第11話

「…ありがとう」


 自然とその言葉が出てきた。ただただ感謝してる。俺と戦ってくれてありがとう、これで俺はまた強くなれるよ。


「こちらこそ」


「同じく」


 この3人には熱いの友情が生まれていた。きっとこれがボードゲームじゃなかったら泣いてたかもしれない。それくらい込み上げてくるものがある。


 友情・努力・勝利。これは部活に使う言葉だったのか、部活ってこんなにも素晴らしい活動だったんだな。もっと早く知りたかったよ。


 他の奴から見たらおかしいかもしれない、でも、俺は初めての体験だったんだ。だからそんな目で俺らを見るな…、早乙女、新色。










「文月先輩がこの部活を作ったんですか?」


 今度は普通にボードゲームをやって欲しいと言われたからちょっとだけテンションを抑えてボードゲームをしている。


 テンションを抑えたとしてもやっぱりボードゲームは楽しい。


 その楽しいボードゲームの途中に新色が疑問に思ってたことを聞いた。


「私じゃないよ。私の2個上の先輩方が作ってくれた部活なの。それを私が受け継いだって感じかな」


「2個上…って事はもう卒業されたんですね」


「うん」


 まずいなぁ、これはこの流れは非常にまずい。この流れはフミちゃん先輩の過去を知ってしまう流れになりそうだ。


「どうして1人でも続けようと思ったんですか?」


「ここが初めて私を受け入れてくれた場所だったから」


 あ〜これは過去を知る流れに一直線ですね。


「私ってこれだからさ、あまり近づく人がいなかったの。だから嬉しかったの、私を受け入れてくれるこの場所が」


 フミちゃん先輩は優しい笑顔でこの話をする。本当にフミちゃん先輩にとって大切な思い出なんだろうな。


「その格好はいつからなんですか?」


 ここの新色は結構ズバズバと聞くんだよな、ゲームだと助かるんだけど…。今はちょっと控えてほしい。


「魔法少女りんごちゃんって知ってる?私りんごちゃんになりたくて小さい頃からずっとりんごちゃんの格好してるの」


「その格好してたら苦労することあるんじゃないですか?」


 何?インタビュアー?新色はインタビュアーになったの?言葉遣いがインタビュアーのそれじゃん。あと、すっごい順調にフミちゃん先輩の過去も掘り下げるじゃん。


「はい。この格好をしてましたからあまり周りとは馴染めませんでした」


 どうして新色のインタビュアー力に引っ張られてフミちゃん先輩も受け答えが変わっちゃうんだよ。

 

「でも、今もその格好されてますよね?どうしてここまで続けられたんですか?」


 アスリートなの?アスリートがキツイ練習を毎日してたらその質問は合ってると思うけど、フミちゃん先輩は好きな格好をしてるだけだから。


「おばあちゃんの存在が大きいですね」


 あ、出た。


「おばあちゃん?文月先輩のお父さんかお母さんのお母さんって事ですか?」


 無駄な質問。それって本当にいる質問?別にどっちでも良くない?


「母の方です」


 いや、真面目に答えなくて良いから。


「そのおばあさまが支えだったんですか?」


「はい。おばあちゃんだけが私の味方でした。みんなはこの格好に否定的でしたがおばあちゃんだけは褒めてくれました。だから今もこうやってこの格好をしても周りの目を気にする事がなくなりました」


