どうせ主人公に倒される悪役なので、それまで完全解放した禁術で好き放題やるわ~えっ、根がいい奴だからってヒロインだけじゃなく主人公の好感度も最初からMAXだと!? いや絶対気のせいだ。騙されないぞ~
かずなし のなめ@「AI転生」2巻発売中
1章
第1話 転生、そして悟った
「……ああ、そうか。全て分かった。俺の運命も」
前世の記憶が戻ってから、その結論に至るまで僅か1秒ですべて悟った。
この世界がゲームに準拠した世界である事も。
そして俺モナド・ライプ=ニッツは記憶通りなら1年後に死ぬ運命も。
「どうしたモナドよ。そのような呆けた顔をして」
「あ、いえ」
酒臭い父グレゴに指摘されて、俺はようやく現実に帰る。
「まったく。そんな体たらくではニッツの家紋を背負うことは出来んぞ。大体――」
なんか小言が始まったけど、俺は知っているのですよ父上。このニッツ家が【
この世界はWeb小説を原作にしたマルチエンディングRPG『チートクロニクル』そっくりだ。
ざっくりストーリーを話すとチート能力に目覚めた主人公が、妹を殺されたことにより復讐の旅に出るお話だ。
これだけだとダークなイメージではあるものの、中身はダウンロードコンテンツ含め無数のヒロインがいて、無数のルートが存在するハーレム系RPG。
ご多分に漏れず、主人公スピノによる超絶ご都合主義&超絶チート能力による爽快な展開が待ち受けている。
さて、親父の小言が終わったので頭冷やしてきますと洗面台に向かう。
割れたまま放置された鏡に映るは、15歳のモナドの姿。
「あー、……よりにもよってモナドですか。そうですか」
溜息の一つは許してほしい。何せこのモナドはどのルートでも中盤から終盤で死亡する悪役なのだから。
勿論正当性は主人公サイドにある。モナドは禁術指定されている【
検知不可の暗黒物質を巻き散らかし、あらゆる対象に影響を及ぼす。例えば無機物相手に物質精製能力を発動したり、人間相手を消し炭にすることもできるし、物理法則に作用して重力を滅茶苦茶にしてしまう。
ルートによってはヒロインを何人か殺した。なのでプレイヤー側からのヘイトも相当買ってた記憶がある。
まあ現時点では
じゃあ今から努力すれば破滅の未来を回避できる――なんて楽観的な思考は俺には出来ない。
「ああ、終わった……」
持論だが、死の運命ってのは変えられないと思っている。裏付けの一例として、前世では神社のおみくじで大凶を引いた一時間後にトラックに轢かれてここに転生した事実がある。
『チートクロニクル』と同じ世界なら俺は間違いなく一年後、主人公に殺されている。実はモナドが積極的に悪役していないルートもあった。それでもなんやかんやで倒されてた。
勘違いで殺された酷いストーリーもある程に、何が何でも主人公に倒される運命をモナドは背負っているのだ。
「やっぱ終わった……」
じゃあ
どんなに力を極めたとて、あのチート能力の前では無意味だ。絶対勝てっこないよ。
うん。詰んだ。終わった。
「まあ、一度は死んだ命だしな。アディショナルタイムみたいなもんだ」
どうせまた死んだら転生するだろ。しないまでも、一切の無になって苦しいとか辛いとかも無くなるだろう。
誰かが言っていたけど「命は一回限りだから頑張れる」ってのは本当らしい。実際二回目の人生に突入した結果、俺は少々投げやりになったようだ。
と開き直ってたら、いい事思いついた。
「逆にだよ? それなら好き放題やって構わないってことだよな?
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