第3話 追われる者
男の顔色は明らかに悪くなっていた。スマートフォンを握る手がわずかに震え、目はカフェの奥に座る黒ジャケットの男を意識していた。
『……おかしい。どうしてここにいる? まさか、俺を追って……?』
僕はじっと見つめながら、彼の思考にさらに意識を集中させた。どうやら、彼は自分が“誰か”に狙われていることを自覚しているらしい。しかし、何が理由なのか? 送金のトラブルが原因なのか?
カフェの空気が妙に張り詰める。黒ジャケットの男はスマホを手に取り、何かを入力し始めた。その瞬間、テラス席の男の思考が強く響く。
『……ダメだ。ここにいたら……!』
次の瞬間、彼は椅子を引いて立ち上がった。まるで逃げるように。
「お客様、お会計は?」
店員が声をかけるが、男は軽く手を振るだけで、そのまま店を後にしようとする。その背中を、黒ジャケットの男がじっと見つめていた。そして、すぐに立ち上がり、後を追う。
これは……面白くなってきた。
僕は羽ばたいて、彼らの後を追うことにした。
◇
カフェを出た男は、通りを早足で進む。後ろを何度も振り返りながら。黒ジャケットの男は距離を詰めることなく、一定の間隔を保ちつつ追いかけていた。
男はスマホを取り出し、焦ったように画面を見つめた。
『……逃げなきゃ。いや、逃げられるのか? どこまで情報が漏れた? もし警察が動いていたら……』
警察? やはり、ただの金銭トラブルではなさそうだ。
男は道を曲がり、裏路地へと入っていく。人通りは少ない。どうやら、人目を避けようとしているらしい。
僕はビルの縁に降り立ち、さらに男の様子をうかがう。
彼はポケットから紙のメモを取り出し、震える指で何かを確認するように見つめた。
『……この口座に振り込まれた金は……本当に……?』
次の瞬間、彼はその紙を握り潰し、ゴミ箱に捨てた。まるで、それが証拠になってしまうことを恐れているように。
すると、その背後からゆっくりと黒ジャケットの男が現れる。
「……探しましたよ」
男の体がビクッと震えた。
「……何のことだ」
「とぼけないでください。あなた、何か隠してますよね?」
黒ジャケットの男の声は落ち着いていたが、その目は獲物を追い詰めるように鋭い。
僕はさらに興味を持ち、彼らの頭上を低空飛行しながら見守る。
逃げる者、追う者。そして、その間に渦巻く秘密。
この先、一体何が起こるのか?
(つづく)
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