第一章 平凡5

とある酒場で山口 隼斗は一人酒を飲んでいた。

彼としては日本酒を行きたいのだが、現在は諸事情もあり上品なワインを飲んでいた。

絵面的にはとても絵になるような構図なのだが…。


(たく、上品なものはあんまり合わないな…つーか、飲むなら宅飲み一択だな、上品な飲み方だと味が感じねぇよ)


とか考えていた。

見た目はいいだけに時折入ってくるおばさま方に見られてるのだが、基本的にカウンター席はマスターの雰囲気から座り辛く山口一人しかいなかった。


「隣を失礼するぜい。っと、マスター度数低めの頼む。アルコール弱いんだわ」


金髪にグラサンを掛けたチャラい男がヘラヘラと山口の隣に座る。そこそこ常連なのかマスターは迷いなく通常よりアルコール度数を低くさせたカシスオレンジを出す。


「また、そんなものを飲んでるのか?」

「はは、こちとらアルコールがちょっと高いだけで倒れちまうからジュース感覚で飲めるようなもんがいいんだよ」


山口の皮肉に金髪の男が笑いながら応える。どうやら、アルコールに弱いのは本当みたいで既に顔が赤くなっていた。


「んで、今日はあんま来たくない酒場まで呼び出して何の用だい?」


金髪の男は顔を赤くしながらも真面目な顔を作って山口と対面する。山口もまたため息を吐き、篠崎から貰ったレポートを取り出す。


「ほう、確かに最近やけに疲れると思ったら…なるほど、呪いか」

「お前ならどうにか出来ないか?」


僅かな期待に縋るように山口は金髪の男に頼むが金髪の男は首を振る。


「悪いが、相性がちと悪すぎる。こちとら呪いとかそう言った類に弱いのなんの」

「それでも、お前の実力なら…」

「まぁ、ワンチいけるかも…とまで行くだろうけどねぇ〜」


金髪の男は酒を口に含みながら話す。どこか悔しさ匂わせながら。


「まぁ、ぶっちゃけ俺が万全なら楽勝っしょ。でも、無いもの強請りしても仕方ない…言っちゃえば未だ無駄死にしたくない訳よ」

「う…それだけ厳しい案件なのか」


実際、金髪の男は山口の持っていない情報を既に入手している。そこから推察していくと金髪の男にとってリスクでしかないのだ。


「まぁ、俺以外のアテがない訳でもないのだけどね〜」

「本当か!」


金髪の男の一言に山口は詰め寄る。今回の件は本当に危険であり、対処できる人材がいるのなら藁にだって縋りたいくらいだったりする。

しかし、金髪の男が言ったことは山口にとって厳しい事だった。


「正直、この報告書に書かれてる人材しかいないっしょ」

「いや、でもこいつは…」

「まぁ、圧力があって早々に使える手段ではないけど…本人意思なら話は別だしこれから先に賭けるしかないんだけどね〜」


無責任にしか思えないような一言が山口にのしかかる。自分達が介入しない苦しみに耐え、時の運に任せるしかないこの不安が拭えないのだった。

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