悪役貴族に転生したゲーマー俺氏、娯楽を求めて最強になる~普通に基礎スペック高いキャラに原作知識と現代知識を持たせたらどうなるのか?~

ソルト=ノベルズ

第1話

 姿見に写るのは縦にも横にもでかい体……まぁ、簡潔に言うとデブ。そして、顔は醜悪でこの世の醜さを凝縮したようだ。


 年齢は……確証はないが、恐らく5、6歳。


(……にしても、ほんっとーに気持ち悪い。)

 で、問題はその醜悪な顔をしたやつが……俺ってことだな。


 ……取り合えず、冷静に考えよう。

 俺はそこまで顔が良いわけではない。だけど、ここまでではないはず……だよな?


(……いや、さすがにここまでではない。うん。そうだな。)


(……んで、どうしようか。なんか、この顔、既視感デジャブがあるんだよな……)


 俺は少し考える。

(思いつかないな、これは思い出してからにしようか。)


(そして、だ。今は一体全体どういう状況なんだ?)

 いつも道理に起きたら違う部屋にいて知らない誰かになってたってことだろ?


(……夢か?)

 そう思って俺は自分の腕を抓る。


「痛っ!」


 腕に広がる突き刺すような痛み。それは、俺に苦痛を与えるとともに、今が現実であることを表していた。


(夢ではなかったか……)

 夢ならばどれほどよかったでしょう……

 そう考える俺の背中には、なんだか哀愁が漂ってた気がする。(気のせい)


(……まぁ、物的証拠を集めるか。論より証拠だ。)


 そう考えた俺は本棚らしきものを調べる。


(……うーん、薄く埃を被っていてあまり使われていないことがわかるな。ただ、所々埃を被っていないところもあるから、使われていないわけではない。)


 また、絵本らしきものほど埃を被っておらず、図鑑や小説らしきものは埃を被っている。


(あとは、装飾や家具、寝具の大きさから考えて、この部屋の持ち主は子供だな。)

(となると、常識的に考えればこの部屋の持ち主……というか住んでいる部屋は俺ってことだな。)


 ……まぁ、常識的に考えれば、だが。

 普通にこのガキ……俺の体が不法侵入してる可能性もあるしね。


(ん?なんでって?)

 そりゃあ、こいつの顔が怪しいからに決まってるからジャマイカ。


 え?ルッキズム?

 ……うるせぇよ。


 なんていう脳内茶番も終わりにして、まじめに推理をしはじめますか。


 と、一旦この部屋の持ち主は俺と仮定して。

 部屋の装飾には多少金が使われている。


 メッキの可能性もあるけど、他の家具が今より前の技術……中世ぐらいだということから考えるに普通に金が使われているだろう。


 つまり、このガキ所謂いわゆる華族や豪族みたいなものってことか。少なくとも、一般人の子供ではない。


 で、本棚にしまってある本の表紙。


 これは、日本語ではない。英語でもフィンランド語でもない。俺の知らない言語だ。そこから考えるに、俺は外国圏の貴族の中にいるってことか?転生みたいな。


 だが、少なくとも中身は俺だ。

(最後の記憶は……あれ?)


 俺の……名前が思い出せない。最後の日付も思い出せない。……

 だけど、記憶はある。ハマっていたゲームも思い出せる。


 確か、ElementschoolRPG……

 と、考えたところで俺の頭がショートする。


 推定36年分の膨大な情報を持った神経伝達物質が脳をオーバードーズの如く巡りまわる。そして、脳が割れてしまうような激痛に襲われる。


「お˝え˝……」

 吐き気を催す程の情報に脳が蝕まれる。


 そして俺は思い出す……いや、思い出してしまった。

 だから、気づいてしまう。


 ………


「え?……俺、悪役に転生したの?」

 俺が、ElementschoolRPG……通称”エレスク”というゲームに登場する悪役……バルド・サーベェントということに。


 俺は、気づいてはならない真実にたどり着いてしまいました。

 <正気度チェック 1d10/1d100>

(……というのは置いておいてだ。)


「……まじかぁ……え、まじかぁ……せめて、せめてさ、俺の育てた主人公にしてくれよ……」

(よりによって、こいつバルドか……三章のボス……あ、普通にこいつ死ぬじゃん。)


 悲しみに暮れる俺。

「……ん?」


 ここで一つ妙案を思いつく。

「……このころから努力をすれば死なないのでは?」


 ゲームのチュートリアルが終わりOPオープニングが終わり主人公を動かせるようになった後……以下本編開始時は主人公が15歳になってから。


 俺の年齢を5,6歳と仮定すると現在は本編開始の9,10年前ということになる。


 ということは、単純計算主人公より長くレベルアップ(どっちの意味でも)できるわけだ。


(あと、本編開始前なら破滅回避もできるのでは?)

 ……いや、破滅回避どころじゃないな。他のキャラの死亡フラグとかも折れる。


 大体本編開始時7年前に過去イベントは起きているからね。(大人キャラは除く)


 幸いなことに、俺はこのゲームの有識者……というより普通にやりこみ勢だ。ちゃんとミニチャレンジまで全クリしてドーピングアイテム乱獲して全ステータス9999までしてるわ。


 ……

「とりま、そのルートで行くか。」


 ……で、とりあえずどーしよ?

