第9話

 私はサー・ガレン、エリンと共に最後の時を過ごし、静かに息を引き取った老騎士だ。

 ふうと最後の息を吐き出したその瞬間から、私の魂はエリンのそばで穏やかな光に包まれた。そして、私は最後に幸せな夢を見た。長い旅路の果てにたどり着いた、暖かく平和な夢だ。


 夢の中で、私は天高くへと登っていく。体を蝕んでいた肺の病も、咳の苦しみも、戦いで刻まれた傷の痛みも、もうそこにはない。私の体は軽やかで、まるで若かりし頃の力を取り戻したかのようだ。


 だが、それ以上に私の心を満たしているのは、エリンの暖かい光だ。

 彼女の優しい笑顔、彼女の手の温もりが、私を導いてくれる。

 その光に引かれ、私は天へと昇っていく。苦痛はなく、ただ穏やかで幸せな気持ちが満ち足りている。


 エリンの声が聞こえる。


「ガレン、こっちだよ」 


 その声に導かれ、私は光の中へと進む。そこには、彼女がかつて癒やしてくれた村の風景が広がっている。花咲く野原、風に揺れる木々、そして星々が輝く空。私たちが一緒に過ごした暖かい家の庭も見える。


 私は微笑みながら思う。長い旅路で彼女を探し続けた私の人生は、確かに報われた。そして今、この幸せな夢の中で、私は彼女と再び一つになれるのだ。

だが、私はここで立ち止まる。ここでエリンを待とうと決める。彼女はまだあの家で、花に水をやり、星を見上げ、私を想いながら生きている。


 彼女が死を迎える時、私は家族として彼女を迎えよう。あの小さな魔法使いが、私の魂を光の中へと送り届けてくれたように、私も彼女をこの穏やかな場所へと導くのだ。彼女が私の手を握り、笑いかけてくれたように、私も彼女の手を取り、共に天高くへと昇る。


 私の魂はエリンの光に包まれ、幸せに満ちている。長い旅路の疲れも、戦いの傷跡も、ここでは消え去り、ただ彼女との絆だけが残る。私は静かに目を閉じ、夢の中で呟く。「エリン、最愛の人よ。私はここで待つ。お前が来るその日まで」。そして、その時が来れば、私たちは再び一つになる。家族として、永遠に。


 ガレンの人生は終わりを迎えたが、私の魂は幸せな夢の中で生き続ける。エリンの暖かい光に導かれ、苦痛なく、穏やかで満ち足りた気持ちと共に。私はここで彼女を待つ。愛しいエリンと再会するその日まで。

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