2-3話

「最後にここが中庭です。ここ以外、外には簡単に出れないようになっています。もしも任務以外で外出したければ外出許可証を書いて提出する必要があります。」

全体的に灰色なこの建物に残された数少ない緑に囲まれながら、彼女の最後の説明を聞く。資料で何となく理解はしていたが、私たちはこの基地に軟禁状態らしい。任務のための道具に過ぎないらしいが、その任務についてはよくわからない。魔獣の討伐って書いてあったけれどそれ以上の情報は何もなかった。

「班長?何かわからないことでもございましたか?」

「いや、なんでもないよ。わからないことがあったらまた君に聞くよ、カミュ。」

任務はいつかあるだろう。その時に聞けばいい。

「そうですか。そうですね。またなんでもお聞きください。私でよければなんでもお答えしますよ。」

なんだかうれしそうだ。どういう人なのか、つかみどころがないけれどかわいいところもあるな。

二人の間の少しの沈黙を破ったのは、携帯に来た、やけにうるさい通知だった。

「任務です班長。準備をしましょう。」

彼女の顔が今までとは違う真面目な表情になった。

「準備?ごめんね、私は何をすれば…」

「班長は自室に戻って着替えていただければ十分ですよ。私たちがそれ以外のことを済ませておきます。」

「わかった。じゃあ着替えてくるね。カミュ、あとはよろしくね。」

「承知しました。準備が整い次第、正門でお待ちください。」

彼女に軽く会釈して、教えてもらった自室に小走りで戻っていった。




私が正門についたころには、他の班員の準備は整っていたようだった。

「ごめんね、道に少し迷っちゃって。待たせたよね。」

「いやいや、ベストタイミングだったぞ班長。まるでヒーローみたいだったぜ。」

「じゃあ遅れてるってこと?」

「はははっ!正解だ!」

グラーズがその巨体に似つかわしいジョークを吹っ掛けてくる。

「まあそこまで遅れてるわけじゃないよ~。気にしないで、班長。」

「ええ。全員そろったみたいだから、行きましょうか。」

目の前にある軍用車に班員が一人ずつ乗り込んでいく。最後に私が乗り込むと、ドアがひとりでに閉まって車が走り出した。どこに連れていかれるかわからないけれども、なぜだか不安はなかった。


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