第壹章   シノケノちゃんねる配信  ※文中にイラストリンク有り

 荘輔は、【おかしら】と【先代おかしら】の要望を取り入れて動画を創り直し、今度は信乃しなの旦華野あさけのに着替えをさせてから再び動画のチェックを受けた。


 動画の編集やセリフは問題なしの合格をもらったが、信乃と旦華野のアイドル風衣装で遙となつめの意見が割れた。


 棗「おおー!私の見立てに狂いはなかった。そこらのアイドル風情なんてアイドル名乗れないカワイさじゃないか」


 なつめは褒めたが、不満な点もあった。


 棗「ケモ耳と尻尾がないぞ。あと………ヘソ出したほうが良くないか?」


【犬神族】はあまりケモ耳や尻尾を出してアピールする【種族】ではない。感情の大きな動きの不可抗力で隠しているケモ耳や尻尾が飛び出ることはあるが自らの意思では見せない主義である。


 遙「【犬神族】は、ケモ耳の大きさや尻尾の数で【妖力】の強さが判る【種族】ではない。そんなことして、何をアピールする気だ?あと………ヘソ出し『NG』ただでさえ肩とか太ももとか出しまくってるじゃないか。嫁入り前の娘なのに………」


 遙は【犬神族】のことを理解してくれている。その点は、荘輔、信乃、旦華野はありがたかったのだが、最後のひとことはちょっと年寄りっぽい。


 棗はりょうのようなモフモフに拘る嗜好の者もいて需要はあると主張する。見れば燎も賛同して、うんうんと肯定的に頷いている。


 遙「【鬼神族】が【ツノ】を折られたことを『恥』と感じて【一族】から姿を隠すのと同じで、【古族】には無闇矢鱈と見せないというこだわりがある。確かにケモ耳と尻尾は需要があるから、『造り物』を付けるという手もあるが、それは【犬神族】のプライドが許さないだろうな」


 遙は、妥協案の【コスプレアイテム】を出したが、立派なケモ耳と尻尾がある【犬神族】が『紛い物』を身につけることにプライドが傷つけられることを言った。


 荘輔、信乃、旦華野は、遙が【犬神族】の矜持に理解を示したことに感動していた。


 荘輔「【おかしら】………一生ついて行きます!」


 信乃「【おかしら】………荘輔を貸してあげるから、一晩中『熟女談義』してください!」


 実は遙と荘輔は、『熟女好き』という共通点があるので、けっこう気が合う。


 旦華野「その時は、【犬神族】の美人熟女を手配します!」


 旦華野の言葉に遙は、ちょっと想像して悪くないな、と思った。なぜか和服にエプロンドレスの【大正時代】の【カフェ女給風】な感じだったが。


 棗が遙に、お前ずいぶん古風な妄想するんだな、と思考を読んだかのような呆れた表情をしている。


 燎が、ケモ耳がいるなら自分も『熟女談義』に加わりたいと言っているので、ケモ耳があれば年齢は関係ないようだ。


 朔「お前ら………【八房やつふさ】にチクるぞ」


 はじめは、【八犬士】たちの【教官】の名前を口にした。


【山の民の王】の【転生戦士】の朔の前で【山の民】のネタは、全てバレバレだ。


 朔「とりあえず………こっちの出過ぎす、隠し過ぎずの衣装のほうが見てる側には好感が持てると思うぞ」


 朔は、あまり露出し過ぎると女性視聴者のヘイトを買うと言った。『シノケノちゃんねる』は、荘輔のヴィジュアルの効果で視聴者は女性比率が高い。肩出しは、いかがなものかと朔も思ったが、信乃と旦華野は【凹凸】の【凹】の部分はくびれているが、【凸】の部分がだいぶ寂しいのでイヤらしさがないので視聴者が激減することはないだろうと考えた。彼女たちに【凸】が寂しいとは決して言えないが。


 荘輔「実は………瑪瑙様からは、動画配信で【甲賀総帥】とコンタクトを取ろうとしているようなことを聞いています」


 リモート会話から見えている人たちは、全員【甲賀総帥】の血縁者なので、荘輔は【特別任務】の瑪瑙がチラッと話した目的を告げた。


 朔「みずのと祖父さまを釣ろうとしていたのか!どおりでゲロってたブツが違ったわけだ」


 朔が聞いていたのは【蟲】だったので、水色透明の【液】になっていたのはなぜか気になっていた。


 遙「ウマい具合に、吐瀉物を変更してくれていたから、これを配信した後で【瀬戸内水軍】内部で起きた【インスマウス症】の騒動を動画で配信するいい繋ぎになっている」


 遙の言葉に、一寸法師とウラシマの顔色が変わった。


 一寸法師「鶴は!鶴も【インスマウス症】に?」


 ウラシマ「姉上を助けに行かねえと!」


 2人とも、今にも飛び出して行きそうな雰囲気である。


 遙「瑪瑙からの報告では、鶴姫御前は罹っていない。そして、1人の重体患者を除いて全員快癒したそうだ。後は経過観察だが、元親もとちかが瑪瑙と刹那を相手に大立ち回りして、超元気になってたらしいから心配することはなさそうだ」


