夜にだけ開くカフェ『ノクターン』と吸血鬼探偵の謎
水月 りか
第一章
第1話 注文票の謎(前編)
そのカフェは、夜にだけ扉を開く。
訪れるのは、普通の客とは限らない——。
カフェ『ノクターン』の奥には、吸血鬼の探偵が営む探偵事務所があった。
人々はこっそりと、奇妙な依頼を持ち込む。
そして今夜も、不思議な謎が舞い込んできた。
「最近、注文票が……勝手に消えてるんだよ。」
店主は、低くため息をつきながら続ける。
「誰も取ったはずがないのに、気づくと無くなってる。まるで……消えたみたいに。」
「売上は合ってるのに、伝票が消える? にゃっ!? それって大事件にゃ!」
ラムは耳をピンと立て、パッとノアの隣に飛び乗る。
しっぽを揺らしながら、「これはもう、ボクの名推理の出番にゃ!」と胸を張った。
彼女は黒豹獣人の少女。とんでもない運動神経を持ち、気配を消すのが得意。普段はノアの助手として振る舞いながらも、その実態はただの元気なトラブルメーカーだ。
「誰も伝票を取るはずがないのに、なぜか消えてるんだ。スタッフも心当たりがないって言うし……。」
「なるほど……面白い。」
カフェの奥の扉が、ゆっくりと軋みながら開く。
紅い液体が揺れるカップを片手に、ヴァンパイアの探偵 ノアが静かに姿を現した。
「……これは、興味深いな。」
ノアは薄く微笑み、ブラッド・ルージュティーを一口飲む。
「ただのミスとは思えないな。」
「この伝票、わざと消されている可能性が高い。」
彼はゆっくりとカップを持ち上げ、一口含んだ。 それはノクターン特製のヴァンパイア用紅茶『ブラッド・ルージュティー』。
「さて……この謎を解くとしよう。」
「まず、消えた注文票はどこにあった?」
ノアが静かに問いかける。
「レジの横のホルダーに入れてあったはずなんだけど、気づいたらなくなってたんだ。」
「にゃ〜……もしかして妖精のイタズラかもにゃ?」
「妖精が伝票を盗んで何の得がある?」
ノアはラムに冷静な視線を向けながら、指を軽く動かす。
すると、カフェの空気が微細に揺らぎ、薄暗い店内に小さな光の粒が浮かび上がった。
「えっ、なにこれ?」
店主が驚いたように問いかける。
「にゃ!? なんかすごい光ってるにゃ! これって何なの!?」
「これは“記憶の残像”を引き出す魔法だ。紙が触れた空気の流れを辿る。」
「にゃ!? そんな便利な魔法あるなら、ボクのおやつがどこに消えたかも調べてほしいにゃ!」
「まずはこの事件を解決してからだな。」
すると、光の粒がふわりと動き、ある一点に集まった。
「……ここか。」
ノアが指し示したのは、店の隅にあるゴミ箱。
「まさかとは思うけど……」
カフェの店主がゴミ箱を開けると、そこには丸められた注文票がぎっしりと詰まっていた。
「にゃあ!? なんでこんなところに!?」
「誰かが捨てたんだろう。」
ノアはゆっくりと紅茶を飲みながら続けた。
「問題は、その『誰か』が誰なのか。そして、なぜこんなことをしたのかだ。」
「店のスタッフが間違えて捨てた可能性は?」
「それなら、こんなに綺麗に丸められてるのはおかしいよ。普段のゴミと混ざってないし……。」
「つまり、意図的に捨てた可能性が高いな。」
ノアは静かに考え込む。
「おそらく、犯人は誰かを庇っている……いや、むしろ、誰かに気づかせないために動いている。」
そして、その時。
「えっ!? これ……昨日の分の注文票もある!」
店主が驚きの声を上げる。
「ってことは、犯人は……」
ノアは静かに目を閉じた。
ノアは目を細め、ゴミ箱の中にある ひとつだけ異質な紙 をそっと拾い上げた。
「……なるほど。そういうことか。」
「……犯人は——」
ノアは、静かに目を細める。
「ここにいる。」
(後編へ続く!)
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