授業中の通知が、恋の始まりだった。
輝人
第1話 授業中の通知
静まり返った教室。窓の外では冬の冷たい風が吹き抜け、遠くの木々を静かに揺らしていた。先生の単調な声が教室に響く中、俺はぼんやりとiPadの画面を眺めていた。
授業用の資料を開いているつもりだったけど、正直あまり頭には入ってこない。そんな時——ふいに、画面の右上に小さな通知が現れた。
「華乃」
その名前を見た瞬間、心臓が一瞬跳ねる。
指でそっと通知をスワイプして内容を確認しようとするが、教卓のほうから先生の視線を感じ、思わず指を止める。周りを見渡すと、誰も俺の様子なんて気にしていない。
再び画面に目を戻し、慎重に通知を開いた。
「ねえ、今なにしてる?」
……いや、授業中なのは知ってるだろ。思わず笑いそうになるのをこらえ、iPadを机の上に戻す。でも、気にならないはずがない。
何気ない一言なのに、俺の心はたったそれだけで軽くなる。
ペンを握り直して、先生の話に意識を戻そうとするが、視線は自然とiPadへと戻ってしまう。指先がうずく。……返したい。
俺は周囲を確認し、先生が黒板に向かった隙を見計らい、そっと短く返信を打った。
「授業中だけど、華乃からLINE来ると集中できない」
送信ボタンを押した瞬間、心の中で小さく笑う。すぐに既読がついた。
そして、またすぐに——
「ふふ、私も授業中だよ」
そのメッセージを見た瞬間、なんでもない授業時間が、少しだけ特別なものに思えた。
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