ヤクザキンタマ編

第14話 裏切り


『若きリーダー、仲間を救う!』

『窮地を救ったのは、『エロ社』社長!?』


食卓を囲む俺と家族。

テレビに映し出されるのは、インタビュワーに囲まれる俺の姿。

CMには、エロ社のAV広告が継ぎ間なく挿入される。


「琴ちゃん、すごいじゃない!」

「これまで貧乏だったが、育てた甲斐があったなあ!俺たち誇らしいぞ!」

「やめてよ父さん母さん、恥ずかしいよ……」


俺は目を伏せる。しかし、その内心は浮足立っていた。

一躍有名になった俺。メディアでは連日、エロ社と俺の報道で話は持ちきりだ。


メンバーの一部は金玉を失ったが、大半は無傷で帰還した。

その後、社長自ら開いた会見で補償が発表される。

『ンン~、今回、金玉を失った未来ある学生たちへの補償金は、弊社が全額負担いたします!』

かくして、俺の金玉は"オタクに潰された"ことになり、支払われた補償金は、貧乏な我が家の奨学金を完済するのに十分な額だった。


大学4年生、冬――――。

俺は、このまま卒業し、隠し事キンタマなくエロ社に入社。

そうして、順風満帆で明るい未来を拓いていくのだろう。




当時は、そう思っていた。



―――指定暴力団 『瀬黒州せくろす組』本部―――


『今回の騒動には、オタクを裏で牛耳っていた暴力団の関与があると見られ――――』

『社長は、オタクと暴力団追放への熱い姿勢を示した模様です。』


「佐藤……とんでもないことをしてもうたな……」


佐藤。『おちんボ』を誘拐した主犯。

黒いソファには強面の重役達が腰を掛け、彼の顔を凝視している。

部屋に充満する煙草の煙が、その重々しい会議室の空気をより一層淀ませている。


「もうエンコじゃ済まされへんぞぉ!!」

組長の荒々しい怒鳴り声が、その淀んだ空気を一気に引き裂く。


「オタク共に兵隊貸しといてこのザマかいな!上手くいく言うたのはお前やろ!!!」

「すんまへん。思いの外使えん連中でして。」


「まぁ兄貴。これも組の事を思っての事やろ。

大学生共がウチのシノギ奪っとったんやけぇ。」

組長の弟は、兄を諭すように呟く。


「……もうええ。佐藤。お前ここで死にや。」

「兄貴ィ、タマ取るんまでややり過ぎちゃうか?」

「最後の情や。死ねば組への籍は残したるさかい。最後まで筋通しや。」


佐藤は懐に右腕を差し込み、ゆっくりと拳銃を取り出す。

ヤクザ達は腕を組み、その様子を見つめる。


「……」


掲げられた拳銃。

しかしその銃口は、組長へと向けられていた。


「組長。『こういうこと』ですよ。」

佐藤の口元は、ニヤリと笑っていた。


「!!!!」ガタタッ

「何しとるんや貴様ァ!!!」「下ろさんかいゴラァ!!!!」


パァン!


乾いた一発の銃声が、会議室を切り裂く。

薬莢は地面を跳ね、金属音を響かせる。


「あ、兄貴ィイイイイイ!!!!!」

弟が、組長へと駆け寄る。


ガララッ


混乱する会議室の中、入口のドアが開く。

「ンン~、佐藤クン。ご苦労だったね。」

「ははっ、社長。」


「!!??」

「ど……どういうことや佐藤……!」


「今回の騒動のお陰で我々『エロ社』の株もうなぎのぼりだよ。」

「まさか貴様ら……最初からそのつもりで結託しとったんか……!!」


「私が求めるのはね……『GAFAエ』なんかじゃない。『エ』一強時代なんだよ。そのために君たちには『踏み台』になってもらったのサ。」

「佐藤ォ、貴様ァ!!!!!」


弟とその部下たちは、一斉に佐藤へと銃口を向ける。

しかし、その弟もまた、テーブルを挟んだ向かいのソファの人間に銃口を向けられていた。


「何やっとるんやお前らッ!!!」


部屋にいる人間は、テーブルを挟み、それぞれお互いに銃を向け合う。


「残念ながら、既に半分は『こっち側』ですよ。組長の強引なやり方じゃ、誰も付いてきませんわ。

だから俺は心に決めたんすわ。潰すしかないと。」


「ンン~、ここで撃ち合ってもいいんだけど。良くても全滅。お互いに得はないよねェ?」

「アンタは組長よりは賢いようだから。分かりますよね。」


「ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬうううう!!!」

弟は、震える手で拳銃を握り締める。


「世話になりました。」


弟は、会議室を後にする佐藤の背中を拳銃で追い続ける。

しかし結局、最後まで引き金を引くことはなかった。


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