俺だけが最強の預言の子で王を倒して森で幸せに暮らすようになった件

全国ヘアピン同好会

第一話:目覚めの瞬間

静寂が支配する森の中、一人の少年が目を覚ました。名はカイト。黒髪に鋭い瞳を持つ、どこか野性的な雰囲気をまとった少年だ。地面に横たわっていた彼は、ゆっくりと体を起こし、周囲を見回した。木々の間を縫う風の音、遠くで鳴く鳥の声。そして、空を覆う濃い緑の天蓋。すべてが鮮明に感じられる。

「ここは……どこだ?」

カイトは首をかしげ、自分の記憶を手繰り寄せようとした。だが、頭の中は霧に包まれたようで、何も思い出せない。自分が誰か、なぜここにいるのかさえ曖昧だ。ただ一つ確かなのは、体の奥底から湧き上がる異様な力の感覚だった。

立ち上がった瞬間、彼の足元で地面がわずかに揺れた。驚いて見下ろすと、土が波紋のように広がり、小石が浮かび上がっている。反射的に手を振ると、その小石が弾丸のように飛んでいき、近くの木に突き刺さった。木は幹ごと折れ、轟音を立てて倒れた。

「……何だ、これは?」

カイトは自分の手をじっと見つめた。力が溢れている。制御しきれていないそれは、彼の意志とは無関係に周囲を壊してしまうほどだった。

その時、森の奥から複数の足音が近づいてきた。カイトが顔を上げると、木々の間から現れたのは、鎧をまとった五人の兵士たちだった。彼らは手に剣や槍を持ち、カイトを囲むように距離を取った。

「お前が噂の『災厄の子』か?」

リーダーらしき男が威圧的な声で言った。顔に深い傷跡が刻まれたその男は、カイトを睨みつけながら槍を構えた。

「災厄の子?」

カイトは眉をひそめた。そんな呼ばれ方をされた覚えはない。だが、兵士たちの敵意は明らかだった。彼らが一斉に武器を振り上げるのを見て、カイトは本能的に身構えた。

「生け捕りにしろ! 王の命令だ!」

傷跡の男が叫ぶと同時に、兵士たちが襲いかかってきた。槍が空気を切り裂き、剣が陽光を反射する。普通の少年なら恐怖で動けなかっただろう。だが、カイトは違った。

彼は一歩踏み出すと、地面が爆発したかのようにひび割れた。その衝撃で兵士たちがバランスを崩し、悲鳴を上げる。次の瞬間、カイトは手を軽く振り払った。すると、空気が歪み、目に見えない力が兵士たちを吹き飛ばした。彼らは木々に叩きつけられ、もがきながら地面に倒れた。

「何!?」

傷跡の男が目を丸くして立ち尽くす。カイト自身も驚いていた。自分の力の大きさに戸惑いながら、彼は男に近づいた。

「お前、誰なんだ……本当に人間か?」

男の声は震えていた。カイトは答えず、ただ静かに見下ろした。すると、男の鎧が突然ひしゃげ、彼は地面に膝をついた。カイトが意識せず放った力の余波だった。

「俺にも分からない」

カイトは小さく呟いた。自分が何者か、何のためにこんな力を持っているのか。それを知るため、彼は森の奥へと歩き出した。背後で兵士たちが呻き声を上げる中、彼の心は決まっていた。この力を解き明かし、自分の居場所を見つけ出す、と。

森を出たカイトがたどり着いたのは、小さな村の入り口だった。そこには、怯えた目で彼を見つめる村人たちがいた。そして、その中の一人――年老いた女が震える声で呟いた。

「まさか……預言の子が現れたのか?」

カイトの耳にその言葉が届いた瞬間、彼の胸に新たな疑問が芽生えた。預言の子とは何か。この力が何を意味するのか。そして、彼を待ち受ける運命とは――。

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