指先だけでも触れたかった─タヌキの片恋─
華周夏
〖第1話〗たぬきのコンプレックス
オレはあいつが大嫌いだ。ここの、スカした顔した、稲荷の狐。
ここは稲荷神社。お守りなどを売る社務所と、狐が守る少し大きな拝殿。朱い鳥居も立派だ。
稲荷神社というが狐が祭神ではなく、宇迦之御魂神が祭神の五穀豊穣を祈るありがたい神社だ。
何が気にくわないかというと、俺を見る狐の瞳だ。俺が社務所で働いてお守りを売る、可愛い巫女のアルバイトのカナエちゃんとオレがいるのはそんなに悪いことなのか?
あの狐野郎、いつもいつもジロジロオレを、穢いものを見るように見やがって。半笑いでオレを見るみんなも嫌いだ。
ああ、そうだよ。オレは身なりは穢い。顔もこの神社を守るあの狐野郎と違ってあんまり器量も良くない。
『かわいらしい』
とか、
『やさしそうですき』
とか、訳が解らない褒め言葉になるのかならないのか解らない言葉をいわれるより、格好良く、もしくは綺麗になりたかった。カナエちゃんの隣にいても釣り合うよう容姿でありたかったよ。
所謂、容姿が綺麗な顔じゃねぇことは、解っている。解りすぎるくらいに、俺が一番解っているんだよ。
──────────《to next ②》
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