第36話 対面する魔王と女王
エノルム王国
帝国程ではないが、それに匹敵する巨城が聳え立つ。
東のグロース大陸で随一の国を象徴する城に、コリンが進みアリナ、カリーノも続く。
「僕も一緒で大丈夫かな…?」
「1人にしたら後でいなくなるか、敵に人質として捕らえられるパターンがもれなく待ってるもんだよー」
「そうなの?」
ゲームや漫画やアニメを愛するアリナ、此処でカリーノだけ1人宿屋に残したら、後に何かが起こるパターンがあると読み、彼も付いて来てもらっていた。
「何だ君達は?此処はエノルム王国の城で一般の市民は立ち入り禁止だぞ」
城門に近づくコリン達の前に、鎧を纏った人物2人が立ち塞がる。
やはりそこまですんなり行ける訳が無い、多くの兵士が侵攻に加わっているとはいえ、城を守る兵士達はまだ大勢居る。
それぐらいはコリンも分かっている事だ。
「悪いけど、ちょっと眠っててねー」
「は…?」
門番の兵が声を発したのと同時に、コリンの右手に握られた杖が振るわれると、赤い光の粉のような物が門番達に向かって飛んでいく。
すると門番達は共に突然地面に倒れ伏し、爆睡していた。
「さあ今の内に行こ行こー」
「マジの強行突破だね、もう後には引けないよー!」
眠る門番達を乗り越えてコリン、アリナは城内へと進みカリーノはマルシャと共に続いて走る。
以前帝国の軍勢を相手に片っ端から眠らせ、帝国の制圧に成功しているコリン。
今回も出て来る兵士達と鉢合わせになれば、門番達と同じく夢の世界に誘い、互いを傷付けず前進。
おかげで新手を呼ばれ、多くの兵士が駆け付ける事も無い。
侵攻によって手薄になっているというのもあるだろう。
「女王とかお偉いさんが居そうな場所は城の奥とか上の階かな?此処の場合はどっちか知らんけどー」
何となくのイメージで、アリナはアマンダの居そうな場所を予想。
ゲームをやってれば王の間は大体そういう所にあった、という彼女の経験談だ。
「じゃあ、上行ってみようか」
アリナの言葉を信じ、コリンは階段を見つけて上に登り一行も続いた。
「城に侵入して兵士を眠らせたりと凄く大変な事をしてるよね…!?」
「今更だな、怖ぇなら帰るか?」
「帰らないよ…!」
階段を上がりながらカリーノは事の大きさに気付くも、マルシャから投げかけられた言葉に首を横に振った。
コリンが先程言ったように後戻りはもう出来ない、此処まで来たら女王に会うまで止まる気など全く無い。
出会い頭に兵士を眠らせ続け、コリン達は巨大な扉の前に来ていた。
「いかにもって感じだけど兵士の見張りとか立ってないからなぁ、ただの大きな食堂の可能性もあるよね?」
「とりあえず開けるしかないでしょ、失礼しまーす」
女王の居る広間に通じる扉、見た目としてはそんな雰囲気がアリナには伝わって来て、確かめれば良いとコリンが躊躇無く扉を開けた。
開けた先には大広間があり、その先に玉座へ座る人物が見える。
周囲に女王を守る数人の重装備で固めた兵士達、女王の傍らには黒いフードに身を包む人物が控えていた。
どうやら当たりを引いたようだ。
「何者だ?見た所この城の者ではないようだな、妾には覚えの無い連中ばかり…」
見知らぬコリン達が入って来ても玉座に座る人物は動じず、右手に持つ扇で自らを仰ぐ手を止めない。
腰まで長い黒髪、大胆に胸元を開けた赤いドレスでスカートはスリットになっている。
大人の魅力を兼ね備えた妖艶な美女が、コリン達に視線を向ける。
それと同時に突然入って来た者達に対して、女王の前に重装兵達が主を守るように前へ進み出て、槍や剣を構えていた。
「貴女がエノルム王国の女王アマンダ?」
「いきなり無礼な小僧だ、妾を呼び捨てにしてくる者は久々に見るぞ」
立ち塞がる重装兵を無視か、コリンは玉座に座るアマンダを見て本人かどうか尋ねれば女王は僅かに眉をひそめ、仰いでいた扇の手を止める。
「(うーん、妾と言う人か…露出度高いなぁー、胸とか大きくて見事なナイスバディ…お偉いさんのおっさん誘惑しまくって同盟結んだりとか、向こうが下心あって近づいてとかあったのかなぁ〜?)」
主にアマンダの大きく実り揺れ動く胸を見て、アリナは言い身体してるなぁ〜と今の状況と合わない事を呑気に考えていた。
「お前達を我が城に招待した覚えは無い、突然乗り込んで妾の前に現れた無礼な振る舞いを冗談で済ます気ではあるまいな?」
鋭い視線をコリン達へと向けるアマンダ、睨まれて思わず後ずさりするカリーノとは反対に、コリンやアリナにマルシャの方は怯む様子が微塵も無い。
「勿論、冗談で済ます気なんか無いよアマンダ女王」
目の前で武器を構える重装兵、それに構わずコリンはアマンダへ話しかけていた。
「突然何の挨拶も無しに来て無礼だったのは謝るね、こっちは急いでたもんだからさ」
アマンダに対し、コリンはいきなり城へ侵入した事を頭を下げて謝罪。
彼の姿は悪い事をしてしまい謝る子供を思わせる。
「僕はコリン、魔王として今回のベッラ帝国に対するエノルム王国の侵略を止める為に来た」
此処で隠さず自らを魔王と明かす、コリンは魔王として今回の戦を止めに来たのだ。
「…」
黒いフードの者がコリンを真っ直ぐ見る。
この時、後ろから固唾を呑んで見守っていたカリーノは黒いフードを見て気付く。
「(え、あれって…!?)」
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此処まで見ていただきありがとうございます。
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アリナ「ザリーよりなんかサキュバスっぽい!ああいうのは誘惑とか得意そうだから、負けて甘えに行くとか駄目だよ!?いや、そういう展開も美味しいけど!」
マルシャ「注意してんのか負けてほしいのかどっちだよ」
コリン「話し合いで済ませたいんだけどなぁ〜、聞いてくれるかな…?」
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