梅見月の道真・1125年トキ廻る

京極道真  

第1話 2月21日 時空の風 

「主様、今宵は風が大きく吹きます。」

「そうだな。

この風が過ぎれば春が来るのか。」

桃梅が答える。

「主様、わたくしは一日も早く、ここ筑紫野に春が来るよう願います。」

白梅も「わたくしは、この主様のお庭の梅の木々がこぼれるくらい満開になるようにと願います。」

「2人とも春が待ちどおしいようだな。」

「はい。」2人の侍女はハモって道真に答えた。

「ホホホホー。お前達2人は本当に仲が良いな。」

「はい。」2人はまたハモった。

2人は道真が大切に育てている梅の木の精霊だ。

道真を慕うあまりに木を抜け出して侍女として道真のお世話をしている。

「ビューン」大きな風がまた吹いた。

「主様、お体に障ります。どうぞ中へ。」

「そうだな。」

その風は夜通し大きく吹いた。

延喜の夜。

その風は千年に一度吹く、時空風だった。

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