第6話 親愛


俺は弓親とお付き合いする事になった。

というのも弓親の想いを放置しておくのも如何なものかと思ったから。

だから俺は弓親のその真摯な思いに応える事にした。

それから俺達は付き合ってから翌日を迎える。

俺は用事があると先に行った弓親からのメッセージを見つつ玄関から出る。


それから俺は鍵をかけて歩き出す。

そして顔を上げて目の前を見て俺は「!」となる。

それは。


「...何をしているんだお前は」


そこに八乙女が居た。

俺を見ながら「...おはよう」と言ってくる。

盛大に溜息を吐いた。

それから顔を上げてから威嚇する。


「おはようっていうか。...この場所に来るなって言ったろお前」

「...そうだね」

「そうだね、じゃない。...お前は元カノだ。お前は浮気したからな。俺とは何ら関係が無いという事だ」

「...竜輝。私、考えたんだけどさ。...私は浮気したのは悪かったって思う。...だけど私、貴方も愛したい」

「...あ?」

「私、貴方が好きなの。...あの人の事もそうだけど貴方もきちんと愛したい」

「馬鹿かお前は?何を言ってんだ。無理に決まっているだろ」

「無理じゃない」


そして八乙女は俺を見る。

俺は「お前は頭がいかれている。...そんな事できる訳が無い」と言いながら俺は八乙女を見る。

八乙女は「...貴方が良ければ私はいつでも」と笑みを浮かべる。

コイツは...マジにアホか。


「私ね。本気でまだ貴方が好き」

「...」

「...だから、ね?」

「...すまないが俺はもうお前とは付き合えない」


俺は全てを話した。

弓親を彼女にした事とかを、だ。

すると八乙女は「...」となってから無言で俺を見据えた。

コイツ...何を考えている?


「お前とは付き合えない。...あくまでお前のあくどい考え方には付いて行けない。...だから俺は弓親と付き合う事にしたんだ」

「...そうなんだ」

「お前の負けだ。...八乙女」

「竜輝。それでも私は負けたって思わないから」

「アホなのかお前は?もう諦めろ」

「...」


八乙女は踵を返す。

それから「私は貴方の事を諦めない」と言ってから去って行った。

俺はその事に「...」となってから八乙女を見送る。

そして俺は盛大に溜息を吐いてから頭を掻いてから歩く。


「...クソッタレ忌々しい」


そんな事を呟きながら俺は商店街を抜け。

町中を抜けて高校にやって来る。

すると目の前を先生が掃除していた。

その先生は担任だった。


「おや。矢本じゃないか」

「ああ。伊藤先生」


伊藤一葉(いとうかずは)先生。

中年ぐらいの男の先生だ。

白衣を着ている感じの。

髭の剃った跡が少し特徴的な先生は「仙波が頑張って掃除してくれてな。少しだけ楽なんだ」と箒と塵取りを片付ける。

俺は「そうなんすね」と返事をしながら伊藤先生を見る。


「彼女は良い子だな」

「そうですね。...彼女は自慢の後輩ですから」

「お前も掃除に参加したらどうだ?気持ち良いぞ。朝からの掃除は」

「...考えておきます。...ちょっと今は感情がぐちゃぐちゃで」

「...そうか。思春期は悩む事ばかりだからな」

「そうっすね」


それから俺は伊藤先生に頭を下げてからそのまま校舎に入る。

すると「おっは」と声がした。

背後を見ると秋季が居た。

秋季は「...どうしたの?顔...結構青白いけど」と心配してくる。


「...ああ。まあ朝っぱらから不愉快なものを見たからな」

「...それ...もしかして八乙女?」

「そうだな。...しつこいな奴は」

「何の為に接触して来ているんだろう?」

「奴は俺を吸収しようとしている」

「...ゲスだね」

「そうだな。外道と言えるかもな」


そして俺は額に手を添える。

それから俺は秋季と一緒に昇降口に上がる。

靴を取り出して履いた。

俺は「なあ。秋季」と聞いてみる。


「うん。何?竜輝」

「奴はどう振り払ったら良いかな」

「ガツンとぶつかる、かな。...しつこいなら殴るだけだね」

「...確かにな」

「警察とかに訴えるとか?」

「無理だろ」


それから俺は下駄箱に靴を入れてから教室に向かう。

そして教室のドアを開けて入る。

俺は荷物を置いてから...窓から外を見る。

しかし、殴る、ね。

女だからってもう容赦は必要ないかもな。



「先輩」

「...弓親」


教室のドアが開いてから弓親が何かを持って来る。

それはお弁当の様だった。

俺は目をパチクリする。

そして弓親を見る。


「弓親?これは...」

「はい。作りました」

「ああ。そうなんだな」

「はい。...それで...その。一緒に食べませんか。恋人として」


その、恋人、という言葉に教室がぎょっとした。

それから俺達を見てくる。

秋季が「え?付き合い始めたの?」と驚きの眼差しを向けてくる。

俺は「ああ。そうなんだ。実は彼女になった」と笑みを浮かべてから弓親を見てから周りを見渡す。


「マジかよ」

「おめぇ」

「おめでとうじゃん」


それから周りは顔を見合わせてからそう手を叩いて祝福する。

俺はその姿達に見渡してから最後に秋季を見る。

秋季は泣いていた。


「...良かったよ。そんな感じになって」


そう呟きながら。

何だか恥ずかしい気分だったが。

正直みんなの様子に、付き合って良かったかな、と思い始めた。

それから柔和な感情になる。


「それにしても秋田から聞いたけど」

「そうだな。...浮気したってな?お前の元カノは」

「そうそう」


それから話しながら怒るクラスメイト。

俺はその言葉に「お前らが怒るのは有難いけどそんなに切れる必要は」と言うが。

「いやいや。切れるだろ」とクラスメイトは各々話す。


「...大切なクラスメイトを裏切ったんだからな」

「どういう屑っぷりだよ全く」

「そうだな...」


そして顔を見合わせて眉を顰めて考える。

何だか...気持ちが暖かいな。

こうして怒ってくれるのが...最高だった。

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