと、ね。

食べた後には特に何も無かったけど……恐怖で動けなくなってたくらいで…………。

ん? 動けなくなる?


「リリン、麻痺毒って事は動けなくなるってこと?」

「多分そうかな、僕食べた事ないからわかんないけどね!」


そうか、つまりあの時動けなくなったのはあの草のせいだったのか…………。

うわー、そう考えると俺すっげぇ危ない綱渡りしてたんだな。

あの時、あの狼の魔物が俺に敵意でもあったりしたのなら、俺はひとたまりもなかっただろう。

動けなかったわけだし、それのせいで2度目の人生が終わってたかもしれない。

いや、3度目か?


「ネムちゃんは毒に耐性とかあるのかな…………だったらネムちゃんが食べれる食べ物とかはいっぱいあると思うよ!」

「……どういうこと?」

「だって、ここら辺の植物って美味しいけど毒があるってやつが多いからさ!」


…………マジかよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る