第7話 行状
猫の施設を出た一行は再び国道を南に向かう。
「少し早いが昼にするか」
「そうね。お昼時になると混みそうだし。瑞穂と北斗は?」
「あたしは良いわよ」
「僕はそんなにお腹、空いてないけど…食べるなら構わないよ」
そして伊豆高原の駅近くのファミレスの駐車場に4台の車は入り、店内に入ると受付をする。
「何名様ですか?」
「え~と…小学生入れて13人です」
「13名ですか…お席がバラバラになりますが…」
「あ、それは構いません」
「では暫くお待ち下さい」
そして暫く待つと、空いた席に順に案内される。最初に晃一さんと咲良さん、疾風叔父さんと夏海叔母さんと青葉ちゃんが座り次にお父さんとお母さん、一さんと秋絵さんがテーブルに着いて僕と晃太、姉さんと一絵は他の人とは少し離れた席に案内された。僕たちは直ぐに卓上のメニューを見ながら注文するものを考え、決まると各々が注文用タブレットに入力していく。すると僕以外の3人は同じメニューを注文したけど、僕だけ別…だいたい、こういうファミレスだと家族で来ても僕は軽いものしか食べないんだけど、ドリンクバーから飲み物を持って来ると4人で話しをしながら注文した食事を待つ。
「はぁ~、もう今日は午前中から酷い目に遭ったよ」
「あたしもよ、ホントに…」
「でも北斗、よくスマホとICカードを持っていたわね?」
「だってICカードは定期と一緒に胸ポケットに入れるのが習慣だし、スマホはセカンドバックに入れてたからね。かえって一絵がスマホは兎も角、カードを持っていた方が驚くよ」
「だってほら、このポシェットに色々と入れてたからさ。カードが入っていたのは偶々だけど…」
「それにしても北斗、伊東線に乗れて良かったんじゃない?僕も未だ乗っていないし」
「いや、宇佐美で降りたから1区間残っているし、先の私鉄は僕も全然だから何れは乗りに来ないとだもの」
「でも北斗、一絵ちゃんと一緒で楽しかったんじゃないの?」
「姉さん、何言ってんの!?」
「あら北斗君、やっぱりあたしでは不満だったかしら?」
「違います!一絵、僕が居なかったら根府川駅で茫然としただろ?」
「そうだけど…」
「だから楽しいとか不満とかじゃなくて、二人で来る以外は無かったの!」
「まぁ、北斗が言う通りだね。僕だったとしても同じだろうしね」
そんな事を話していると、ネコ型運搬ロボットで注文したものが来た。3人はハンバーグとライス、サラダにスープってセットを注文したのだけど僕は…ピザ1枚だけだ。
「北斗はそれだけ?」
「うん」
「北斗は家でも食べる量って少ないわよね」
「まぁ…どうもたくさんは食べられなくて」
「そう言えば幼稚園の時に光先生が言っていたけど、北斗君より瑞穂ちゃんの方がよく食べるって」
「一絵ちゃんだってあたしと同じくらいは食べるでしょ?」
「うん」
「その割には一絵も瑞穂も育たないな。特に─痛ってぇ」
「あら晃太君、足がぶつかったかしら?」
「一絵…いきなり蹴るなよ…」
「晃太、それは禁句だぞ。二人の眼が怖すぎるよ」
「あ…ごめんなさい」
「ったく。あたしたちのお母さんだって高校生の頃は小さかったけど、結婚して妊娠したらサイズアップしたって言ってたからあたしたちだってねぇ。瑞穂ちゃん、そうでしょ?」
「そうよ、晃太君!今に『ボンッキュッボンッ』ってスタイルになるんだから!」
「姉さんが!?あはは、絶対にむ─痛ぁぁっ!」
「あら北斗、足がどうかした?」
「姉さん…姉さんも蹴らないでよ」
「北斗…それも禁句だと思うよ?」
「あ…はい、ごめん」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お昼を済ませた一行は再び車に乗り、少し戻る様に海沿いの方へ走って城ヶ崎公園の駐車場に着き、此処から灯台を目指して歩くという。各々の車から皆んなが降りると、真っ先に遊歩道目指して走って行くのは青葉ちゃんだ。
「青葉、独りで行っちゃダメよ!」
夏海叔母さんがそう声を掛けるも青葉ちゃんの脚は止まらず、それを見た一絵が青葉ちゃんを追うと直ぐに捕まえた…さすがは一絵、脚は速いからな。
「ほら青葉ちゃん!皆んな一緒に行こうね?」
「なら一絵お姉ちゃん、一緒に行こう!お姉ちゃんが一緒なら独りじゃないよ!」
そう言って青葉ちゃんは一絵と手を繋いでドンドン歩いて行く。それを見た一さんと秋絵さんは染々としながら…
「あいつら、まるで姉妹だな」
「ホントにねぇ。一絵も小さい時はあんな感じだったわねぇ」
「お姉、お姉も小さい時は青葉や一絵と変わらなかったってお母さんが言っていたわよ?」
「あ、あら…そうだったかしら?」
「「はぁ…」」
「一さん、疾風叔父さん…お疲れ様です!」
「そこへ行くと、翼兄さんの所や晃一さんの所は手が掛からなくて良かったですね」
「疾風、手が掛からない代わりにお金が掛かるのよ、この子たち」
「え?何か習い事とかしていたっけ?」
「ううん。二人とも乗り鉄に行くのにお小遣いだけじゃ足りなくて年中、お父さんにたかるの。お父さんも二人に甘いから直ぐに出しちゃうし」
「あ~あ、瑞穂も北斗も小遣いの範囲内でやらないとダメだぞ?」
「「…はぁい」」
「ウチもそうなんですよ。晃太がNゲージのプラキットを買うのにお小遣いが足りないと旦那が出しちゃうんですよ」
「晃一もか…」
「う、うん…」
とまぁ、思わぬ所で僕たちの行状がバレてしまい、僕と姉さん、晃太はこの後しばらくお小遣いの遣り繰りに苦労したのだった…はぁ。
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