第4話 レベル上げ厨、ステータスポイントを割り振る
俺はスキルを取得し、ステータスポイントを割り振った。
全てのポイントを使った後のステータスと、取得したスキルの詳細がこれだ!
――――――――――――――――
【名前】鮫島 武男
【レベル】『1』 次のレベルまで経験値『95』
《HP》27/27(2up!)
《MP》18/18
《筋力》15(2up!)
《頑丈》12
《知力》6
《精神》12
《敏捷》14(3up!)
《器用》10
【STP】『0』
【SP】『0』
【スキル】《刀剣類装備時ダメージ上昇Lv.1》
【称号】なし
《刀剣類装備時ダメージ上昇Lv.1》――刀剣での攻撃時、敵に与えるダメージ1.2倍。刀剣以外の攻撃では効果がない。
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ステータスポイントは、しばらくの間は《筋力》と《敏捷》、時々は《器用》に振ることにしている。
その理由は単純にゴブリンを倒しやすくするためだが、《俊敏》の値が高いと移動速度も上昇するからね。ダンジョンの中は異空間のため、一層一層がかなり広大な面積を誇る。経験値――もとい、モンスターを探す時間を短縮できた方が効率が良いのは当然だ。
あと、《器用》に振るのは《筋力》《敏捷》の値と《器用》の値が離れすぎると、運動音痴になってしまうという理由もある。
力を入れすぎて自傷してしまったり、高速で走っていて壁に突っ込んだり転んだりして、大怪我をした事例も報告されているから、結構危険なのだ。
次にスキルだが、《刀剣類装備時ダメージ上昇》を取った理由は、これまたゴブリンの殲滅速度を上げるためだ。これを真っ先に5レベルまで上げるのが当面の目標だ。
それまでは地道に第一層でゴブリン狩りだな。
「今の時間は……10時過ぎか。まだまだ時間はある。……今日中に3レベルまでは行けそうだな」
ポイントの割り振りとスキル取得を終え、俺は再びダンジョン探索を再開した。
●◯●
《刀剣類装備時ダメージ上昇》を取得すると、ゴブリンとの戦闘時間が目に見えて減った。
ゴブリンを倒すまでに攻撃する回数が減り、戦闘の安定感が増す。それに上がった俊敏のお陰か、エンカウント率も上昇した気がする。
それは更にレベルが一つ上がったことで、気のせいではないとはっきりした。スキルレベルが2に上がり、《筋力》のステータスも上昇したからか、ゴブリン相手でも3回くらい攻撃を当てれば勝てるようになった。スライムなら一撃だ。
戦闘および探索の時間効率はどんどんと上昇していく。
ちなみに、新宿ダンジョンでも倒しやすいスライムは人気なのか、積極的に狩られまくっているせいで、明らかにスライムとのエンカウント率は悪い。
本来はスライムの方が多めに発生するはずなのだが、ゴブリンとの遭遇率の方が明らかに高かった。
「こんにちはー」
「あ、こんにちは……」
途中、何度も他の探索者の方々とすれ違い、その度に朗らかに挨拶を交わしつつダンジョン探索を続けていく。
「こんにちはー」
「グギャ? グギャルルルァアアアアアッッ!!!」
「はーい、ちょっとチクッとしますよー。経験値貰いますねーふんッふんッふんんんッッ!!!」
「グギャァアアアアアアッッ!!?」
ゴブリンさんと出会っては、その度に挨拶を交わしつつ、剣で
最初の戦闘での緊張は何だったのかと思うほど、今では余裕を持ってゴブリンを倒すことができる。無論、余裕があると言っても簡単なわけではない。殺るか殺られるかの戦いなのだ。毎回が真剣勝負である。
俺はゴブリンと戦う度、全力で剣を振り下ろす。
「ふんッふんッふんんんんッッギモ゛チ゛ィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛ッッ!!!」
現実でのレベルアップ気持ち良すぎだろ!!
そのせいか、もはやレベルアップせずともゴブリンを倒して経験値を獲得するだけで、ちょっと気持ち良くなれてしまうのだ。
ゴブリンを見つけるだけで、ゴブリンに剣を振り下ろすだけで、ゴブリンから経験値を摂取するだけで、脳が快楽物質を放出する報酬系の神経網が完成してしまった。
「ひぇっ!?」
「あ、すみません」
何度かゴブリンとの戦いを他の探索者に目撃され、俺のはしたない顔にドン引きされながらも探索を続けていく。
そんなこんなで午後3時過ぎ。
途中、ダンジョンを出て一時間くらいの昼休憩を挟んだが、それでも余裕で目的の3レベルまで到達することができた。
――――――――――――――――
【名前】鮫島 武男
【レベル】『3』 次のレベルまで経験値『190』
《HP》32/32(5up!)
