第09話 聖女たちの寝起きドッキリ

「ウェイン様、ウェイン様。」


 呼ばれる声で目を覚ます。


 早朝、カーテンもしまったままでまだ薄暗い部屋の中、すぐ目の前に聖女が居た。

 

 また勝手に入ってきてる……。


「ウェイン様。少々問題が起きましたので、しばらくお側を離れます。」


 いつになく真剣な表情で静かに言う聖女に、こちらの気持ちも引き締まり、身を起こす。


「その子たちをお願いしてよろしいですか?」


 そう言って、俺の左右に視線を走らせる聖女にあわせて見てみれば、そこにはいつの間にか、リラとジーナが左右から俺の寝巻の裾を握って眠っていた。

 幸いなことに着衣の乱れがないのは喜ばしいことだが、涙を流した跡があるのが気にかかる。


「待て待て、全くわからん。何があって、いつまでどこに?この子らをどうすればいい?」


 寝起きであまり働かない頭に衝撃の状況。言葉足らずの聖女。状況が分からな過ぎて困る。


「申し訳ありません。問題の解決には、二、三日頂ければと思います。この子たちは起きるまでこのままで、時間の空いた時で結構ですので様子を見ていて頂きたいです。」


 今、俺に言えることは少ないか。


「分かった。それで、俺の協力は要らないか?」


 頷き、しっかりと目を見据えて尋ねる。


「あとで、褒めて頂ければと思います。」


 そう言って微笑む聖女の顔はいつもより少し強張っているように感じるのは気のせいか。

 穏やかな寝息を立てるリラとジーナに目を落とす。

 顔にかかった髪が口に入りそうなので避けてやりつつ、昨日のことを思い出し、小さく息を吐く。


「セラフィナ、ちゃんと、無事に戻って来るように。まだまだ問題は山積みなんだからな。」


 今まで避けていた彼女の名を呼んだ。彼女は大きく目を見開いて驚いている。


「かしこまりました、旦那様。」


 一瞬の驚愕から立ち直った彼女は、先程よりも自然な微笑みを浮かべ直す。そして自然に俺と唇を重ね、静かに部屋を出て行った。



「いつから見てた?」


 扉の影に居たダリアに声を掛ける。


「初めから居ましたが。ちょっと目を離すとすぐ増やすんですから。」


 何も言えないのでとりあえず肩をすくめてみせる。


「自分で部屋に入れたんだろ?」


 ダリアが、俺が寝ている間によく知る人間以外に入室を許すなんて、基本的に無いことだ。


「私もウェインの甘さがうつってきているようで。」


 二人を起こさないようにこちらへ静かに歩いてくる。


「なんだか今にも泣きだしそうだったんですよ。」


 そう言うとダリアは優しい微笑みを浮かべ、そっとリラたちの頭を撫でた。



 その後起床時間まで、ダリアと二人、静かにここ数日の話をした。また、昨日からリンスの姿が見えなくなったことも知らされた。荷物は残っているし、出かけることは聞いた者がいるが、行き先は誰も知らないという。

 放っておいてもリンスなら大丈夫だろう。

 目を覚ましたリラとジーナに、改めて俺のところに来た理由を聞いたところ、「なんだか悲しいことがあった気がした」という、わかるような、わからないような返事だった。

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