第一章 平凡3
日も暮れる頃、放課後となり部活で残っていた生徒も既に下校し始めている時刻である。
理科室準備室という名の研究所である一人の女性がある実験を行なっていた。彼女の名は篠崎 冴(しのざき さえ)。ある種有名な研究者であり、教師でありながら様々な分野において一目置かれている。ゆとり世代から離れた時期とは言え日本の教育が衰退していく中で生まれた『原石』と研究者達から呼ばれていた。どうして、そんな彼女が都立高校の先生をやっているかは学校の七不思議とされていたりもする。
「篠崎、検査の結果はどうだ?」
篠崎一人だった筈の研究室から声が聞こえる。これは男のものであり、研究に没頭していた篠崎は隠し持っていたナイフを持って振り向く。
「あら、山口さんでしたか。失礼しました。ノックも無しに話しかけてきたので不審者…または私の研究の邪魔をする愚か者かと思いましたわ」
「だからと言ってナイフを持つな…というか、ノックしても反応が無かったから入ってきたんだろ?」
山口の反論に篠崎は「あら?そうでしたのね」と言ってナイフを置く。そして、改めて山口の方を向いて「何のようでして?」と話を聞く姿勢となる。
「さっきも言っただろ?今日渡した資料の結果はどうだったんだ?」
「資料?あぁ、生徒持って来させたアレですか」
篠崎は思い至ったようでプリントを手に取ってその時に一緒に書いたレポートも取り出した。
「これまた面倒な結果になってましたわ。まぁ、レポートを見ていただければわかると思いますけど」
山口が黙って資料を見てる間にその結果を篠崎が話していく。
「なるほど、要するにこの町全体…いや、この町にいる人間全員に『悪魔の呪い』はかかっている訳だな?」
「えぇ、でも二人ほど例外はいるわ」
「例外だと?」
「一人はおそらくこの呪いを発動させた本人…もう一人は私達が手を出すに出せない…」
その言葉が言い切ると山口は頭を抱えるのだった。状況が状況故にとても不服そうな顔をしていた。
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