 俺は、この後の目標のために考える。


「ひとまず、強くならないとだめだよな。破滅回避も大事だが……実力主義的な面が多いこの世界では、力をつけて負けないようにするのが最適解だし。」


 ……やっぱ、レベル上げか?

 だけど、少なくともこの時期はメタルエリア効率的にレベルを上げられる場所が解放されていないんだよな……やっぱ鉱山か……?いや、そもそもこいつの家の近くのMAPは……


 と、考えていたところで突如扉が開く。

「坊ちゃま、昼ご飯の時間です。」


 そういって俺のほうを見るのは40代ぐらいの執事。多分執事服がなかったら不審者にしか見えない髭を生やし、俺のほうを薄く睨んでいる。


(……いや殺意駄々洩れなんよ!いかにも「お前を殺す」って感じしてるもん!もうちょっと抑えなよ!)


 あと「お前を殺す」は生存フラグなんで嫌いな相手には使うなよ!……あ、もちろん仲の良い相手にも使うなよ!お兄さんとの約束だぞ!


 ……まぁ、疑われないようにもさっさと行くか……ばれると非常に面倒くさい。

「わかりました。今行きますね。」


 俺がそう答えると、執事さんの時が止まる。

 あれぇ?俺何かやっちゃいました?


 ……あ、そういえばそうじゃん、こいつバルド敬語使わないじゃん!

 やっべぇ!ミスったなこれ!


「ぼ、坊ちゃま、先程なんと?」

 ほら聞いてきた!疑惑の目で見られてるって!


 どうしようどうしよう……

 ……ん?


 いや、違う。ここは、もう堂々と胸を張るべきだな。


「『わかりました。今行きますね。』と言いました。」

 時間にして1秒もたたない刹那の沈黙の後、執事さんが口を開く。


「……そうですか。では、行きますよ。」

 そう言って執事さんは歩き始める。


(何とかなった……のか?いや、疑っていた?謎の空白があったし……あぁ、もっと実用的な心理学学んどけばよかった、最悪だ……)

 今更一人反省会しても意味がないような気がするが、俺は自問自答していた。


 そして、ふと前を見ると執事さんがもうかなり前にいる。

(おっと急がねぇとな。)

 そう考えながら俺は執事さんのほうへ小走りを始めた。


 ◆◇◆

 そして早十分。俺は食堂に到着した。

(かなり……広いな。うん。長机こと食卓にも細かな細工が施されていて、豪華な印象を受けるな……)


 これが貴族ってやつか……贅沢だ。正味、こんなことに金を使うよりは雇用を増やしたほうが良いと思うんだがなぁ。


 ……いや、こうやって権力や財力を誇示することも仕事に入るんかな……?貴族は舐められたら困るらしいし。


 なんて無駄なことを考えながら俺は推定自分の席に座る。

 そして俺から見て左前には御父上。バルドの実の父親であり本編第四章のボス。そして……


「バルド?今日も元気か?怪我はないか?何か嫌なことがあったら何でも言うんだぞ?私が何でも叶えてあげるぞ!」


 と ん で も な い 親 バ カ で あ る 。

 間違いなく、本編バルドが腐敗した一因である。


 因みに、バルドは、努力を疎う人間だと設定集に書いてあった。

 もともとの反吐が出るような性格に加えて、親からもデロンデロンに甘やかされ、初期能力だけは高い秀才で努力せずとも大抵のことができる。


 ――まぁ、堕落する要素満載だな。3倍役満だ。


 だからか……いや、だから、本編時空バルドは侯爵家長男としての権威を使い女を侍らせ金で釣った盗賊団やら下級貴族に主人公を襲わせるというゴミカス野郎になっているわけだが。


 閑話休題。


 まぁ端的に言えば重度の親バカということですよお父上は。

 まぁここからやることはわかるよな?


「父上、折り入ってお願いがあるのですが。」

「おぉ、なんだ?何でも叶えてやるぞ。」


 うーんチョロい。

 で、こいつバルドの記憶からちょっと過去を引っ張り出しまして。


「以前、剣術のご指導を断ってしまったのですが……大変迷惑をかけてしまいますのは承知ですが、剣術のご指導をして頂けませんでしょうか。」


 Q 剣術を習う でした。

 まぁテンプレだよな。異世界貴族転生俺TUEEE系ライトノベル検定があれば十中八九でてくる。


 単純に痩せたいのと……あと、剣と魔術が主軸のこの世界なら、持っておいて損はない技能だ。


「そんなことか?よし。……だが、俺は剣を教えられない。ごめんな?……よし、カルロス。お前は剣ができたよな?バルドに剣を教えてやってくれ。」


 父は俺を迎えに来た執事さんを指さしそういう。


 ……この人、本当に剣できます?40代後半ぐらいに見えるよ?……いや、見た目で判断は良くないし……それに、枯れ木も山の賑わい。ないよか圧倒的にマシ。


 そう考え、俺は執事さん……改めカルロスさんのほうを向き、ニッコリスマイルで言う。

「カルロスさん。ご指導のほどよろしくお願いします。」

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