第28話  人生脚本〜大きな愛でもてなして


「兄様にめぐり姉様、人生脚本って知ってますか?」


 鈴奈がいきなり変わった話題を振ってきた。


「知らんなぁ」


「知らないよ、私の知らないことをたくさん知ってるね、鈴奈ちゃん。何でも知ってるね」


 そう言って、めぐりがほんわかとした笑顔を浮かべて、鈴奈を撫で始めた。

 鈴奈は目を細めて気持ちよさそうにする。

 最近、お馴染みな光景だ。

 鈴奈が満足した頃にドヤ顔を見せる。


「何でもは知らないですよ、知ってることだけ」 


 鈴奈がウィンクをしていた。

 どうやらふざけたようだが、何か元ネタがあるのか。

 めぐりの目を見ると点になっていた。

 そうと言いようがないぐらい驚いていた。


「私の人生で1番言いたいセリフなんです、これは化物語の羽川翼さんがいうセリフですよ」


 鈴奈は俺たちが分かってないということを察したのかセルフ解説をしてくれた。

 さすが鈴奈である。


「さて、話を戻します。人生脚本の定義を言いますね、小さい頃に親から受け取った否定的なメッセージを繰り返し浴びて、無意識のうちに繰り返している思考・行動のパターンのことです」 


「つまり、子供の頃に勝手にできた自分でも気づけない思い込みってこと?」


 めぐりは首をかしげている。 


「そうです、子供の頃からずっと歪な思考回路を続いてるってことです」


 鈴奈が嬉しそうに頷いた。


「自分の思考が始まるスタートポイントが変になっちゃってるってことかな?」 


 めぐりはすぐに返答した。

 それに対して、鈴奈はにこやかに頷く。


「その通りです、めぐり姉様。さて、そのスタートポイントというのが5種類あります。頑張れ、完璧であれ、役に立て、急げ、強くあれの5つです」 


「明らかに歩夢くんっぽいのが一個あったね」  


 めぐりはくすくす笑っていた。

 鈴奈もニヤニヤしていた。

 なんだか、嫌だなぁ。


「そうです、ご察しの通り、兄様は頑張れ、というドライバーがずっと働いてる状態なんですよ」 


「頑張らなきゃダメだって自分にずっと命令し続けてるんだね、大変そう」


 めぐりは口を手を当てて、目をうるうるとさせている。

 なんかそこまで心配されちゃうと申し訳なく思う。


「そうして、努力マンの出来上がりです」


 鈴奈が胸を張っていた。

 しかもドヤ顔。

 ちなみに努力マンというあだ名を提案したのは鈴奈だ。その後、友人間で広まった。

 兄様は鈴奈がいて、とってもラッキーマンですねと笑顔で言われていた。

 これも元ネタがあるのだろうか。

 どうだ私のあだ名はぴったりだろうとたびたび自慢げに言われる。


「どうすれば歩夢君はドライバーから解放されるの?」


 めぐりは不安げな様子で鈴奈に尋ねる。


「簡単ですよ、頑張らなくてもいいってことを本能レベルで理解して貰えばいいんです」


「鈴奈ちゃんのバブみでもダメだったよ?」


 そんなめぐりに対して、鈴奈はチッチッチだと指を振る。


「兄様はもう最強のものを手に入れていますよ、姉様」 


「なーに?」


 めぐりはフクロウみたいに首を90度傾げる。


「愛です」


『愛っ!』


 俺とめぐりの声がハモった。


「というわけで、めぐり姉様は兄様を大きな愛でもてなしてください」


「鈴奈」 


 俺はお願いがあり、鈴奈を呼んだ。


「はいっ! どうされました、兄様」


「俺もやる」


「兄様がめぐり姉様を大きな愛でもてなすんですか?」


「彼氏だから」


 そう言った瞬間、鈴奈はニコッとした。 


「いい心がけですね、兄様」


 横を見ると、めぐりが「うぅー」と唸っていた。

 顔が真っ赤である。

 鈴奈が手をぱんと叩く。


「まずはハグです」


「歩夢君」 


 めぐりが両手を広げてきた。

 俺はそこに体を埋める。


「よーしよーし」


 俺は抱きしめられていた。


「姉様、姉様。鈴奈のこともハグしてください」


「はぐだよー、鈴奈ちゃん」


「ぎゅーっ」


 2人が抱きしめあっていた。


「兄様もぎゅっしてあげます」


 一応、鈴奈の元に向かう。


「ぎゅーっ」


 そう言って俺は抱きしめられた。

 すぐに離れるとニヤケ始めた。


 鈴奈が手をパーンパーンと叩き始める。

 何かリズムを刻んでいるようである。


「きーす、きーす」


 鈴奈が楽しそうに煽ってくる。

 めぐりが顔を赤くしている。

 俺は顔を近づける。


 ちゅっ。


 俺とめぐりはキスをした。


「私もしたいです!」  


 鈴奈がノリノリだった。

 ちゅっ。

 鈴奈に頬にキスをされた。


 最近も甘やかされる機会は増えたが、こんなに甘やかされたのは久しぶりだった。

 俺の心は驚くほど落ち着いた。

 何か戻れる場所があると元気になれるのかもしれない。

 努力も闇雲にやるのはなく、程よくやることを意識しようと思えるのであった。


◆◆◆あとがき、お礼、お願い◆◆◆


ここまでお読みいただきありがとうございます。


というわけで、お真面目&おふざけ回でした


人生脚本という概念は本当にあります。

是非ともお役に立ててくださいね。


ちなみに大きな愛でもてなしては°C-uteというアイドルの曲のタイトルまんまです。

もう解散してしまいましたが、聞いてみてくださいな。


もし、


めぐりちゃん、可愛い


鈴奈ちゃん、可愛い


歩夢くん、羨ましい


と思ってくださいましたら、


♡、☆☆☆とフォローを何卒お願いいたします。


レビューや応援コメントを書いてくださったらできるだけすぐ読みますし、返信も速やかに致します。


昨日、次回予告を間違えました、もう修正はしていますが最初読んだ方はすいません。

次回こそ、美咲ちゃんがお久しぶりに登場します。美咲ちゃんの性格もあってなかなか出せないんですよ、もし好きな方いたらごめんなさい。


公開日は5月26日6時頃です。


お楽しみに!

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