第54話 生徒会サイド
神楽鈴視点
異世界に連れてこられてすぐに私達は能力を調べられ、私はAの札を渡されて天月君達と一緒のグループに分けられた。
鑑定を担当している兵士の反応を見る限り、Aのグループに能力の高い者が集められたと考えていいと思う。
Aのグループには十人が集められ、その中には同じ生徒会メンバーだった天月君と剣崎君もいる。
王女様自らがやってきて説明を始める。
「改めまして、シルフィン国王女ミンティアです。早速で申し訳ありませんが、皆様は他の勇者様方と比べても高い力をもっておられます。勝手なことを言っていると承知でお願いします。どうか世界を守る為にお力をお貸しください」
王女様が頭を下げ周りの兵士が慌てる。
王女が頭を下げるべきではないというのもわからなくはないが、この国の中でも私達の扱いが定まっていないのではないかという印象を私は持った。
「邪神を討伐してほしいと言っていたが、俺達にそれだけの力があるとは思えない。肉体的にもそうだが、これまで争いごととは無縁の生活を送ってきた。仮に邪神と対峙出来るだけの能力が備わっていたとしても、立ち向かえるとは思えない」
天月君が王女様に答える。
こういう時、その場の空気に流されずに冷静な対応が出来る天月君は本当に頼りになる。
「貴様!王女様の頼みを断ると言うのか!」
王女様の後ろに控えていた兵士の一人が声を荒げる。
「俺は無責任な答えをしていないだけだ。王女様のことを何一つ知らない。この国についても知らない。もちろん邪神についても知らない。それで王女様の頼みだからと『邪神を討伐する』と答えるやつがいるとするなら、よほどの馬鹿か、お前らに洗脳されているか、身を守る選択をしたかのどれかだろうな」
天月君は声を荒げた兵士に冷たい目を向けながら淡々と答える。
王女様には天月君が怒っているように見えたかも知れないけど、長いこと一緒に生徒会をしていた私には天月君はまだ冷静に見える。
「失礼致しました。私共に勇者様方を害する考えはありません。下がりなさい」
王女様は再度頭を下げた後、声を荒げた兵士を下がらせる。
「おっしゃることはごもっともではありますが、私達が勇者様方のお力を必要としているのも事実。無理に死地に向かえとは言いません。勇者様方が邪神と対峙しても無事に帰ることが出来るように全力でサポート致します。訓練だけでも受けてはもらえませんでしょうか?」
「一つ確認したい。邪神を倒せば俺達は元の世界に帰ることが出来るんだな?」
天月君は強い口調で王女様に尋ねる。
「邪神の存在とは関係なく、勇者様方を元いた世界に送還する準備は進めています。しかし、準備が整うには長い年月が掛かり、その頃には邪神によりこの世界は滅びているでしょう」
「結局は邪神とやらをどうにかしないといけないということか……。王女様には悪いが、俺達にこの世界を救いたいという気持ちはない。あるのは元の世界に帰りたいという気持ちと、こんな世界に連れてこられたことに対する不安と怒りだけだ」
天月君が厳しい言葉を選んで、王女様に私達の本音を代弁する。
「重々承知しております。その上で、私共に協力して頂けるように誠意を見せていくしかないと考えています」
「わかった。今すぐ城を追い出されても行くあてがあるわけでもない。気持ちの整理が出来たなら訓練に参加する」
「はい、すぐに答えを出す必要はありません。こんなことを言える立場ではありませんが、急なことでお疲れだと思います。体を休め、今後についてよくお考えください」
王女様はまた頭を下げてから去っていく。
私達は兵士から一人一部屋与えられたが、剣崎君は自身に与えられた部屋は物置として、天月君と同じ部屋に寝泊まりすることに決めた。
私は同じグループに気を許せる同性がいないので一人で部屋を使う。
岡本さんもいたら良かったのに……。
天月君の部屋に集まり、三人で今後について話し合う。
話し合いの結果、抗えるだけの力を得る為にもとりあえずは国の言うことを聞く方針でいくことに決まる。
ただ、これはここにいる三人の方針であり、他の人には強制しないこととした。
何が正解かわからない以上、相手から助けを求められない限りは異世界に来てまで生徒会として上に立つ必要はないという判断だ。
それから、別のグループになってしまった岡本さんと合流することと、事情を知っていそうな天野君から話を聞く必要がある。
混乱を防ぐ為に城内の移動は制限すると説明は受けているけど、これからのことを決めるためにも早くその制限を解いてほしい。
不安は増すばかりだ。
結局二人とは会えないまま二十日程が過ぎ、事態が急変する。
これまでは私達に強制こそしないものの、訓練を受けさせ邪神と戦わせようとしていた兵士達が何も言わなくなった。
訓練をしろとも、訓練をするなとも言わない。
さらに数日して今まで一度も姿を見ていなかった国王が現れ、異世界人の代表として天月君が話を聞くことになった。
後から天月君から話を聞いたところ、国王様は私達を召喚することに反対していたが、何者かにより眠らされており、国王様の意思に反して誰かが王女様を唆して召喚を進めたそうだ。
それから、国王様の考えを尊重しつつも、既に喚んでしまったのだから勇者達を邪神と戦わせようという意見と、世界が滅ぶ危機があったとしても巻き込むべきではないという意見で分かれているようだ。
ただ、どちらに転んだとしても私達がすぐに元の世界に帰れるわけではなく、帰還の準備が整う頃には邪神が世界を滅ぼしており、私達以外の人が邪神を討伐しないなら選択肢は無いのと同じだと天月君は言っていた。
国王様に天月君が頼んだことで他のグループの人が生活しているところにも自由に行けるようになったが、岡本さんと天野君には会うことが出来ず、城から追い出されてしまったのだと心配していたある日、天月君に呼ばれて天月君達が使っている部屋に行くと天野君がいた。
岡本さんは自らの意思で城から抜け出したと知り安心するが、それよりも天野君が言っていたことが頭から離れない。
天野君は私が勇者だと言っていた。
つまり、私がみんなを巻き込んだということだ。
私が悪いわけではないと頭ではわかっているけど、整理出来ないもやもやは残る。
天野君から私がやるべきことは教えられ、魔導具だという小さなベルをもらったけど、どうしたらいいのかわからない。
天月君と剣崎君に相談したいけど、二人は優しいから私が巻き込んだと言っても責めることはせずに、無理をしてでも手を貸してくれるだろう。
だからこそ、安易な気持ちで相談することが出来ない。
天野君が出て行った後、天月君に何の話だったのか聞かれたけど、私は「気持ちの整理が出来たら話すから少し待ってほしい」と言い、もらったベルはポケットに隠して自室に戻った。
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