 瑪瑙から報告メールがあったので、遙はそれを伝えた。


 朔「お前………今の作戦、俺が主導で動いてることをわかってるのか?」


 朔は、すぐに報告しろよと言った。


 遙「言いそびれていた。だが、今報告しただろう」


 遙の判断では、既に済んだことだったので後回しになっていたのだ。


 棗「開き直るな!今回は、即報告することではなかっただけだろうが」


 棗は、遙の頭を軽く張り倒す。


 棗「だが、重体患者が現存しているなら………【ワクチン】開発ができる!」


 棗は義父上(癸)の元にいる【八犬士】に告げて、報告させろと荘輔に言った。


 棗「たしか、大角おおすみとかいう名の小僧が義父上の弟子だっただろう」


 燎「義父上(癸)には動画配信を見てくれと伝える」


 燎と棗は、【甲賀総帥】篁癸たかむらみずのとの息子と娘それぞれの配偶者────────────棗は既に離婚している────────────で、癸の姉のきのえの子なので癸の甥と姪である。


 こうして、当面の目的である【甲賀総帥】を釣るお膳立てがされて、『シノケノちゃんねる』は【生配信】の運びとなった。 




   ◆   ◆   ◆




 アイドルコスの信乃と旦華野の衣装の評価は、大好評だった。朔の言った通り、出し過ぎず隠し過ぎずの良い塩梅だったようだ。


 そして柳生藤子ふじこのスピーチの時のコメントが大殺到した。藤子と素子もとこは【女柳生姉妹】と呼ばれ、強くて美人で女性の憧れの的だった。


 思いの外、藤子の映像が印象付けられたので、遙はこれを狙っていたのだろうかと荘輔は考える。


 時々、コメントにリアクションを返して尺を稼ぎながら『シノケノちゃんねる生配信』は順調にリハーサル通りに進んだ。


 このままリハーサルの再現で終われそうと安心していた所へ、【毒物事件】の映像になった時に荘輔、信乃、旦華野が危うく放送事故を起こしそうになるコメントが着信した。


[倒れた方の中に【与党代議士】の龍造寺貴延氏がいましたね。彼が狙われたのですか?]


 このコメントに、視聴者たちが食いついた。


 荘輔、信乃、旦華野がコメントに驚いてリアクションできなくなっていたが視聴者の食いつきに助けられて、配信時間の30分が近づいていたので放送事故は免れそうだ。


 最後に、この【毒物】と関連がありそうな動画を次回配信すると予告して配信は終了した。


 旦華野「最後のコメント、びっくりしたー」


 信乃「報道で【政治家】が【被害者】の中にいたことは知られてるけど、誰かまでは知られてなかったよね!」


 信乃と旦華野は、黙り込んで今しがた生配信した動画を見返している荘輔を見る。荘輔は、最後のコメントの前の映像を見ているが、確かに顔は映っているが現在の解像度では、ハッキリした容貌はわからない。


 荘輔は、生配信中に驚かされたコメントの末尾を見て気づいた。


 荘輔「シノ、ケノ、釣れた!」


 信乃と旦華野は、何々と荘輔が示した箇所を見る。


 信乃「絵文字?」


 旦華野「お月様?」


 荘輔「満月は、【望月】って呼び方するだろ」


【望月】と聞いて、それが【甲賀望月家】のことだと解った。


 信乃「わかりにくいよ。【卍】にしてほしかった!」


 旦華野「わかったらダメだから、わかりにくくしたんでしょうが!」


 旦華野は【卍】の文字なんか使ったら、【甲賀忍】ですとアピってるようなものだと信乃の額にデコピンした。


 イタッと信乃は両手で額を押さえて上目遣いで旦華野を見る。同性の旦華野でも思わずカワイイと思ってしまう。


 信乃と旦華野がジャレ合っている間に、荘輔は【グループチャット】に瑪瑙から、よくやったの労いの言葉と次の配信で【瀬戸内水軍】の【インスマウス症】と【宴】の【毒物事件】を関連付ける虚構動画を要求した。


 続いて遙が【瀬戸内水軍】の【動画】を全て送るようにと瑪瑙に向けたメッセージが着信する。


 鶴姫の兄弟の一寸法師とウラシマに動画を見せて、現状を理解させないことには2人とも元凶の【みづち族】へ殴り込みしそうな勢いらしい。


 荘輔は、【みづち族】終わったなご愁傷さまと他人事だった。



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 時系列順では、この後は『真田篇』になります。




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