春の裾
宇地流ゆう
プロローグ
⚠︎R15
⚠︎軽度のSM表現あり
————「つまり、『背徳』とは、一種の知的好奇心だよ、姉さん」
優雅に語る悪魔。優しい指先は、私を試すかのようにゆっくりと肌をなぞっていく。
「や、やめっ……」
身を捩って抵抗しようとしても、手首はきつく縛られていて、逃げることも敵わない。
どうしてこんな罠にかかってしまったの、と自問しても、一体どこからが彼の策略だったのかもわからない。
彼の瞳は、獲物を捕らえた蛇のように妖しく輝き、その奥には私だけを見つめる静かな炎が燃えている。
「もう遅いよ、姉さん」
耳元で囁かれた意地悪な低い声が、ゾクゾクと身体の奥に響く。
彼の熱い唇が首筋に触れる。ビクリと反応する私を、まるで面白がるかのように落とされる口づけ。
ダメなのに、と思えば思うほど抗えなくなっていく熱が、じわじわと全身を犯していく。
私がこの邸に嫁いでこなければ、彼に出会わなければ、彼の本性を知らずにいれば————私はこの信じがたい感覚に陥ることもなかったのだろうか?
恐ろしさに震える身体が、単なる恐ろしさに震えているだけではないということ。
そして、一瞬でも、こう思ってしまったこと。
この先を、私は知ってみたいのかもしれない。この優雅な悪魔と堕ちていく先を……
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18世紀、啓蒙革命間近のイギリス。
欺瞞と皮肉に溢れた英国社交界で、なんとか生き抜くと決めたジゼルの前に、義理の弟、ユアン・トレバートが長旅から帰還する。
観察力に長けたジゼルでさえ、本性の見抜けない詐欺師のような男ユアン。
困惑しながらも、いつしか彼の持つ妖しい魅力と優雅な手管に絡め取られていく。
ドロドロ貴族社会×禁断の関係×耽美なラブゲーム
はじまりはじまり…
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