「素晴らしいおばあさまですね」


「はい!誇りのおばあちゃんです」


 そんなハッキリと言われたら言われたフミちゃん先輩のおばあちゃんも嬉しいだろうな。


 てか、いつまでインタビュー形式でやるつもりなの?早乙女と久田ちゃんもちょっとは疑問に思ってよ。めっちゃ真面目に聞いてるじゃん。


「これ、聞いて良いか分からないですけど…、今も元気なんですか?」


 あ、インタビュー形式終わった。


「全然元気だよ〜って言いたいけど、最近入院しちゃって」


「それは心配ですね」


「うん。でも、おばあちゃんは元気だから心配いらないって言ってたから」


 それはただ孫に心配かけたくないだけの嘘であって本当の姿じゃない。


 はぁ〜俺はもう知っちゃってるんだよな、もう長くない事を。改めて直接おばあちゃんへの想いを聞いちゃったら俺だって思うところはある。


 だって俺もおばあちゃん子だし、おばあちゃんとの最後の会話には悔いが残ってる。


 今、俺は戦ってる。原作通りに進めたい俺と俺と同じようになってほしくないと思ってる俺。この勝負は目が離せないな。













「よし!じゃあ今から先輩のおばあちゃんに会いに行きましょう!」


「「「「え?」」」」


 勝ったのは俺と同じようになってほしくない俺、でした。






 はい?どうして俺と同じようになってほしくない俺が勝っちゃうんだよ!1番人気は原作通りに進めたい俺だっただろうが!どうして俺と同じようになってほしくない俺が追い上げてくるんだよ!俺安全だと思ったから原作通りの方に全BETしちゃったよ〜。俺と同じようになってほしくない方のオッズめっちゃ高いからそっちにもちょっとでもBETしとけば良かった。…ちょっと待って!写真判定ない?もしかしたら本当は追い越してないかもしれない。



 ……ふんふん。


 ……なるほどなるほど。


 …これは!


 俺と同じようになってほしくない俺が追い上げてました!つまり原作通りに進めたい俺が負けました!


 …どうして負けるんだよ。


 俺もおばあちゃんに会いたいのにどうして他の奴を優先してしまうんだ。だってフミちゃん先輩は短いけど言いたい事は言えるんだよ?だったら優先されるのは俺の方だろ。


 最近の俺、ヤバくない?原作変えたい放題じゃん。もう何が原作か分からないほどに原作が変わってきてる。


 



 はぁ〜もう嫌になっちゃう。


「あいさつしに行きましょうよ!先輩は俺たちに任せてくださいって言いたいですし」


「いや、迷惑だって」


「迷惑ですか?迷惑じゃないなら行きたいです!」


 これが迷惑だろうと迷惑じゃなかろうと無理やりにでも行かせてもらうからな。もうこっちは覚悟決まっちゃってるから!


「…良いかもしれない、私に後輩ができた事伝えたらおばあちゃん喜ぶかも」


 フミちゃん先輩はちょっと考えた後賛成の考えを口にした。無理って言われても乗り込む気だったから本当に良かった。


「でも、おばあちゃんの体調が悪かったら会えないかもしれないよ」


「それで大丈夫です」


 別に俺らがフミちゃん先輩のおばあちゃんに会う事が目的じゃないから。


「おい、初めての部活での活動だぞ!張り切っていくぞー!」


 まさかこれが初めての部活動になるとはな。


 でも、人生での初めての部活動でもあるからワクワクしてる。転生前は部活をそんな頑張って何になるの?みたいなスタンスをとってはいたけど羨ましくもあったからこんな体験ができて嬉しいよ。


 部活ってTHE青春みたいで本当に入って良かったよ、これは俺の一生の思い出になるよ。


 どうしてこんなに部活を褒めてるのかって?今までの俺の行動を肯定するためだよ!これくらい部活を褒めないともう俺は立ち直る事が出来ない。


「おいお前ら、初めての部活動だからって緊張する必要ないからな。俺について来い、俺がお前らを導いてやる」


 もうどうでも良くなってテンションが変に上がってる。


「お〜」


「……」


「……」


「ははは」


 早乙女は俺の言葉に感嘆して、新色と久田ちゃんはいつも通り呆れた顔をして俺を見て、フミちゃん先輩は優しさで苦笑いしてくれた。


 まぁ新色と久田ちゃんはいつも通りだけど、早乙女は俺に心酔してるな、今なら高い壺を売りつけても買ってくれるぞ。


 



 さて、この先一体どうなるんだろうな。これから良い子にするからどうかこれが良い方向に進みますように。




 

 

 …無理か、無理だよな。

 

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