第3話:受験方法どうする?

 真伍は練武中への受験を決意したものの、学力面での不安があった。小学生のころはほとんどの時間を野球に費やし、塾にも通っていなかった。

 家に帰ると、母が心配そうに尋ねた。


「真伍、本当に練武中を受験するつもりなの?」


「うん!絶対にあのグラウンドで野球がしたい!」


真伍は迷いなく答えた。

 母は少し考え込むような表情を浮かべた。


「でも、勉強のほうは大丈夫なの?」


「正直、そこが一番不安なんだよね…。塾に行ってなかったし、何から始めればいいのか…。」


 真伍は机に座り、教科書を開いてみたが、どこから手をつけていいのかわからなかった。受験勉強というものを本格的にしたことがなかったのだ。

 その時、スマホにメッセージが届いた。送ってきたのは、親友の鈴木新大だった。


『真伍、練武中受けるってマジ?』


『マジだよ!でも、勉強がヤバい…』


 すると、新大からすぐに返信が来た。


『それなら俺が手伝ってやるよ!俺も練武中受けるし、一緒に勉強しようぜ!』


 真伍は驚いた。新大も練武中を受験するのか?


『マジか!新大も練武中?』


『ああ。お前と同じチームで野球やりたいしな!』


『うおおお、心強すぎる!!』


 こうして、真伍は新大と一緒に勉強することになった。

 次の日、新大の家に行くと、すでに参考書や問題集が机に並べられていた。


真「すげぇ…新大、めっちゃ準備してるじゃん!」


新「まあな。俺も勉強得意なほうじゃないけど、効率よくやれば大丈夫だろ。」


 新大はノートを開き、まずは過去問を解いてみるように言った。


真「いきなり問題?基礎からやらなくていいのか?」


新「まずは実力を知るのが先だろ。自分の弱点を知らなきゃ対策もできないしな。」


 新大の言う通りだった。さっそく過去問を解き始めたが、真伍は算数の問題に苦戦した。


真「うわっ…方程式とか、こんなの習ったっけ?」


新「お前、野球ばっかやってたもんな。でも、コツをつかめば意外と簡単だぞ。」


 新大が説明を始めると、真伍は驚いた。


真「すげぇ…めっちゃ分かりやすい!」


新「だろ?こうやって、一緒にやれば効率も上がるし、お互いに教え合える。」


 その日から、真伍と新大は毎日放課後に勉強会を開くようになった。野球の練習が終わった後も、疲れた体にムチを打ちながら問題を解き続けた。

 そして数週間後、真伍はある変化に気づいた。


「おい、新大!この問題、もう解けるようになったぞ!」


「おっ、やるじゃん!だんだん成長してきたな!」


 勉強を始めて数週間が経った。最初は戸惑っていた真伍も、徐々に勉強のリズムに慣れてきた。新大と一緒に問題を解いているうちに、少しずつ算数のコツもつかめてきた。

 ある日の放課後、新大の家で勉強会をしていたときのことだった。


真「なあ、新大。この算数の文章題、全然意味わからん!」


 真伍が頭を抱えながら、問題集を新大のほうへ押しやった。


新「どれどれ……ああ、これな。割合の問題だな。」


真「わりあい……?」


新「たとえば、お前が10回打席に立って、そのうち4回ヒットを打ったとする。ヒットの確率はどれくらいだ?」


真「えーっと……4割?」


新「そう、それが割合だよ。」


真「あっ、そういうことか!」


 新大の説明は、いつも野球に結びついていてわかりやすかった。こうして、真伍は少しずつ勉強の楽しさを感じるようになってきた。

 しかし、壁にぶつかることもあった。


真「やっべぇ……漢字、全然覚えられねぇ……。」


新「お前、野球のサインとかすぐ覚えられるのに、なんで漢字は苦手なんだよ?」


真「だって、漢字には動きがないし……。」


新「じゃあ、体を動かしながら覚えるか!」


 新大はニヤリと笑い、あるルールを提案した。


新「間違えたらスクワット20回な!」


真「えっ、マジで?」


新「運動しながら覚えたほうが、お前には向いてるんじゃね?」


真「うーん……まあ、やってみるか!」


 こうして、二人の勉強はいつの間にか体を動かしながらやるスタイルになっていった。

 ある日、真伍が家に帰ると、母が驚いたように言った。


母「最近、机に向かってる時間が増えたわね。」


真「まあな!新大がいろいろ教えてくれるから、勉強も楽しくなってきた!」


母「それは良かった。でも、ちゃんと睡眠はとってるの?」


真「もちろん!勉強も野球も、体が資本だからな!」


 母は優しく笑いながら、「頑張るのはいいことだけど、無理はしないでね」と言った。

 受験までは、まだ時間がある。

 真伍は、新大とともに、一歩一歩着実に成長していった――。


推薦入試は12月1日にある。新大と真伍は着々と勉強を進めていた。

入試1週間前、11月24日。入試の後にある、面接の練習を二人でやっていた。

真伍と新大は、公園のベンチに座りながら、面接の練習を続けていた。


真「なぜこの学校を受験したのですか?」

新「僕は小さいころから守備が得意で、より高いレベルでプレーできる環境を探していました。練武中の野球部は全国でも屈指の守備力を誇り、自分もその一員として成長したいと思ったからです。」


真「この学校を志望する理由を教えてください」

新「練武中は文武両道を掲げていて、勉強にも力を入れている学校です。僕は野球だけでなく、学業にも励みたいと考えているので、ここなら自分をより高められると思いました。」


真「次に、入学したらどんなことに力を入れたいですか?」

新「まずは野球部の一員として、レギュラーを目指して練習に励みたいです。また、チームを支える副キャプテンのような役割にも興味があり、仲間とともに成長できるよう努力したいと思います。」


真「最後に、本校でどのようなことを学びたいですか?」

新「野球を通じて、技術だけでなく、チームワークや礼儀、努力の大切さを学びたいです。そして、勉強の面でも自分を高め、将来どんな道に進んでも活かせる力を身につけたいと思います。」


 そう言いながら、新大はニヤリと笑った。


真「なんだよ、その顔。」

新「これ、完璧じゃね?」

真「それな。まさか俺たちが公園でこんなに勉強してるとはな。」

新「でも、これも全部、練武中で一緒に野球をやるためだしな。」

真「……ああ、絶対合格しような!」


 二人は固く拳を合わせた。

 推薦入試まで、あと一週間――。

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