戦わなければ死
もこもこうた
第1話
:退屈な日々
私は時々、自分が世界を俯瞰している時がある。
それは、まるで映画のスクリーンを眺めるような感覚だ。
先生の声、黒板に書かれる数式、クラスメイトの笑い声——すべてが、どこか遠い。
私はただ、それをぼんやりと眺めている。
そんな風に感じることが増えたのは、いつからだっただろうか。
日常は、変わらない。何も起こらない。
朝が来て、学校へ行き、授業を受け、放課後になれば家に帰る。
時折、友人と話し、スマホをいじり、夜になれば眠る。
ただ、それだけ。
誰かが言った。
「平穏は幸せなことだ」
けれど、それは本当に幸せなのだろうか。
私は、どこかで変化を求めていた。
「天宮、授業中にボーっとしない!」
先生の声に、私はハッとして前を向いた。
黒板には、解きかけの数式。
ふと、隣の席の子と目が合う。くすっと笑われた。
私は何事もなかったように、ノートを開いた。
(何か刺激的なことが起こればいいのに)
そんなことを思ってしまう私は、どこかおかしいのかそれとも治らない厨二病なのか。
そんなことを考えながら、授業が終わる。何も変わらない、そんなありきたりな日常が今日もながれる。
本来ならば。
:奇妙な招待状
放課後。
教室を出て、夕焼けに染まる廊下を歩く。
窓から差し込む赤い光が、床に長い影を落としていた。
この時間帯の空気は、どこか寂しげで、どこか心地よい。
ポケットの中で、スマホが小さく震えた。
取り出して画面を見ると、見知らぬ差出人からのメールが届いていた。
『招待状:あなたには魔法の素質があります』
妙に整った文字。
普通なら、迷惑メールだと気にも留めずに消すところだ。
けれど、何かが引っかかった。
この文面に、妙な「違和感」がある。
単なるスパムにしては、あまりにもシンプルすぎる。
差出人の名前もない
けれど、不思議と、目が離せなかった。
——誘われている。
そんな気がした。
「……バカみたい」
小さく呟きながら、指を動かし、メールを閉じようとした。——その瞬間だった。
視界の端で、何かが揺らいだ気がした。
風が吹き抜けたわけでもないのに、空気が波打つように歪む。
足元の影が、不自然に長く伸びた。
ぞわり、と背筋を撫でるような感覚。
思わずスマホを握り直した。
——画面が暗転した。
「え?」
画面いっぱいに、奇妙な模様が広がる。
光がゆらめき、見たこともない文字が浮かんでは消え、まるで生きているように蠢いている。
それは言葉のようで言葉ではなく、呪文のようで呪文ではない。
何かを意味しているのに、それが何なのか理解できない。
それは、まるで「現実」と「非現実」の狭間を漂う、異質な存在のようだった。
——扉が開きます。
冷たい音声が、耳の奥に直接響く。
スマホのスピーカーからではない。
まるで、自分の頭の中に誰かが囁いたような感覚。
「なに……これ……?」
指を離そうとする。
だが、手が動かない。
胸がざわつく。
何かが……おかしい。
画面の光が強くなり、眩しさに思わず目を細めた瞬間——
——世界が、反転した。
耳鳴りがした。
視界が崩れ落ちていく。
身体半分に分かれて、離れていくような感覚になる。
まるで重力がなくなったかのように、身体がふわりと宙に浮く。
目の前の光景が、ゆっくりと溶けていく。
学校の廊下も、空も、すべてが歪んで、混ざり合い、色のない世界へと変わっていく。
(……落ちてる?)
落ちているのか、浮かんでいるのか。
それすらも分からない感覚。
頭の中に、知らない誰かの声が響いた。
——おきろ、起きろ。
その言葉とともに、意識が闇へと沈んだ。
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