梨花のすむ町(抄)
高田
ハイティーン文庫
梨花のように、魔力を持つことができたら。彼女はアニメを見ながら考えていました。私は、全てのものを壊してみせる。
彼女の名前は橘美咲と言います。きらきら中学校の二年生で、一番嫌いなものが、大人でした。
「私が一番嫌いなことは、大人になること。あのうす汚い、自由のない、子供の行動に一々まゆをひそめる、あの化物ども。」
「私は、一冊のライトノベルを、大事に持っている。もちろん、本棚の奥にしつように隠して。本の名前は、」
「『梨花のすむ町』作者は白海香織。大学生の時に作家としてデビューし、89歳で死ぬまで児童文学・ハイティーン文芸・ライトノベルを書き続けた。代表作は『梨花』シリーズ。魔法少女が戦いの中で成長していく物語だ。」
橘は、アニメ『マジカルガール・魔法少女梨花』を見ながら呟いていました。クソみたいな改変しやがって。
そもそも、タイトル意味かぶってんだろ。はーマジクソ。これだから大人は嫌いだ。白海さんの作品を、
こんな風に改変しやがって。権利どうなっとんねん。私は、子供の夢を喰いものにするような大人にはなりたくない。
橘は、白海さんは魔法が使えるおばあちゃんだったのだと、なかば本気で思っていました。物語を創るということは、
世界を現すということだと、そう思っていたのですから。「梨花のように魔力を持つことができたら。」それは『梨花』シリーズを読んだ橘がいつも思っていることでした。
──そう思わせるってことは、白海さんにも魔力があったんだ──
橘は、大人になりたくない、なりたくない。と歌いながら、三月の道路を進んでいく。──もう少しで中三かあ──。
彼女は子ども時代の終わりということを考えながら、もう少しで梨花の年齢を追いこすことを、かなり怖く思っていました。
「梨花、私はあなたのように、ほまれ高く生きていますか?」彼女は、友達は少なかったのです。けれど心の中の梨花と、終わりのない話を続けながら、少しづつ、成長の道をたどっていくのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます