三成君と安全なお寿司

退院の決まった母さんがお寿司を食べたい、と言う。僕が考える理由なんてそれだけでよかった。

「俺の事は気にせず瑞葉と三成と母さんで寿司屋行って来てくれていいぞ」

「長樂兄さん抜きだと退院祝いにならなくない?」

「俺不在でも継雄が戻って来れば十分お祝いだろ、一応俺の方で連絡入れといた」

母さんの退院当日にちゃんと帰ってくるのか継雄兄さんが帰ってくるのかは不明瞭だ。

まああれでいて律儀なとこがあるので戻ってきてはくれると思うけど。

「そこは継雄兄さん次第かな。あ、エルシアさんにも話しとかなきゃ」

「だなあ」

そんな話をしつつ車でうちへと帰ったあと、エルシアさんにも一応話をした。

魚も食べられないエルシアさんがいるので僕らが寿司を食べに行ってる間は長樂兄さんと一緒にご飯を食べて貰えばいい気もする。

(でもあの2人って料理出来るのかな……)

お粥程度であれば問題なく作れる長樂兄さんはともかく、エルシアさんがちゃんとこの世界の家電を使えるのかと言う疑問がある。

僕のいないお昼は作り置きで済ませてるという2人の様子を見てると結局僕がみんなのお寿司を作ったほうがいいのでは?という不安がある。でも作り分けが面倒だしなあ。

エルシアさんはテレビを熱心に見つめており、画面にはヴィーガン用のお刺身が紹介されている。

「……これだ!」


****


土曜日の朝、母さんを迎えに行く前に下準備開始だ。

タケノコの水煮から節を取ってスライスし、だし汁に砂糖・塩・醤油・酒で煮込んでおく。

薄切りにしたレンコンと人参は少し塩気の利かせた出汁醤油で煮込んでおこう。

二色のパプリカは焼いて皮を剥き、マリネ液に漬け込む。

戻したしいたけは醤油・砂糖・みりんで含め煮に。

きゅうりとキャベツは薄切りにして塩昆布と混ぜて浅漬けに。

「……これで良し」

「三成君朝から精が出るわねえ、手伝いましょうか?」

「あ、義姉さん。もう終わってるんで大丈夫です」

義姉さんは味付けが壊滅的に下手なので台所に立たせないという方針があるので、やんわり回避だ。

食材たちは冷蔵庫に入れて休ませておき、炊飯器に無洗米をセット。

「じゃ、迎えに行こうか」

そんな訳で母さんを迎えに隣町の病院へ。

家に帰った頃にはちょうど良くご飯も炊きあがっている。

寿司桶に出した炊き立てご飯に米酢・砂糖・塩を混ぜ合わせたものを回しかけ、手持ち扇風機で冷やしながらひたすらご飯とお酢を混ぜ合わせる。

いい具合に混ざったら、事前準備した具材とお魚の出番だ。

彩り鮮やかに野菜を寿司桶に散らし、初春らしい華やかな雰囲気が出来上がる。

「さ、最後はこれの出番だ」

ネットで購入したヴィーガンマグロとヴィーガンサーモンの表面の水分をふき取っておく。

一応味見してみるがこんにゃく感はなく、かなりマグロっぽい味だ。

これをお刺身のように切って寿司桶に盛れば寿司桶は完全にお祭り騒ぎの華やかさだ。


「できたよ!」


せっかく作ったこの一品が、みんなに喜びをもたらしますように。

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