影の襲撃と不死の呪い

 影がゆらめきながら俺たちへと迫る。まるで実体のない霧のように、しかし確実に獲物を狙う捕食者のように。


「アリシア、前衛! ミラ、光属性の魔法を準備してくれ!」


 俺が指示を飛ばすと、アリシアは素早く剣を構え、影に斬りかかった。しかし——


「なっ……!?」


 剣が影を貫いたにも関わらず、手応えがない。それどころか、影は一瞬にして形を変え、アリシアの背後へと回り込んだ。


「くっ……なんて動き!」


「《ルミナスバースト》!」


 ミラの放った光の魔法が影に直撃する。影は苦しむように揺らぎながら、霧散した。


「やっぱり光属性が弱点みたいね……。」


「だが、これで終わりじゃないぞ。」


 俺の言葉に呼応するかのように、村のあちこちから新たな影が湧き出してきた。家の屋根、路地の角、井戸のそば——無数の影が集まり、俺たちを囲む。


「数が多すぎる……!」


 レオンが短剣を構えながら歯を食いしばる。


 その時、影たちが一斉に動いた。俺たちに向かって、音もなく迫ってくる。


「光魔法を連発するぞ! ミラ、頼む!」


「分かってる! でも……魔力が……!」


 ミラの額には汗が浮かぶ。短時間に連続で光魔法を使ったため、消耗が激しい。


「なら、俺がやる!」


 俺は両手を構え、全身に力を込めた。覚醒したばかりの力が、再び湧き上がる。


「《神撃・聖浄の一閃》!!」


 俺の拳が輝き、放たれた光が周囲の影を一掃する。影たちは苦しみながら霧散し、跡形もなく消えていった。


 静寂が訪れる。


「やったの……?」


 ミラが肩で息をしながら呟く。しかし、俺は確信が持てなかった。


 その時——


「……お前たちは、何も理解していない。」


 どこからか、不気味な声が響いた。


 視線を向けると、村の中央にひときわ濃い影が浮かび上がる。そこには、人の姿をした影のような存在が立っていた。


「貴様は……?」


「私は“呪われし者”……この地に刻まれた、不死の呪いを司る者だ。」


 俺たちは息をのんだ。


「つまり、お前がこの村で人々を消していたのか?」


「フフ……その通り。だが、彼らは消えたわけではない。新たな影となり、この地に囚われているのだ。」


 影の男の言葉に、俺たちは戦慄した。消えた村人たちは——影としてこの地に留まっている。


「お前を倒せば、村人たちを救えるのか?」


 俺が睨みつけると、影の男は薄く笑った。


「フフ……試してみるがいい。」


 次の瞬間、影の男が闇を纏いながら、俺たちへと襲いかかってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る