ペンローズ的宇宙論を理解するための考察(詩編/理論編)

アイス・アルジ

第1話 詩編:時と宇宙と知

§ 時


 深淵なる宇宙のただ中にひとつの時計が浮いている。 文字盤の上は霧がかかったようにぼやけて針は見えない。 

 そして、計測開始のボタンが押される。


 文字盤の12時の位置に針が現れ、秒針が動き始め時を刻み始める。カチカチカチ。秒針、分針、時針、日針、年針、十年、百年、千年、万年、億年、兆年……と、無数の針は無限の時を測ることができる。

 秒針が動き始めてどれくらい時がたっただろうか。

 

 数兆年…… 文字盤上の無数の針は、螺旋状に時の経過を残している。やがて秒針がわずかにぼやけ始める。細い一本の針がピンぼけ写真のようにぶれて見える。それから数兆年の数兆年倍…… 秒針は文字盤上に全体に広がってぼやけ、霞み、分針もぼやけ始める。やがて、時針、年針…… 次々とぼやけてゆき、無限の時が過ぎるころ、ついに全て針がぼやけて文字盤上に広がり、消える。


 こうして無限の時は、計測される。

 やがて、次に計測開始ボタンが押されるまで、針が再び現れることはない。

 そして、いつの時か再び…… 再び計測開始のボタンは押される。



§ 宇宙


 宇宙が始まった。

 

 どうして始まったのかわからない。 

 「始まり」の前は、決して知ることができない。

 「始まり」と同時に、無限が生まれた。

 「始まり」にわかることは、「無限」が在るということだけだ。

 「無限」の彼方に「終わり」が在るかもしれないが、ないのかもしれない。


 そして「今」が生まれた。

 「始まり」は「過去」となり「無限」が「未来」となった。 

 つまり「時」が生まれた。 

 「今」とは記憶のことだ。

 

 過去は記憶の中に消えた存在、未来はこれから記憶されるべき存在。 

 記憶は意識から生まれ、 意識は常に現在に存在する。 

 過去に存在したのかもわからないし、未来に存在し続けるのかもわからない。


 意識を持った存在、「人」が生まれた。

 「人」は現在に存在する。

 「人」はどうして存在するのか。過去に神により想像されたのか。

 知ることのできない未来、 「人」は知りたいと願う。

 どうして生まれたのか。そしてどこへ向かってゆくのか。



§ 賢者の本


 深淵なる宇宙のただ中に一つの本が沈んでいる米粒のように小さな本なのか城のように大きな本なのか比較する物がないので判断できない 暗黒のように暗い革表紙に見たこともない金文字の入った豪華な賢者の本なのだろうが漆黒の宇宙の闇にまぎれ誰の眼の光も届くことはない 此の本には無数のページがあり宇宙の全てが書かれているというしかし誰にも読まれる事はないだろう 科学者はベッドに横たわり最後の時を待っていた彼はもう何も語ることはできず彼の意識は薄れ掛け替えのない知識は失われようとしてる 彼の魂が失われるとき一生をかけて獲得した彼の記憶は賢者の本に記される事だろうかつて生きたすべての生命と人間の記憶が記されたページの中に新たな一ページが記される 一人の子が生まれ賢者の本に書かれた数行が人知れず消える次として新たなる知識が賢者のメモとして残されることだろう。





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