《MP》18/18
《筋力》20(5up!)
《頑丈》12
《知力》6
《精神》12
《敏捷》17(3up!)
《器用》12(2up!)
【STP】『0』
【SP】『0』
【スキル】《刀剣類装備時ダメージ上昇Lv.3》
【称号】なし
《刀剣類装備時ダメージ上昇Lv.3》――刀剣での攻撃時、敵に与えるダメージが1.6倍。刀剣以外の攻撃では効果がない。
――――――――――――――――
3レベルに上がってから、試しにゴブリンと一度だけ戦ってみた。
《筋力》上昇とスキルレベル上昇による複合的な効果だと思うが、何と1回攻撃するだけで倒せるようになっていた。
第一層のゴブリンはレベル1とはいえ(モンスターにもレベルがあることが、《鑑定》スキルで確認されている)、最初は5回も6回も攻撃しなければ倒せなかったことを考えると、かなりの成長と言えるだろう。
特に《刀剣類装備時ダメージ上昇》の効果が大きいな。剣で攻撃するだけでダメージ6割アップだからね。
さらにゴブリン狩りが捗ることは間違いないのだが……、
「ぅ……くそ、疲労感がやべぇ……!!」
時間は午後3時過ぎ。
まだまだ探索してゴブリンをぶっコロコロしたいのは山々なのだが、極度の疲労感に苛まれているせいで、それも難しい。
ステータス的には《HP》も減っていないし万全なのだが、どうやら体力の減少は《HP》に反映されないらしいな。
地味にずっと動き回っていたし、途中からは楽に勝てるようになったと言っても、やはり緊張していたのかもしれない。その疲労が一気に来たという感じだ。
「無理してゴブリンさんに殺されてもあれだしな……今日はもう帰るか」
というわけで、今日はもう引き上げることにした。
ダンジョンから出ると、そこは新宿駅内――ではなく。
ダンジョンが出現してから新宿駅内の一角を改装して建設された、探索者協会の新宿支部へと繋がっている。
支部内部の構造は、ほぼ役所だ。幾つかの受付カウンターや相談窓口があり、広いロビーには整然と長椅子が並べられている。
支部内のダンジョン資源買取カウンターに向かい、本日の収穫物をダンジョン探索免許と一緒に提出した。
「すみません、これ、買取お願いします」
「かしこまりました。査定いたしますので、こちらをお持ちになってロビーでお待ちください」
受付のお姉さんから番号の書かれた整理券を受け取り、ロビーに並べられた長椅子に座って待つ。
何となく周囲を見回してみると、数人くらいの探索者の姿が。
講習中にステータスを取得するため他のダンジョンに入ったことがあるが、そこの協会支部よりも、やっぱり人はかなり少ないな。他のダンジョンだと営業時間中は常に人でいっぱいって感じだからね。
流石は新宿ダンジョン。都内の駅内にあるとはとても思えない寂れっぷりだ。
――と、
「18番の方、お待たせいたしました」
そうこうしている内に、査定が終わったのか呼ばれたのでカウンターに向かう。
「レベル1ゴブリンの魔石が26個、レベル1スライムの魔石が9個で、合計1万4800円になります。そこから源泉徴収を引きまして、1万3289円です」
「おぉ……!!」
だいたい9時から3時まで。途中一時間の休憩を挟んで、実働5時間の報酬と考えると、かなり良いのではなかろうか?
今日は魔石以外のドロップもなかったし、初心者は全然稼げないと聞いていたので不安だったが、この収入なら親父もお袋も文句はないだろう。
ゴブリンを多めに倒せたのが良かったのかもしれない。スライムの魔石が200円なのに対して、ゴブリンの魔石は500円だからな。
まあ、普通に死ぬ危険がある仕事と考えれば、これくらい稼げてもおかしくはないか。なぜかあまりニュースにはならないが、探索者の死亡率って結構高いらしいからね。特に初心者が死にやすいとか。
「こちらで宜しければ、ここにサインをお願いします」
「あ、はい」
言われた通りにサインする。
お金は口座に振り込んでもらい、その日は電車に乗って帰宅した。
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