冒頭だけ書いてみたシリーズ
大魔王
一話
このモールの屋上には、100円で使える双眼鏡があって、僕はそこから眼下の街を観察するのが好きだった。レンズ越しに見える世界は、液晶の中みたいに小さくて、僕はその喧騒の中にはいない。面倒くさいことばかりのあの街から、僕はずっと遠くまでやってきたのだ。
アリの大群のような交差点を眺めていると、同時に、複雑な感情が舞い込んでくる。
アリ。
今日も、たくさんの人たちがこの街にやってきては、その雑踏の中に吸い込まれていく。何千、何万という人に踏まれていく。僕は、その人たち一人一人がどんな人間で、どんな生活をしているのかなんて知らないし、知ろうとも思わない。そしてきっと、彼らも僕を知ることなんてないのだろう。ここから見える景色の広がりは、僕という存在の小ささを緩やかに、残酷に教えるようだった。
「な~にやっての。草野君。」
思わぬ声に、僕は跳ね上がるように振り返った。
「え、渡邊さん?」
「だから、何やってるの?」
「望遠鏡を見てるんだよ」
「何を見てんの?」
「色々だよ。」
渡邊さんは、同じ6年2組の女子で、僕は去年から同じクラスだった。
「ふぅん、もしかして、誰かのマンションの中、覗いてたとか?」
「違うよ!!変なこと言うなよ!第一、ここからマンションなんて見えないだろ?。」
「あ、そっか。」
渡邊さんは笑った。
「じゃあ、あれとか?」
彼女が指差したのは、最近できた高層建築、"雲突"だった。
「誰があんなの見るかよ」
「草野君、あれ嫌いなの?」
「いいだろ、別に」
僕は再び振り返って、双眼鏡を覗いた。構わず、渡邊さんは話し始める。
「私は結構好きだけど。凄く、大きいし。」
雲突が作られたとき、天国へのエレベーターが出来たと思った。あの電波塔は雲を突き抜けて、今日もどこかに電波を送っている。もしかしたら、それは天国への電波で、あの世のテレビでも【某テレビ番組の名前を入れていたが著作権上の理由で規制】が映っているかもしれない。
「あの塔の電波は、天国にも届いてるかもしれないね。大きいから。」
偶然にも、彼女が言ったことは僕の考えていたことと一緒だった。頭の中を覗かれたみたいで、一瞬、ギョっとした。
「バカじゃね~の。」
「でも、天国で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます