エルフさんと日用品
「石鹸を変えてからどうも手がヒリヒリするんだ」
ミツナリに両の手を見せると「先生に見てもらったほうがいいですかね」とつぶやく。
「センセイというのは?」
「エルシアさんがうちの前で倒れた時に見てもらったお医者さんです。そういえばあの時は注射打った後に帰って行ったからエルシアさんは覚えてないのか……」
「そういうことか。センセイに見て貰えば分かるかもな」
****
佐野家の住まいから歩いて10分ほどのところに3階建ての深みのある黄色の建物が立っている。
大きく透明なガラス戸を開けると「小山先生、先ほどお電話した佐野ですがー」と声をかけてきた。
おもむろに奥から出てきたのは純白の衣に身を包んだ白髪の壮年男性だ。
「三成くんか、2人とも入っておいで」
誘われるがままに入ってみるとそこは清潔に保たれた空間であり、医療神の加護の気配もある。
空間に加護があるということは腕の良い医者がいるのだろうと察せられた。
私を対面に座らせると
「初めまして、医者の小山光俊です」
「ミツナリたちの世話になってるエルシア、見ての通りエルフだ」
「エルフ!子供の頃読んだ小説に出てきたなぁ……っと、今回は湿疹だっけ」
「石鹸を新しいものに取り替えたらこうなったんだ」
手の湿疹を見せた後、医者は「ちょっと心当たりがあるんだけど、新しい石鹸の箱ってあるかな」と聞いてくる。
「私は持ってきてないが、ミツナリは?」
「僕も持ってきてはないですけど新しく出したのはたぶん牛乳石鹸だと思います、ちょうど頂き物があったので買い置きのコーナーに入れておいたから」
一緒に暮らすにあたりなくなったら買い置きコーナーから新しいものを出すようにと教わってるので、買い置きコーナーにあるのなら間違いなくそれを出したはずだ。
「あともう一つ。エルシアさんは牛乳飲める?」
「エルフは動物性のものを摂取すると呼吸困難に陥って死んでしまう呪いがかかってる」
「じゃあそれかもしれないね、石鹸に含まれる微量の乳成分に反応して湿疹が出たのかも。あとでアレルギー検査もしてみようか」
その後、石鹸を植物性のものだけで出来たものに切り替えたところ湿疹は起こらずに済んだ。
「まさか石鹸の中に動物性のものが含まれてたとはな」
「すいません、僕も気づかなくて」
「石鹸はここにきてから問題なく使えていたから確認を怠った私が悪い」
そうして佐野家では私が触れるもの全てから動物性素材を省くことになり、またそれはそれで面倒なことになったのは別の話である。
ちなみに。
後日アレルギー検査をしたところ、動物性食品は全てアウトという結果が出たためエルフの呪いがこの世界ではアレルギーと呼ばれる病であることを知るのはまた別の話である。
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