【無刀の剣聖】禁忌の屍術使いは剣を抜かずに成り上がれるか!? 〜推し石と歩むバレたら追放の学園生活?〜

文印象

第一部 王立剣術学院編入編

序章

000 屍配


 血と死臭の、噎せ返るような臭気。


 それを纏った剣が、陽炎のように揺らめきながら迫る。


 

 ヤツは悠然と進んでくる。


 その奥で蠢く悍ましい影は、腐敗した肉の甘い悪臭を撒き散らす。

 ああ、なんて酷い。これは絶望そのもの。



 そして、目の前に横たわる〝友〟たち。

 みんな虫の息だ――。


 ボロボロになって、見る影もない。彼らの内なる灯火は、今にも掻き消えそうだ。

 残り僅かな生命の残光が明滅している。


 彼らの命はもうすぐ終わる。



 それは、ただの沈黙よりも深く、冷たい虚無。



「……ごめん、みんな……俺のせいで…………守れなくて……ごめん」

 

 言葉は虚しく霧散し、ただ唇から滑り落ちる。

 

 慢心。それが招いた、最悪の結果。

 

 打ち砕かれた現実。



 それでも。

 それでも、まだ、完全には光は潰えていない。


 震える指先でそっと触れると、微かな熱の名残を感じる。


 消え入りそうな生命の炎。途切れそうな呼吸音。



『――――私たちを、使って――』



 耳を近づけると……1人が確かに、そう言った。


 他のみんなも同じだ。声を出せずとも視線で訴えかけてくる。


「……ッ!」


 息が詰まる。


 守れなかった。守れなかったんだ。

 自分の甘さが招いた、この惨状。

 それなのに、まだ自分を信じてくれているというのか。

 その最後の力を、託そうとするのか。



 若き剣士は、奥歯が軋むほど強く噛み締めた。


 鉄錆びた血の味が、じわりと口内に広がっていく。



 震える脚に、意志の力を無理やりねじ込む。

 泥と血に塗れた膝を叱咤し、立ち上がる。



 そして――剣を抜く。



「お前ら……絶対に、許さない」



 涙に濡れた世界の中、微かに息のある〝友〟たちに向かって剣を突き立てた。


 自ら、トドメを刺した。そうすれば屍術の傀儡として再び蘇る。



 ああ……なんてことを。自分はなんてことをしてしまったんだ。なんてことをしているんだ。




 溢れ出る涙が血に染っていく。



 もう後には戻れない。

 せっかく手にした新しい生活とも、これでお別れだ。


 それでも構わない。コイツは……コイツらだけは……絶対に――!!



「奥義、屍配ガダヴ・ポテス! 我が友よ。死してもなお、その身を使役すること……赦せ」 




 驚嘆の表情を浮かべるヤツの顔面に、〝友〟の拳がめり込んだ。

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